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すぐれたMaaSに必要な3つのエッセンス
「みさきまぐろきっぷ」でMaaSを考えた
休日の旅行プランを考えていて、ふと思い浮かんだのが京急の「みさきまぐろきっぷ」だった。神奈川県の三浦半島を楽しめる、次の3つがセットになったきっぷだ。
移動:東京や横浜から三浦半島へ鉄道・バスに乗車できる
食事:現地でマグロなどの魚料理を堪能できる
体験・お土産:温泉に入浴したり、特産品などのお土産がもらえる
料金は約3,500円(出発地による)。私は何度か利用していて、今回も楽しい旅ができた(ちなみにタイトルの写真は当日の三浦海岸で、ダイコンの奥に房総半島)。
そしてこのきっぷには、「MaaS」(マース)に必要なエッセンスが含まれているんじゃないかと思ったのだ。
MaaSって何?っていう方は、ググっていただくか(すいません)、先日MaaSについて書いたnoteをご参照いただけると幸いです。
さて、「みさきまぐろきっぷ」から私が考えたMaaSに必要なエッセンスは次の3つだ。
(1)気持ちが動くメディア機能
(2)ほどよいナビゲート機能
(3)すぐれたコンテツ
以下、説明していきたい。
(1) 気持ちが動くメディア機能
いま(2020年1月)ビジネス界で盛り上がっている「MaaS」は、スマホなどのテクノロジーを使って「移動をスムーズにする」取り組みだ。しかし旅行者の目線でいうと、そもそもどこへ行くのか、どんな体験をするのか、旅の計画が最初のハードルである。
「みさきまぐろきっぷ」は、その秀逸なネーミングも相まって、「三浦半島でマグロを堪能する楽しい休日!」をきっぷが約束してくれるのだ。この、気持ちを動かす(態度変容を促す)メディア的な機能がMaasに必要なエッセンスの1つ目。
(2) ほどよいナビゲート機能
このきっぷはルート設定もいい感じで、ほどよくナビゲートしてくれる。
例えば一般的なフリーきっぷの場合、自由であるがゆえに旅行の計画に骨が折れる。かといって決められた目的地だけをめぐるツアーは少し窮屈だ。「みさきまぐろきっぷ」はこの間にある「ほどよい自由さ」がある。これが2つ目のエッセンス。
具体的には、京急(鉄道)の終点である三崎口駅までは一方向に進み(途中下車は可能)、その先はバスが自由に乗り降りができる。三浦半島も日がな一日うごきまわるのに手頃な大きさだ。
(3) すぐれたコンテンツ
対象のお店でいただくランチは(少なくとも私が利用したところは)お店の看板料理と言っても差し支えない「いいもの」だった。食事だけでなく、お土産としてもらえる特産物なども「いいもの」が揃っていると感じる。
割引きっぷやクーポンの類を利用すると、「そこそこ」のサービスがおまけに付いてくる程度では、と期待値も低めなのだが、このきっぷはそうじゃない。
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京急と地元が一体となって「みさきまぐろきっぷ」の旅行者を本気でおもてなしする熱意**が伝わってくるのだ。
すぐれたMaaS = 気持ちが動くメディア機能 + ほどよいナビゲート機能 + すぐれたコンテンツ
まとめとして、この3要素の統合がポイントだと思う。
旅の計画、当日の体験、そして思い出づくり。この流れを、テクノロジーでうまくサポートするのがMaaSなのだ。
現在の「みさきまぐろきっぷ」は、紙のきっぷだが、将来的にデジタル化されたら(例えばスマホできっぷを購入するようになったら)、どういう旅行者が、いつ、どんな旅をしたのか、これまで以上に高い精度で分析が可能になり、さらによいルートやコンテンツの提案ができるだろう。またインスタなどのSNSと連携すれば、旅に出たくなる気持ちをもっと喚起しやすくなるはずだ。
MaaSに必要な3要素を書いてきたが、言い換えると、そもそもすぐれた旅行体験に必要な3つの要素があって、これをテクノロジーで磨きをかけるのがMaaS、と考えるのがよいのかもしれない。