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【安斎響市 短編集】鎌倉殿の女郎蜘蛛


その日、マサ子は、降り立った。
大手有名企業・鎌倉工業株式会社の役員室。
 
眼前にある、その重苦しい扉。張り詰めた空気。

この扉を、自分の手で開ける日が来ることを、どれほど夢に見ただろう。


女性である、この私が。
それどころか、専門学校卒の一般職採用。学歴も資格もない、この自分が。


思えば、12年前。
あの頃から、物語は始まっていたのかもしれない。




「マサ子さ、知ってる?」


「え?」

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