(無料公開中)No.24 - 「コンフォートゾーンを抜け出す」必要はない。
こんにちは、安斎響市です。
今日は、何となく、キャリアと努力の方向性に関するお話です。
先日、ふと思ったんです。
「コンフォートゾーンを抜け出そう」的なこと言ってる人って結構いるな、と。
まあ、言ってることは分からないでもないんですけど、いかにも「グロービス」とかが好きそうな話だな、と。
私の周りにも何人かいますよ。お手軽なMBAなどを取って、こういう御託ばっかり並べてる人。全然中身ないですけどね。
さて、あんまり毒を吐いていても仕方がないので、「コンフォートゾーンを抜け出そう」という考え方の何が問題なのか? 少し具体的にお話ししていきましょう。
ぶっちゃけ、「コンフォートゾーンを抜け出す」必要なんてない、という話です。
コンフォートゾーンって何?
先ほどのグロービスの記事によると、「コンフォートゾーン」とは、下記のように解説されています。
まあ、理解できないとまでは言いません。
確かに、「毎日毎日、自分に簡単にできそうな範囲で楽な仕事ばかりして、とにかく会社で定時まで時間潰してれば、毎月同じ給料がもらえる」みたいな状況に甘えてしまうと、後々、キャリアが死ぬと思います。
つまり、「楽チンで給料が良い仕事」というのは、決して長くは続かないので、そこに安住せずに、自分の能力を磨かないといけないということです。
この意味で、「コンフォートゾーンから抜け出そう」という考え方は、ある程度、正しいと思います。
Twitter社の大量解雇などの状況を見ていると、よく分かりますよね。
会社の利益に直接的に貢献していない「価値の低い業務」は、いつか、どこかで切られるんです。それを担当していた社員の「雇用」と共に。
日々、あまり意味の無い仕事をしている人たちは、あと5年くらいなら逃げ切れるかもしれませんが、あと20年は絶対に逃げ切れません。
今や、仕事が楽な大手ホワイト企業にしがみ付く方が、逆に「覚悟が要る」のではないかと思います。将来会社の経営が傾いて、リストラされたら一巻の終わりですからね。リスクが高すぎます。全然安定してません。
しかし…
だからと言って、「コンフォートゾーンから抜け出せ!」「居心地のいい場所に居続けると人間は成長しない!」と一方的に言い切るのは、ちょっと横暴かな、と思います。
私は、別に「コンフォートゾーンにいても成長はできる」と思うし、むしろ、「自分にとって最も居心地のいい場所を探すことがキャリアの成功例」だと、強く感じるからです。
つまり、私は「コンフォートゾーン肯定派」なんです。
「居心地がいい」のはダメなのか?
「コンフォートゾーンから抜け出そう!」と声高に叫ぶ人の多くは、
居心地のいい場所では成長できない
自分の得意分野だけで仕事をしていては、キャリアが広がらない
過去の経験や、今持っているスキルだけでは通用しないチャレンジングな環境にあえて飛び込むことで、さらに成長することができる
といった考え方を持っています。
私は、これらを否定します。
仕事やキャリアにおいては、できるだけ、自分の得意分野で勝負した方が良いですし、自分のスキルが通じない「居心地の悪い場所」に挑戦しても良いことはあまりないです。本当です。
確かに、コンフォートゾーンに閉じこもる = ただ楽をする のはダメだと私も思いますが、一方で、自分が「居心地が良い」と感じる仕事を続けることは、ワークライフバランス的にも、長期的なキャリア的にも、非常に有意義だと感じます。
「居心地が良い」と感じる仕事の方が、むしろ成長機会も多いと思います。
果敢な挑戦が必要な「辛い環境」に身を置いたって、成長できるとは限りません。それより、自分が「心地よく仕事を楽しめる環境」に身を置いた方が、仕事のパフォーマンス的にも、自分自身の成長的にもプラスなはずです。
少し分かりづらいと思うので、例を挙げましょう。
先日、飲みに行った友人(アラサーの海外駐在員)が、こんなことを言っていました。
「来年か再来年、日本に帰国したら、転職しようと思ってる。今の会社で、このまま営業の仕事を続けていても、正直言って面白くない。結局、営業実績が挙がったとしても、ただ単に前任者から引き継いだ仕事がタイミングよく成約に結び付いただけだったりするし、たまたま良いお客さんが転がってきただけだったり…
過去数年でインドネシア⇒シンガポールと環境も変わり、何かと苦労は多いし、日々やらなければいけないことも多いけど、こんなの、いくらやっても『自分の実績』だとは到底思えない。こうやって汗水垂らすのが自分じゃなくても、別に誰が担当しても大して変わらないような仕事を、あまり長く続けたいとは思えない」
彼は、海外の大学を卒業して、日系大手企業で25歳の時からもう6年くらい海外駐在員をやっている、いわゆる「エリート」です。
先ほどのグロービスの記事にあった「コンフォートゾーンにいると、自分が今持っているスキルセットで手の内に諸事を収めることができ、あまり汗をかく必要がありません」という説明に則って言えば、彼は、いまコンフォートゾーンの外にいるのでしょう。
彼は、確かに、汗水垂らして苦労して働いています。
決して、楽をしてはいません。コンフォートゾーンにいるわけではありません。自分がすでに持っているスキルセットでスムーズに仕事をこなしている、という感じではありません。
しかし、その仕事の中で「成長できている」とは、彼はまったく感じていないのです。これでは、単純に「居心地が悪い」だけです。
恐らく、コンフォートゾーンの中だとか外だとかいう話ではなく、彼は、「海外営業の仕事」にあまり向いていないのだと思います。彼自身も、そう言っていました。営業職は、もうやりたくないと。
自分のスキルセットだけでは完結しない、自分にとってハードな環境に身を置いたところで、実際には、その仕事の中で成長できるかどうか等はあまり関係ありません。
ただ「ハード」なだけ、単純に「居心地が悪い」だけの状態かもしれません。
これでは、「居心地がいい場所」= コンフォートゾーンを抜け出す意味が、あまり感じられません。
「若いうちは苦労は買ってでもしろ。それが成長につながる」
「20代のうちは、死ぬほど働く時期も必要だ」
などと言う人もいますが、私は懐疑的です。
ものすごく苦労したからといって成長しているかどうかは分からないし、辛い思いをすればするほど成長するわけでもありません。ただ辛いだけです。
自分にあまり向いていない仕事をしていると、コンフォートゾーンから抜け出して新しいことに挑戦したところで、やってもやってもストレスがたまるだけで、成長はできないんです。
「居心地がいい仕事」こそが、自分にとってのベストな環境
もう一つ、例を挙げましょう。私自身の話です。
私は27歳のとき、はじめて転職をしました。職種は以前と近い「海外営業」でしたが、業界は結構毛色の違うところに変わりました。いわゆる「異業種転職」です。
この転職は、失敗でした。
この仕事は、私が持っていたスキルセットで簡単にこなせるものではなく、学ばなければならないことも沢山あったのですが、その学ぶべき内容に、私自身がほとんど興味を持てなかったからです。
コンフォートゾーンから抜け出したところで、自分の適性に合わない仕事をしていては、学ぼう・成長しようというモチベーションが上がりません。
その後も、何度か転職や人事異動を経験しましたが、自分に合わない仕事、自分が得意としていない分野へ思い切って挑戦しようとすると、その度に失敗しました。
そして、自分の得意分野に戻ってきて、私は、やっと気が付きました。
結局は、自分の得意分野で勝負するのが最もパフォーマンスを発揮できるし、キャリアの成長にもつながるということを。
自分にとって居心地のいい職場で仕事をしていると、次のステージへ登るための努力さえも「居心地がいい」んです。
コンフォートゾーンの中で、得意なこと・好きなことをしているうちに自然と成長しているようなイメージです。
自分にあまり向いていない仕事をしていると、コンフォートゾーンから抜け出そうと新しい分野に挑戦したところで、やってもやってもストレスがたまるだけで、成長はできません。
逆に、自分の適性に合う仕事をしていると、コンフォートゾーンの中にいながら、日々、自分の持つスキルを活かして経験値を積めるし、同じ分野の仕事をしていても、経験の「深さ」が向上していくことで、プロフェッショナルとして成長できます。
そもそも、自分が本当に好きなことをやっていると、努力することを「居心地が悪い」「辛い」と感じないので、どこまで行ってもコンフォートゾーンです。抜け出す必要がありません。
本当に大事なのは、「コンフォートゾーンを抜け出す」ことではなく、「自分にとって『最高のコンフォートゾーン』がどこにあるのかを探し、自分のコンフォートゾーンを広げていくこと」なんだと思います。
よく言われる、「努力は夢中に勝てない」という状態です。
努力することをただ自然に楽しみ、「努力」だと思っていない人には、「努力する人」は一生勝てません。
自分の最も得意とする分野で「コンフォートゾーンの中にいる」のが、最強なんです。
おわりに
ここまで書いておいて何ですが、もちろん、世の中には「ただ単に楽をしているだけ」の人もいると思うので、ご注意ください。
努力をしなくていい、と言っているわけではありません。
コンフォートゾーンの中にいることで、「ただ単に楽をしていて全く成長していない」のか、それとも「自分の得意分野をどんどん伸ばして成長している」のかは、結構本人は無自覚だったりするので、この見極めは難しいです。どちらの人も、一定数いると思います。
ただ、一方で、
居心地のいい場所では成長できない
自分の得意分野だけで仕事をしていては、キャリアが広がらない
過去の経験や、今持っているスキルだけでは通用しないチャレンジングな環境にあえて飛び込むことで、さらに成長することができる
というのは完全に嘘だと私は思うので、今日の記事を書きました。
「自分が持つスキルセットでこなせる内容の仕事をしている」からと言ってそれが成長につながらないとは私は思わないし、「あえて居心地の悪い場所へ行き、新たな分野に挑戦し続ける」ことが本当にビジネスパーソンとしての成長につながるのか? というと、私はかなり疑問です。
何より、わざわざ自分から「居心地のいい場所」を捨てて、「居心地が悪い場所」に行くことが、自分自身の幸せや、キャリアの成功につながるわけがないじゃないですか。
短い人生、時間は限られているんだから、できるだけ「居心地のいい場所」にいた方がいいと、思いませんか?
今日のお話、私の自分勝手なキャリア論なので、どう捉えるかは、あなた次第です。
今後、長期的に自分の身をどこに置くべきか考えるための、少しのきっかけとなれば幸いです。
以上、お相手は、安斎響市でした。
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