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カヌレのレシピ

皆さまこんにちは。郷土菓子研究社のハヤシです。
いつもありがとうございます。
これから世界の郷土菓子情報をnoteにまとめていきたいと思います。(経緯などを話し始めたら本題にたどり着けなくなりそうなので、いつの日か)

ざっくりと、前半はお菓子の概要や自身の体験を含めた情報を、後半はレシピ紹介、という構成でお届けしていきますね。概要はネットで調べれば沢山でてくるので、さらっと。実体験に比重を置いて書いていきますね。
お読みいただくだけで、世界の郷土菓子の知識がもう一段深まるようなnoteを作っていけたらと思っています。

さて、まず取り上げたいのは郷土菓子研究社の商品の中でも人気No.1のカヌレです。今を時めくカヌレですが、Binowa Cafeオープンの2016年以来、ずっと郷土菓子研究社を支えてきてくれました。


概要

最近波に乗っているカヌレですが、改めて材料のご紹介から。
カヌレは牛乳、卵、小麦粉、バニラ、ラム酒、バターなどで作られ、ミツロウを付けたカヌレ型を使って焼き上げるのが特徴の焼き菓子です。表面がカリッと、中はしっとり、バターやバニラ、ラム酒が香る・・・が魅力のお菓子です。

ご存じの方も多いかもしれませんが、カヌレはフランス西部、ボルドーの郷土菓子です。ボルドー=ワインのように直結するほど、飲まない人でもワインで有名なエリアというのはご存知ですよね。
実はボルドーのワインとカヌレには密接な関係があります。

後でレシピでもご紹介しますが、カヌレには卵黄がたっぷり入ります。それも、ボルドーワインの製造過程で不純物を取り除くために卵白が使用され、大量に卵黄を余らせていたそうです。その卵黄の利用方法として作られたのがカヌレの起源とされています。つまり、ワイン製造の文化が無ければカヌレも生まれていなかったということですね。起源を遡ると16世紀くらいからボルドーの修道院で作られていたようで、とても歴史のあるお菓子です。

・・・というのが一番よく聞くカヌレ誕生の逸話ですが、実は明確な資料は残っておらず。しかもカヌレの語源(溝という意味)ともなるあの特殊なカヌレ型は20世紀初頭に作られたというので、16世紀から作られていたカヌレの原型は全くの別物だったことが想像できます。きっと味噌汁とポカリくらい別物だと思います(笑)

どういう経緯があったとしても、カヌレはあの形でなければカヌレじゃないし、あの溝があるからこそ、カリッとした食感がより楽しめるんです。16世紀から色んな歴史を経て、ご本人(カヌレ)も四苦八苦しながらアイデンティティに気付き、今があるのです。たぶん。
総論、カヌレの歴史に思いを馳せながら、ロマンを感じながら食べましょう。

記録

ここからは実際に本場ボルドーに行った時のカヌレのお話をまとめておきますね。行ったのは2010年春なので、13年前の写真となります。
やはり本場にはお菓子屋へ行くとカヌレがあったりするのですが、何と言っても美味しかったのがここ、Baillardran(バイヤルドラン)。

後の棚を見て分かるようにカヌレがぎっしり並んだ専門店
お姉さんの社章もカヌレが輝いています
左のポスターもカヌレであれ

ここは1988年創業で、老舗、とは言えないかもしれませんが、ボルドーの町に何店舗も構える超有名店です。
個人的にはチェーン展開せず、細々と構えるお店の方が好きだったりするのですが、ここのカヌレは絶品でした。もしかするとここのお店のカヌレに出合っていなかったら、カヌレを作ろうとも思っていなかったかもしれません。というくらい。

100点満点の美しさです
そして丁寧にも一つ一つに帯が巻かれるのです
それがまた可愛かった
断面も美しい
バニラはこれでもか、という程
すごすぎ

個人的には優勝のBaillardranでしたが、ボルドーではお店ごとに色んなカヌレがありました。僕はあの綺麗な、均一に茶色く焼かれたカヌレでないと嫌なのですが、実際に並んでいるものは綺麗なものばかりではありません。

僕が身構えていたよりも、地元の人にとってカヌレはもっとカジュアルな存在のようでした。カヌレを注文すると「よく焼けたのが好きか、焼き色が浅い柔らかいのが好きか」と聞かれたことがありました。僕はよく焼けたのが好きなので、もちろん「よく焼き」を注文しました。逆に柔らかいのが好きな人がいるの?と信じられませんでしたが、こだわりを押し付けるのではなく、お客様に合わせるという考え方もあるのか、と自分の中の何かが崩れ落ちる一言でした。
確かに綺麗なたい焼きも良いですが、はみ出てる餡子や薄く焼けた生地の部分が美味しかったりしますもんね。むしろ、それが美しい、みたいな世界を感じたボルドーでした。

ところ変わって、こちらはSaint-Émilion(サンテミリオン)、ボルドー市街地から1時間以内で行けるボルドーワインの名産地です。
サクッとですが、カヌレ以外の郷土菓子もご紹介しますね。
沢山の醸造所が並びブドウ畑が広がる、そんな中にポツンと現れる老舗がありました。

1620の文字、これは・・・

そう、1620年創業の歴史ありすぎるお菓子屋が健在していました。その名も"Nadia Fermigier"。ここの名物"macarons de Saint-Émilion"(マカロンドゥサンテミリオン)は必食の美味しさです。
看板の1620の上にもMACARONS(マカロン)の文字がありますね。

パッケージとなる紙の上で焼き、そのままの状態で売られています
なかなか無いスタイルで面白い

マカロンというとピエールエルメやラデュレで売られているカラフルでクリームの挟まったものを連想する方が多いと思います。しかし、本来は写真のような焼きっぱなしのものがマカロンです。イタリアが起源といわれていますが、フランスにも各地方にそれぞれのマカロンがあり、これはサンテミリオンの名物マカロンです。サックリ焼かれて、中はしっとり。シンプルながらアーモンドを楽しめる好きな味でした。

ワイナリーツアーにも参加しましたが何言ってるかサッパリでしたスミマセン

ではボルドーの街へ戻りまして、こちらは"BOUCHONS DE BORDEAUX"(ブション ドゥ ボルドー)というお菓子。形からも想像できる通り意味は"ボルドーのコルク"。お菓子はチュイルのような生地にプラリネの詰め物にボルドーならではのソーテルヌ漬けレーズンが入っています。ボルドー土産にも良さそうですね。

老舗・名店マップ

ボルドーのカヌレの有名店をリストアップしてみました。
なかなか行くことのないフランスボルドーですが、いつの日にか役立つことを願って。ボルドーには本当に色んなカヌレがありますよ。
ウェブサイトを眺めるだけでもフランスを感じることができますね。



カヌレひとつとっても色々とお話がありますが、本編はここから・・・。
ここからは郷土菓子研究社のこれまで毎日焼いてきたカヌレのレシピをご紹介します。Binowa Cafeでは断トツの人気No.1商品でした。これを読めば同じ味が作れるはずです。

作ってみたい人にとって、できる限り丁寧に、失敗しにくいようにご説明したつもりです。見てみるだけでも、こんな風に作っているのか、と面白く見れるかと思います。この先、すごい長いです(笑)
この後ご紹介しますが、レシピの分からない点を質問できる場所も作ってみましたので、そちらもご利用していただきたいなと思います。

ワンコインでお気軽に入れる設定にしておりますが、無断転載、複製等はご遠慮くださいね。
では、本編に入ります。郷土菓子研究社のラボへ・・・

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