見出し画像

5年後に退職する新卒サラリーマン【第四章】 (10)

第一章 <激動の就活編> は、こちらから
第二章 <戸惑いの新入社員研修編> は、こちらから
第三章 <空前絶後の広島出向編> は、こちらから


「この部署が本当に好きだった」と涙する、沖田さん。

彼は、その感情を押しつぶすように、「心機一転、新しい部署で頑張ります」と、みんなの前でスピーチをした。


その言葉に、安斎はまったく共感できなかった。

沖田さんへの共感というより、会社に対する共感が、できなかった。


一体なぜ、こんなにも仕事に対して熱い情熱を持ち、関係者からも深く信頼される沖田さんが、本人が望んでもいない部署に異動しないといけないのだろう??


それって、誰が得をするの?
具体的に何のメリットがあるの??



同じ部署の中には、明らかに情熱も信頼もない、"Windows500" のオジサンたちもいる。彼らは、逆に、長いこと人事異動がなく、ずっとこの部署に座敷童みたいに棲みついている。

あの妖怪たちはずっとこの部署で、まるで暇つぶしみたいにダラダラと仕事をしていて、逆に、やる気と情熱あふれる沖田さんは、別の部署へ突然の配置転換。



その日。

安斎は、「ジョブローテーション」という仕組みに、初めて強烈な違和感を持った。

彼と「大企業」との長い長い戦いは、このときに、始まったのかもしれない。




沖田さんのスピーチには、もう少しだけ続きがあった。

ここから先は

2,667字 / 1画像

【初月無料】月末までに解約すれば請求は発生しません。入会後すぐ、300本以上の記事がすべて読み放題。

プレミアムメンバー

¥1,000 / 月
初月無料

頂戴したチップで「餃子とビール」を購入させていただき、今後の執筆活動に役立てたいと思います。安斎に一杯おごりたい方は、ぜひチップをお願いいたします。