5年後に退職する新卒サラリーマン【第六章】 (23)
第一章 <激動の就活編> は、こちらから。
第二章 <戸惑いの新入社員研修編> は、こちらから。
第三章 <空前絶後の広島出向編> は、こちらから。
第四章 <忍び寄る海外営業部配属編> は、こちらから。
第五章 <禁断の海外出張編> は、こちらから。
ごめん、同窓会には行けません。
いま、本社工場にいます。
この地方の雇用を生むための商品企画書を、私は作っています。
………本当は、あの裏表なく何でも言えた頃が恋しいけれど、でも今はもう少しだけ、知らないふりをします。この商品が作る売上も、きっといつか会社の老害オジサンたちの退職金になるから。
理想の商品を作るのが「商品開発」ではないと、安斎は過去に学んでいた。
お客様にとって一番良い製品を造るのが「メーカー」ではないと、安斎はもう知っていた。
日系製造業の「モノづくり」の本質は「モノづくり」ではないことを、安斎はすでに悟っていた。
その現実に本心から納得できてはいなかったが、今はただ、初めての担当プロジェクトである「25F-L」を少しでも前進させるために、見て見ぬふりをすることにした。
それが、会社員としての正義だったから。
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頂戴したチップで「餃子とビール」を購入させていただき、今後の執筆活動に役立てたいと思います。安斎に一杯おごりたい方は、ぜひチップをお願いいたします。