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「たった1文字」の可能性
もうすぐ1月が終わりますね!
2025年最初の月ということで、
しっかり振り返りをしていきたい。
100点満点中、自分の納得度はどれぐらいか。
合格点に達していないなら、どう改善するか。
いくらでも取り返せるこの時期だからこそ、
自分に真っすぐ問いかけてみたいですね。
共育LIBRARYへようこそおいでくださいました✨
教育、人間、人生など、様々な「知恵」や「情報」が詰まった図書館のような、皆さんがくつろぎ、人生の「気付き」を得たり、知的好奇心を満たしたりできる居場所を目指しています😌
どうぞ、ごゆるりとお過ごしください。
共育LIBRARYりょーやん、元教師です。
世界中の言語の中でも、
一際、習得が困難とされる日本語。
一人称の種類が多かったり、
主語を省略して「空気」で補ったりと
海外の人にとっては、
思わず頭を悩ませてしまう要素が
詰まっている言語でもあります。
そして、
日本人として日本で育ち、
日常的に日本語を使っているにも関わらず
なかなか理解できない部分もある。
その1つが、助詞。
小学生に国語を教えていると、
助詞につまずく子どもを多く見かけます。
特に作文という「書く」作業になると
それは顕著に現れます。
たった1文字の違いだけで、
見事に異なる意味を表す助詞。
今回は、そんな
助詞という存在について言及する
記事にしていきます。
何か気付きある内容になれば幸いです。
無数に意味が変化する助詞
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「私は日本人です」
「私も日本人です」
たった1文字違うだけで、
この会話の前後や周囲の環境なんかが
まるで違ったものとして想像されます。
日本人であれば、
両者の違いを何となく理解できる気がしますが、
ではこれを、
人に教えるとなると
なかなかの困難が想像されます。
そのような時に
「外国人には助詞をどう教えているのか」
に注目してみると、
「教えるヒント」を得ることができたりする。
例えば、
以下のような本があります。
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上記のように、
イラストを使ったイメージによって、
助詞の理解を促すという本です。
動画を使った
アニメーションも存在します。
外国人対象であるため、
多種多様な言語で注釈がしてありますが、
日本人に向けて助詞を教えるときにも
大いに役立つ仕様となっている。
上記の画像では、
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
【で】
限られた空間で動くとき
イベント/出来事があるとき
【を】
その場所を離れて、
ほかの場所にいくとき
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
といったイメージになっていますが、
場所、方向、主語など
用途によって意味が変わるのが
助詞のやっかいなところ。
例えば、
「で」だけでも
以下のような種類が存在します。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
・範囲を表す
・原因を表す
・手段を表す
・材料を表す
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
このような複雑な助詞ですが、
丁寧なイラストや動画と
演習問題がセットになっているこの本だと、
楽しく取り組むことができるようになっている。
もっと詳しく知りたい場合は、
日本語を研究する辞典なんかも役に立つ。
筆者は上記の辞典を愛用し、
詩歌や物語の教材分析に活用していました。
助詞に特に苦手を示す子ども
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「私は」「私わ」なんかの間違いは、
特に1年生でよくあります。
しかし、
学年が上がり、
日常的に日本語を書く勉強をするうちに
段々と間違いが減っていくのが通常。
ただ、
学年が上がっても、
一向に助詞に苦手意識をもち続ける子どももいます。
そのような子どもの一部に当てはまるのが
ASD=自閉スペクトラム症の子どもです。
ASDの子どもは、
決して言語が苦手なわけではありません。
むしろ、
常人よりも一定の分野に詳しく、
しゃべり出したら止まらないなんて一面も
もっています。
ただ、
言語というものは
4つの側面に分かれるという説がある。
例えば、「りんご」。
「りんご」だけで、
以下のような4つの意味合いに分かれます。
▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢
【音韻論的側面】
ri/n/goという3つの音から構成
【統語論的側面】
1つの単語であり、文ではない
【意味論的側面】
赤くて丸い果実を指すことば
【語用論的側面】
「りんごちょうだい」
「りんごおいしい」
と文脈に応じて意味が変化
▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢
限局性学習症=LDの子どもは、
音韻論的な側面に凹みが多いと言われます。
そもそも、
音を分離して聞き取れていないのです。
そして、
ASDの子どもが凹みを見せるのは、
語用論的な使われ方です。
ASDの子どもは、
文脈が分からない。
なぜなら、
文脈というものは人間関係が絡まってくるから。
ASDは社会性の障害も含まれているので、
人と人との関係性が関わってくると
途端に分かりづらくなります。
だからこそ、
主語を省略されたり、
一部を省略して空気で語るといった
日本語は相性が悪いのです。
そして、助詞は、
人間関係そのものに関する言葉でもある。
「私は日本人です」
「私も日本人です」
の両者の違いは、
周囲との人間関係を想像できなければ
なかなか意味の違いが分からないでしょう。
そんなASDの人には、
上記のようなイラストや動画つきの
解説本があると非常に有難い。
それに加えて、
授業では1文字で意味が変わることを
楽しく伝えていくことが大切です。
となり「は」トトロ?
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助詞を使った授業を紹介していきます。
某アニメのタイトルを
隠した状態で提示します。笑

▢に何でもいいので
助詞を入れてノートに書きます。
2つできたら持ってきましょう。
もちろん、
「となりのトトロ」が本来の題名なのですが、
2つ以上なので色々なパターンが出てきます。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
・となりはトトロ
・となりもトトロ
・となりでトトロ
・となりがトトロ
・となりをトトロ
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
などなど。
こういったものを黒板に並べたり、
タブレットで列挙させたり、
手を挙げて発表させてもいいでしょう。
ポイントは、
1つ1つに先生がツッコミを入れることです。
「となりはトトロ」
君の隣の○○さんの正体は
トトロだったのか!?
「となりもトトロ」
「となりも」ということは
前も後ろも隣も皆トトロということか!?
君はトトロに包囲されているね。
「となりでトトロ」
となりでトトロが遊んでいるのかな?
君にはトトロが見えているようだね。
「となりがトトロ」
両隣にトトロか。
押しつぶされてしまいそうだね。
「となりをトトロ」
となりをトトロにしてほしいのかな?
よし、今度の席替えでは
隣をトトロにするように検討しておくよ。
みたいな感じですね。笑
1つ1つの返しをしていく度に、
爆笑が起こるのが理想的です。
コツを掴んできたら、
「ジブリのタイトル助詞替えシリーズ」
のような感じで、
「風の谷のナウシカ」
「千と千尋の神隠し」
などで応用して創作させるのも
面白いかもしれません。
1文字に隠された重要性
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「トトロ」の授業は、
簡単に楽しめるものですが
詩歌の授業では
助詞に注目する力が
かなり重要な要素を占めていきます。
例えば、
以下のような授業。
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まずは季語を問います。
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俳句では本来季語は1つのはず。
俳句でNGとされる季重ねを
よりにもよって3つもやっちゃってます。
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ここで大枠の問いを1つ。
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内容に切り込んでいきます。
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何も疑いなく考えると、
「青葉」「山ほとどぎす」「初鰹」
と答えてしまいそうです。
ここで子どもには分かりえない
前提条件を提示しておきます。
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これが布石となります。
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ここが大事な部分ですね。
「目に青葉」の方が、
五・七・五の十七音になってきれいです。
なぜ、
わざわざ「目には青葉」で
六音にしたのか。
助詞である「は」には、
どのような意味があるのか。
旅行の時に、
「歯磨き粉『は』ある」
と家族が言っていれば、
歯ブラシを忘れてしまったのかもしれません。笑
ここでの「目には」は
何を意味しているのか。
ここで思考を広げます。
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思いつかない子のために
さらに視覚支援。
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つまり・・・
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「は」という助詞があることによって、
隠された五感があぶり出されます。
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ここからは、
この句の面白さをさらに深めるパーツ。
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自由に予想。

江戸自体には、
まさかの初鰹に
これほどの価値があったとは驚きです。
もう1つ初鰹絡みの句を提示。
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思い思いに予想してみる。
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現代でこの句を提示すると
怒られてしまいそうですが、
冗談の句であるにしても
それほど食べたい代物だったようです。笑
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ここで始めに戻ってきます。
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読みが変化していれば、
解釈が深まった証拠。
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「は」という助詞に注目しなければ、
深めることができない俳句。
国語の深みや面白さを引き出すには、
助詞は必須のパーツであると言えるでしょう。
まとめ
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このように、
面白い授業や知的な授業で
助詞という存在に着目するようにしつつ、
視覚支援が必要な子には
冒頭のテキストのような教材で
学習させていくことが大切かもしれません。
たった1文字があるかないか。
たった1文字だけでどれだけ内容が変わるか。
そんな、
1文字が底知れぬ可能性をもつ面こそが
日本語の面白いところ。
「助詞があるから難しい」
ではなく、
「助詞があるから面白い」
のような視点をもって
日本語を深めていけると楽しいですね。
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