【安斎響市 短編集】あの日、俺のキャリアは死んだ。後編
前編はこちら。
「あなたに紹介できる求人は現在ありません」
転職エージェントの担当者は、そう、冷たく言い放った。
俺と大して年も違わないだろう、20代と思われるツンとした女性の担当者。コイツ、本当に俺のポテンシャルを分かっているのか?
俺は中央大学法学部卒だぞ? 紹介できる求人がない?
新卒の就活のときは、大学OBのリクルーターについていって、そのままインターンに潜り込んだ。
就活本番の面接でも優遇されて、「ガクチカ」とか「御社でかなえたい夢」とか適当なことを言っていたら、普通に内定が出た。
苦手だったウェブテストは、Twitterで見つけた代行業者に2万円払って、替え玉受験で乗り切った。替え玉を防げるような仕組みを持っていない企業側が悪い。俺はスマートなやり方をしているだけだ。
就活は、正直言って楽勝だった。
当たり前だ。俺は中央大学法学部卒だ。
きっと、転職活動も楽勝だ。そう思っていた。
そう思っていたのに…
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