同人女の感情。憧憬。純愛のような。ある神作家さんとの想い出
【憧れの方との思い出】
12年ほど前。
当時の超・人気ジャンルで二次創作をしていた。
当時の私はオン専字書き。
個人サイトを作り、せっせと、推しCP小説をアップしつづけた。
推しCPに、憧れの描き手さんがいた。
圧倒的な方だった。
切なくて、きれいな漫画を描くのが、すごく上手な方だった。
キャラの表情とか、場の雰囲気とかがすごく伝わってきて大好きだった。
しかも、発行ペースがすごく速く……
表紙やノベルティのデザインもなんかおしゃれで……
本当に、すごい方だった。
ある日、私の個人サイトのカウンターがいつもの数倍の速さで回った。
晒されたと思ってひやひやした。(流行ジャンルあるある:治安が悪い)
だけど、違った。
閲覧者が、どこから、流入してきたかを調べるために解析を確認した。
急増した閲覧者のほとんどは、憧れの方のサイトから訪問していた。
こちらからは、ずっと前からリンクを貼っている。
憧れの方と相互リンク関係(死語)になったわけだけれど、私たちは、それ以上でもそれ以下でもなかった。
私はしがない、オン専字書きだったし。
憧れの方が、まじ憧れの方すぎて、交流するという発想がなかった。
少しして、イベントで、憧れの方に手紙とお菓子の差し入れをした。
手紙に、本名のファーストネームとメアドを添える(怪しいものではありません……的な意味合いで、ファンレターにはメアドを添える派でした)。
後日、返信が来た。
メールには差し入れと手紙へのお礼が書かれていた。
うれしくなりながら、メールを読み進めると追伸が添えられている。
ひっくり返った。
「メアドを打って気づきましたが、もしかして……(サイト名)のきょうやさんですか?」
というコメントと共に、私の作品への感想がつづられていた。
web拍手経由で読み専の方からコメントいただくことはあったけれど、サークル活動している方から感想をもらうのは初めてだった。すごく嬉しかった。
次のイベント。
私は、勇気を出してHNを名乗った。
すごく忙しいだろうに、憧れの方はスペース脇にずれて、あいさつに応じてくれた。
そして、私の手をぎゅっと握りしめ「もしかして……サークル参加していたんですか? 本……買わせてください!」とおっしゃった。
私は一般参加だったし、憧れの方に売る本を持ち合わせていなかった。
あの日。
憧れの方が、私の本を欲してくれたという喜びは未だ胸に残っているし。
手をぎゅっとしてもらった嬉しさも、鮮明に覚えている。
しかし、それはあんまりにも幸せで……
自分にとって都合のいい記憶なので
「夢だったのでは……?」
と思うことがある。
そういう疑念がわいた時は、現場に居合わせた従姉に事実確認を取る。
やっぱり。夢じゃなかったらしい……
同人で落ち込んだ時は……この日の感情を思い起こすようにしてる。
憧れの方と、人生の、ほんの一瞬だけ
「「あなたの描く(書く)〇〇が好き!」」
という感情でつながり合った瞬間。
あまずっぱい純愛の想い出を抱えるように。
いまでも私はこの日の記憶を大事に生きている。
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