#19 アロンダイト / Aroundight
実に3か月ぶりに曲を作った.note投稿も3カ月ぶりだ.みんな久しぶり.
I. 俗説?
アロンダイトとはアーサー王物語の円卓の騎士の一人,ランスロット卿の剣である.
……というのは俗説らしい.しかしながら,少なくとも現代では「ランスロットの剣」≒「アロンダイト」というのが定着しているので気にしないことにした.
日本だとしばしば語の誤用が取り沙汰されるが,個人的にはなんと下らないことだろうかと思うのだ.例えば「姑息」は本来「その場凌ぎ」という意味で,「卑怯」等の意味はないとされている.しかし現代人の大半に「姑息」というと「卑怯」の意味で通じるわけで,逆に「その場凌ぎ」の意味を知っているような知識人であれば,相手の意図を忖度してやはり「卑怯」の意味で考えるはずだ.
むしろ,誤用や俗説そのものよりも,誤用だ俗説だと相手の言動を論う行為自体の方が無粋だろう.故に,結局自分が意図する相手に意図したことが伝われば,誤用だの俗説だのは捨て置いて良いだろう,というのが持論だ.
なお,英語表記については,俗説ではないが諸説あるらしく,今回採用したAroundight以外にもまあまあ表記揺れがある.今回は手癖で書いてみて一番書きやすかったものにした.
久しぶりにkaleidoscopicなものを書きたいと思ってキーボードの電源を付けた.結果として,一応調性音楽ではありながらも正しい調が分からなくなってしまった.一応スタートはイ短調のはず.
曲全体のイメージ的には,「ゲーム中盤辺りで出てくるそこそこ強めのボスのバトルBGM」.騎士の剣の御名を拝借したのもこういうイメージから.
II. 解説
冒頭,Allegro leggerezza.♩= 135 (♩. = 90) である.案外遅い.私の手癖の所為なのだが,この曲は全体的にsus系のコードが多い.本来,冒頭の2小節はなくて,3小節目からスタートしていたのだが,この「sus系の音が多い」(1小節目)というのと「調性音楽である」(2小節目)ことを明示するために,1,2小節目を追加した.だからこそ2小節目はトライアドである.
一応イ短調だという主張をするのにAmの強打を入れたわけだが,既に左手は調性が薄れている.一応Asus4なのだが,Dsus2/Aとも取ることも出来る.[A]からはクロノスで使ったようなI△とIV△/Iの交替である.一応借用なのだが,左手が既にAsus4というホ短調に含まれるコードになっている上,IV△/Iに含まれるファ#のせいで,半分ホ短調に転調していると言える.何なら[A]の4,8小節目は完全にホ短調のコード(i.e., CM7 > B7)だし.
[B]からは完全にホ短調に転調し,ついでに普通の6/8拍子になる.第一主題と思えばよい.進行は ||: C > B > Em > D > :|| C > D > Bm > Em > Am > … > B > … となる.[B]の3,8小節目のド#は旋律的短音階から引っ張り出してきたもの.上昇系の場合にのみ使えるまあまあレアな非和声音である.
[C]は[A]の変奏で,デジタルチックな[A]に比べて,パーカッシヴなものにしている.ここを弾いてるときが一番楽しいけどテンポが走りがち.[A]>[B]の転調(a moll > e moll)と同じ要領で,ここではe mollからh mollに転調出来るのだが,ここでは「まだ」転調しない.[B]の変奏([D])を挟んで箸休めにする.
この[D]だが,[B]からかなり変えていて,主旋律はオク下で,進行はEm > D > C > B > Am > B > Em > D > C > D > D#m(-5) > Em > Am > Bm > Esus2 > E である.あと7小節目の部分も簡単になっている.
[E],[F]は冒頭3,4小節目の変奏.これ以降,しばらくミの音をしつこいぐらい印象付ける.[G]で再度冒頭のフレーズに立ち返り,そのまま[H](=[A]の変奏)に入る.
[I]はやはり[B]の変奏なのだが,ここでやっとh mollに転調し,[K]から第二主題が呈示される.イメージはワルツ.スタッカートはしっかり短くするのがポイント.進行はGM7 > Asus4 > Bm7 > F#7 > Em > A > D > … > Em7 > A > D A/C# > Bm7 A > G > Gm > D > … である.
[L],[M]は例によって[A]の変奏で,これまでの流れ的にはh mollから完全5度上のfis mollになるのだが,ここでは無理矢理d mollに転調する.この転調の根拠といったら主旋律の部分が滑らかになるというだけである.だが正直調性が薄いのが幸いしてこんな強引な転調でもなんとかなっているのだ.
ここでd mollに転調したかったのは,この後a mollに回帰したいからというものである.仮に完全5度上への転調を繰り返すとしたら,h mollから始まり,h > fis > cis > gis > es > b > f > c > g > d > a mollとなるので,10回も転調しなければならない.しかしあまりにも転調し過ぎると曲としてのまとまりに欠けるうえに長くなってしまう.そこで中間を一気にすっとばして,h > d mollという短3度上への転調を挟むのである.
[N]は冒頭の変奏であり,[O]はほぼ[A]と同じ.例によってe mollに……と思わせておいて,c moll経由の[P]からはg mollである.[Q]は[K]の変奏である.[K]は軽やかな舞踏といった印象だが,[Q]は緩やかで堂々とした大らかな踊りである.「舞踏」というよりは「舞い」といった印象か.
[R] > [S]の転調はこの曲におけるこれまでのどの転調よりも強引である.何しろ 減 5 度 上 である.「悪魔の音程」との呼び声高い,不協和音程の代表格だ.特にこれという動機はなく,強いて言えば「ただ最後にgis mollに転調して,力強くG#sus4を鳴らしたかった」という何とも薄いものである.
III. あとがき: 思い出の在り方
新年度初投稿になってしまったのだが,新年度になって色々と変わるものが多く,バタバタしていたらいつの間にか5月の下旬を迎えていた.
皆に分かりやすいところで行くと,まずアイコンが変わった.前の推しに逃げられてから実に4カ月,漸く完成した.
絵はNiLちゃん.いや可愛すぎんか.今回は依頼時に抜かりなく著作権譲渡も条件に入れたので万が一逃げられても気兼ねなく使える(カス).まあ逃げられないよう丸く立ち振る舞えば良いだけの話なのだが…….
次に変わったことというと,社会人生活が始まったことだろうか.既に転職をうっすらと考えているが.何を血迷ったか銀行員になった.どうせハナから2年で退職する算段だったので今となっては何故そのまま家庭教師バイトを続けていなかったのかと悔やむ.
そして,最も変わったことというと,年度末辺りからこっそり始まっていたのだが,引っ越しである.親戚がやむを得ず新築一軒家を一時的に手放さなければならない事態になり,せっかく同じ京都にいるならハウスキープかねてどうだと声をかけてもらった.新卒と大学生の新居がまさかの一軒家である.
しかしこれが寝耳に水な話で,時期的に懇意にしていた業者の手配が出来なかったので,少しずつ自分らで引っ越し作業を進めていた.先週漸く引っ越し作業が終了した.
かなり広い家になったため,折角なら色々とグレードアップしようじゃないかということで,家電類を一式換えたり,家具を増やしたりと,20代前半カップルには随分と過ぎた家が出来上がった.
※以下惚気注意
さて,そんなグレードアップしたもののひとつに,コルクボードがある.写真を印刷して飾っておくためのコルクボードである.
私は,何度かここ(note)でも書いてるように,旅行が好きな人間である.しょっちゅう旅行していたのであまり写真は撮らない(し,そもそも写真が下手な)のだが,たまに「これは滅多に観れないだろうな」という光景に出会うと,思わず撮ってしまう.それに,彼女が出来てから二人旅もまあまあ増え,記念の写真撮影が増えてきた.
無論,撮ってそのままスマホの中に保存しておくのも良かろうが,折角撮った美しい風景が,その存在ごと記憶の中で風化してしまっては勿体ないと思うのだ.そこで同棲半年くらいで設置したのがコルクボードなのである.
楽しかった旅行先やよく撮れた写真など,各自で貼りたいものを勝手に印刷して勝手に貼っていく.しかしアパート住まいのときはそこまで大きいものを設置するわけにも行かず,1m四方のものだった.一年も経たずしていっぱいになってしまって,それ以降は外しては付けてを繰り返していた.
しかし今回の引越しでクソデカコルクボードを設置できるようになったので,大盤振る舞いで同じコルクボードを7つ増設して2m×4mにした.一度外した写真も出してきて貼ってみると、流石に全面は埋まらずとも,だいたい全体の3割が埋まった.
スペースが空いたので刷る写真を厳選する必要が(当面は)なくなったので,最近は画像で会話をする掲示板と化しつつある.大抵こういうことがあったとかこういうのがいたとかこれ上手くできたから褒めろとかそういう他愛もないことを共有する掲示板である.道端で並んで日光浴をしていた野良猫ペア,たまたま入ってみたら美味しかった喫茶店,紅く焼けた夕空,上手く作れた昼飯,盛れた自撮り,何でもアリだ.
このボードに写真が増えれば増えるほど,2人で一緒にいない時の記憶が補完されていくようで多幸感があり,精神的な健康度が向上(したような気が)する.同棲してる人はやってみるといいよ.
IV. 楽譜&音源配布
ここに書いてあるルールを守ってくれれば使途は問わない.
《楽譜ファイル (PDF)》
《高音質音源ファイル》
WAV形式のCD音質 (44.1kHz/16bit, 1411.2kbps)
《並音質音源ファイル》
MP3形式のストリーミング音質 (320kbps)
V. クレジット
作曲・執筆: kyoka (@kyoka20011218)
浄書・動画編集: Noah
見出し画像: Akiko Kimura (joker) 様 (「みんなのフォトギャラリー」より)
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