〈社会的装置〉とはなにか――【用語集】『〈自己完結社会〉の成立』
〈社会的装置〉 【しゃかいてきそうち】
現代社会において人々が依存する巨大な“社会システム”のことを指し、より具体的には、近代以降に成立した「官僚機構」、「市場経済」、「情報世界」を中心として、そこに情報技術、ロボット/人工知能技術、生命操作技術などの成果が複雑に絡み合う形で現前する。
この〈社会的装置〉への依存によって〈生の自己完結化〉と〈生の脱身体化〉が進行すると同時に、「〈生〉の三契機」の文脈が不可視化される「〈生〉の不可視化」や「〈生活世界〉の空洞化」が引き起こされるが、それによって人々はまさに〈ユーザー〉としての「自由」と「平等」を獲得するという根源的な矛盾が含まれている。
〈社会的装置〉の起原は、「環境哲学」の視点から見れば、人類が自然生態系のうえに築きあげた「人為的生態系」としての〈社会〉の延長にあるものとして理解されるが、「〈生〉の分析」の視点から見れば、〈生の舞台装置〉としての〈社会〉の延長にあるものとしても理解される。
とはいえ、その特徴は人々の行為を特異な形で調整する機能にあり、〈社会〉を構成している成分のうち、「意味体系=世界像」の成分が矮小化し、「社会的構造物」と「社会的制度」の成分のみが突出しているという分析もできる。
このページでは、筆者が2021年に刊行した『〈自己完結社会〉の成立――環境哲学と現代人間学のための思想的試み(上巻/下巻)』(農林統計出版)に登場する用語(キーワード)についての概略、および他の用語との関係について説明したウェブ版の用語集のnote版です。
(現在リンク先は、すべてウェブ版を借用していますが、徐々にnote版に切り替えていく予定です。