見出し画像

【47エディターズ】疑っていたはずなのに…巧妙な「SNS型投資詐欺」の手口とは。ローカル線、能登半島地震、生きづらさとの闘い。7月配信のニュースを振り返ります

共同通信では、注目ニュースの背景や、知られていなかった秘話、身の回りの素朴な疑問などを深掘りしたインターネット向けの記事「47リポーターズ」を随時配信しています。

当コーナー【47エディターズ】は、現場の記者が書いた記事の最初の読者であり、編集者として記者と議論を交わしつつ内容を磨き上げたデスクが、完成までの秘話や、記事執筆の背景をお伝えするものです。今回は7月分の4本をご紹介します。


■Xで知り合った「投資の先生」に従い、海外FXで月利10% 信じた女性を待っていたSNS型投資詐欺の手口とは

SNS上で著名人や投資家をかたって相手から金銭をだまし取るSNS型投資詐欺について、大阪社会部の後藤直明ごとう・なおあき記者が被害者や弁護士らに話を聞いて記事をまとめました。警察庁が2023年に初めて統計を取り始めて以降、被害は急増しており、勝手に名前を使われた著名人が、詐欺を野放しにしているとしてSNS運営社を提訴する事態にも発展しています。被害者の女性が語る詐欺の手口は巧妙で、自分の身を守るためにも、ぜひ読んでみてください。(戸)

■「スーパーボランティア」が見た能登半島の今 地震発生から半年、受け入れたくても受け入れられない被災地の事情とは

すごい、素晴らしい、という意味の「スーパー」という呼び名で呼びたくなる人はどの世界にもいる。そんなことを思わずにはいられなくなる原稿でした。

能登半島地震で指摘された「ボランティアの不足」はなぜ起きているのか。個別ボランティアの移動自粛を呼びかけた石川県知事の発言が影響したのではないか、という仮説を立て、現地取材で検証してもらうことにしました。出張を買って出てくれたのは、鳥取支局の古結健太朗こげつ・けんたろう記者です。

地震発生後、古結記者の能登半島への出張は2回目。前回の出張でその存在を知ったボランティア・藤野龍夫ふじの・たつおさんの活動に同行しながら、復旧・復興を後押しする現場の実情を見て、被災された皆さんの声に耳を傾けてきてくれました。その結果、必ずしも知事の発言だけではない複合的な要因がボランティアの現地入りを阻んでいる、という姿が浮かび上がってきたので、その形で仕立てることにしました。

記事の主人公として登場する藤野さんについては、加盟社の新聞紙面用に「時の人」として出稿しました。1月2日に自宅を出てから休みなく災害現場で働く姿は「スーパー」ボランティア、と呼ぶにふさわしいのではないかと思い、古結記者の了解を得てタイトルにしました。頭の下がる活動ぶりが、少しでも多くの方の知るところとなれば幸いです。(関)

■「自分は何者」そこまで考える必要ない?虐待、いじめ、リスカ傷痕も大切な一部 「死んではダメ」手差し伸べた恩人のため「もう一度働きたい」

共同通信に入社後、大阪社会部で1年間、東大阪市や事件の取材を担当し、今春佐賀支局に異動した岡田学時おかだ・がくじ記者の記事です。トランスジェンダー、在日など、いくつも重なったマイノリティーとしてアイデンティティに悩みながらも、働くことへの意欲を燃やす当事者の姿を丁寧に描いています。

デスクとして、一番悩んだのは「見出し」です。あえて、ここに「トランスジェンダー」「在日」といった要素は入れませんでした。伝えたい内容とは別の観点からコメントを避けたいと考えたからです。

しかし、結果として、インターネット上での閲覧数は伸び悩みました。

もっと何か工夫できなかったのか。記事を預かり、編集するデスクとしては反省点が残りましたが、本当によい記事ですので、ぜひ今これをご覧になった方はリンクから読んでみてください。(中)

■JR西日本の株式1億円分を岡山県真庭市が取得へ、鉄道の存廃議論に発言力高める 市長「鉄道を必要としている市民への配慮は絶対に必要」

岡山県真庭市が、発言力を高めるためJR西日本の株主になることを決めました。JRの赤字区間を巡る問題はJR西だけの問題ではなく、人口減少が進む日本中で深刻化しています。JR西の株式のおよそ3割は外国法人等が所有していることや配当額などを、公開されている資料から大阪経済部の石井祐いしい・ゆう記者がひもときました。真庭市の動きは「旧国鉄から継承した鉄路は誰のものなのか?」という疑問を投げかけているように思います。(山)