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【47エディターズ】万博半年、インバウンドにローカル線、平和も防災もあなたの読みたい記事がきっとここに

共同通信では、注目ニュースの背景や、知られていなかった秘話、身の回りの素朴な疑問などを深掘りしたインターネット向けの記事「47リポーターズ」を随時配信しています。

9月の配信分はなんと計10本! 当コーナー【47エディターズ】では、現場の記者が書いた記事の最初の読者であり、その狙いや内容を精査し、時に議論を交わしたデスクが編集のポイントなどをご紹介します。


■「痴漢は犯罪です」もう泣き寝入りしない、女子生徒の決意から生まれた缶バッジ 10年間配布してきた松永さんが話す「被害者でも加害者でもない、あなたにできること」

警察担当をしていると、痴漢事件の発生を知らせる広報を目にすることが多い。筆者の大阪社会部・丹伊田杏花記者もその1人だ。容疑者は、会社員、教師などさまざま。恐怖に怯え、誰にも被害を伝えられない女性は多い。幼い頃の被害が大人になってからフラッシュバックする人もいると聞く。警察の広報の向こう側で、今日も多くの被害女性が泣いている。松永さんのような取り組みが、いつか社会を変え、被害に苦しむ人がいなくなることを切に願う。(清田)

■“安い日本”京都の宿泊客の7割は外国人!日本人には近くて遠い観光地になるのか?

「ロビーもレストランも外国かと錯覚するほどだった」。京都市中心部にあるホテルのスタッフは4月をこう振り返りました。コロナ禍が収束し、京都市内のホテル宿泊者に占める外国人の比率が6~7割と高止まりしています。宿泊料金がコロナ前に比べて3割ほど値上がりしても円安の恩恵を受ける訪日客には関係がありません。こうした状況で一部の日本人から「京都に泊まりにくくなった」という声も聞こえてきます。
京都は「近くて遠い観光地」になってしまうのか
大阪経済部の小林磨由子記者が現場を取材すると、訪日客の旺盛な宿泊需要を捉えつつ日本人旅行者も大切にしたい事業者の複雑な思いが見えてきました。オーバーツーリズムの対策も含めて克服すべき課題はたくさんあります。この記事が「観光大国」を目指す日本の将来を考える一助になれば幸いです。(浜谷)

■ 大阪万博を照らした原子力の灯。「親であり、わが子」だった原発は日本を支え、事故で否定された 「操縦士」が語る激動の半生、2025年の来場者に伝えたい言葉とは

2025年大阪・関西万博まで半年を切りました。今回の万博を支える電力に原子力が使われることをご存じの方は多いかもしれません。が、半世紀以上も前の1970年大阪万博で、原子力由来の電気を送るセレモニーが華々しく行われたことについてはどうでしょうか。

大阪社会部で万博取材を担当する伊藤怜奈記者は、そのセレモニーを支えた一人の名もなき「原発の操縦士」に焦点を当てました。前任地の福井支局時代に「原発銀座」と呼ばれたエリアを担当する敦賀通信部で勤務し、原発取材にどっぷりつかった経験と、大阪で万博取材に関わっている経験、両方を持ち合わせている記者はそうそういません。70年万博に電力を送ったのは、まさに原発銀座にある関西電力美浜原発1号機。電力が送られたルートと、記者のキャリアの軌跡が重なった偶然もあり、原発と万博の関係について「大阪に来たときから書きたいと思っていた」という、情熱のこもった1本になっています。

編集者としては原稿に容赦なく「赤ペン」を入れるのが仕事ですが、この原稿に関してはほとんど手を入れていません。大学時代にドキュメンタリーを撮影するゼミに所属していたとあって、操縦士を主人公にしたドキュメンタリーのようなストーリー仕立てになっています。NHKさんの「プロジェクトX」ほどドラマチックな展開はありませんが、取材の現場となった香川・小豆島を囲む海のように、静かに、穏やかに展開します。

読んでいただいた皆さんの心に少しでも残るものがあれば、編集者としてとても嬉しく思います。(関)

■ 加藤シゲアキさん「戦争の中でも人が生きていること、忘れない」 秋田の空襲描いた小説「なれのはて」、執筆に覚悟【つたえる 終戦79年】

人気アイドルグループ「NEWS」のメンバーで、作家としても活躍する加藤シゲアキさんが平和への思いを語ってくれています。インタビュアーで筆者の上脇翠記者(広島支局)は、過去の悲劇をいかに多くの人に関心を持ってもらえるかとの思いで話を聞いたとのことです。加藤さんは自身のルーツの戦争体験を小説にしました。コンテンツ化する葛藤や、それでも伝えないといけない思いを述べています。一人一人の営みが平和につながっていくとの願いに触れてみてください。(岸)

■「あまりの暑さにレールがゆがむ」見落とせば脱線、大事故…酷暑で鉄道ピンチ でも対処が難しい「深刻な事情」

地球温暖化の影響が、生活インフラである鉄道に深刻な影響を及ぼしていることを解き明かした記事で、多くの人に読まれました。対策を取ろうにも人手不足がネックとなっている点を指摘しており、大阪社会部の小林知史記者の着眼の良さを感じました。データや有識者のコメント、最近のトラブル例なども踏まえていますが、これだけだと原稿はかたくなりがちです。真夏の保線作業を記者が見守った描写から書き起こし、ストーリーとすることで読みやすくなったと思いました。(斉藤)

■ 島根県知事、廃線危機のJRローカル線の存続「社会的な約束だ」 経団連の消費税引き上げ提言に「世も末だ」と反発

大阪支社管内には個性的な知事がいます。
今回は、舌鋒鋭い島根県の丸山知事のインタビューを、松江支局の白神直弥記者がお届けします。(山)

■ 経営悪化はJR四国の責任にあらず「人口が少ないからサービス削減は言い訳」 関西大・宇都宮浄人教授、国策転換を求める

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全国各地で赤字ローカル線の存廃が議論される中、JR四国も苦しい判断を強いられています。現状に打開策はあるのか、高松支局の広川隆秀記者が、交通政策やヨーロッパの地域公共交通に詳しい関西大の宇都宮浄人教授に話を聞きました。収支という観点で見ると多くは継続困難に見えますが、日本より人口密度の低い欧州は公共交通の存続が問題になることはないそうです。なぜなら、税金で鉄道インフラを支える仕組みが整っているから。そして、鉄道は人々の自由な移動と街の活性化に欠かせないという認識が共有されています。欧州の思想をそっくりそのまま輸入できなくても、日本で暮らす私たちが公共交通の在り方を考える上で参考になる情報が満載のインタビュー記事です。(浜谷)

■ 人口800人の村で暮らすトランスジェンダーのリアルライフ 「あんたはええ人じゃ」100歳の親友と家族、支え合い頼り合い

トランスジェンダーの人々をめぐっては最近、性別を変えるために、生殖能力をなくす手術が必要だという要件を違憲とする最高裁の判断が出ました。性別を変更して、妻と結婚して子どもと岡山の小さな村で暮らす臼井さん。地元に根付いた暮らしをお伝えすることで、読者の方々の気づきのきっかけとなってほしいと願っています。岡山支局の北野貴史記者は事件や裁判の取材を担当する一方、岡山市内から新庄村に何度も通い、取材を重ねました。(中田)

■「避難情報早くなった」、気象防災のスペシャリスト雇う自治体は効果実感も…活用全国に広がらず、なぜ?

「気象防災アドバイザー」という防災のスペシャリストがいるのをご存じでしょうか。災害対応に当たる自治体に、降雨の予測や避難情報発表のタイミングなどを助言する専門家たちです。でも、全国的にまだまだ広がっていません。岡山支局の米津柊哉記者が北海道や千葉を訪れてアドバイザーの重要性を取材すると共に、なぜ普及していないのか要因を探りました。能登半島豪雨をはじめ、今年も各地で大雨による洪水や土砂崩れなどの被害が相次いでいます。被害を最小限に抑えるための一つの方策をお示しできればと思います。(宮沢)

■「金魚すくい」はスポーツだ!伝来300年の大和郡山、世代を超えて白熱 道場の門下生は400人、街に根付く金魚の文化

今年春入社した奈良支局の伊藤光雪記者の記事です。金魚すくい道場での体験ルポを紹介することで、説得力が増しました。通常の仕事の中で、ルポルタージュを書く機会はそんなに多くありません。見たままの現場を描写するのは、記者の目線も問われる難しい作業です。共同通信の記者で多くのルポを残した斎藤茂男氏のジャーナリズム論「新聞記者を取材した」(1992年)。少し前の本ですが、おすすめです。(中田)