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5年後に退職する新卒サラリーマン【第一章】 (4)
「で・・・
でもさ、久保田ちゃん・・・
なんでそんなに『大手企業』にこだわるんだ?
さっき『どこでもいいから大手』って言ってたけど、世の中、会社って大手企業ばかりじゃないだろ?」
「安斎、お前さ・・・
なんて言うか、本当に勿体ないよな・・・
海外の名門大学・香港大学に留学して、TOEIC950点、しかも中国語も喋れる。お前みたいなハイスペックな奴、MARCHとか早慶でも、そうそういないのに、『考え方が雑』だよ。入れるんなら大手有名企業に入っといた方がいいに決まってるだろ?なんで分からないんだ・・???」
「あ・・いや・・・
もちろん、大手有名企業に入るのは『憧れ』ではあるよ。
でも・・・
自分がそんな大手に入れるかなんて分からないし・・・」
「安斎!!!
バカなのか!?お前は?
はじめっから『大手入れる』と思って就活して、大手入ってる奴なんて、ほぼいねえよ。
俺だって、メガバンクに内定貰えるなんて思ってなかったけど、とりあえず片っ端から受けまくったら面接受かって内定貰ったんだ。
お前には、『クサ大』っていうクソ微妙な学歴を跳ね返す、TOEICの高得点と、海外有名大学への留学経験がある。
GAFAとかトップ企業は流石に無理だとしても、どこか入れそうな大手企業を見極めて、『勝負』を賭けるしかねえだろ!?
美女の隣に座れるのは、美女に声をかけた奴だけだぜ!?」
・・・。
さっきまで「ちょうどいいブス」狙いとか言ってたくせに・・・
それに、実際、久保田ちゃんの彼女がめっちゃブスだってことは、一旦置いといて・・・
まぁ、確かに・・・そうだ。
私が、大学2年の時に、香港への留学を決意したのは、何者かになりたかったからだ。「クサ大」という平凡な学歴を乗り越えて、キラリと光る実績を手に入れて、英語を身に付けて、就活の勝者、そして人生の勝者に、なりたかったからだ。
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それは、そうだ。
就活とは・・・
大学3年になると「やらなければならないもの」として、全員に降ってくる試練。
就職活動。
「活動」と言いつつ、実態は「地獄」。
そこで、大手有名企業に入れるのか、それとも、名もない会社に入るしかないのか、その差は、確かに大きい。
できるのなら、誰もが知っているような超有名企業に入って、名刺でイキりたい・・・
「・・・。
それに・・・安斎。
大手有名企業の看板があれば・・・
コリドー街でモテるぞ。」
「・・・???
コリドー街って・・・何だ?」
「夢と魔法のファンタジーだ。
・・・今度、連れて行ってやる。お前が大手有名企業の内定を貰えたら、な。」
「・・・ディズニーランドみたいなもんか?」
「うーん・・・
ある意味、近いものはある。」
なるほど・・・
「モテる」と言われると、確かに興味は湧いてくる。
何者かになりたくて海外留学した、香港大学時代、私は、てっきり女性にモテると思っていたが、
近寄ってきたのはクレイジーな身長2mのクソゴツいゴリゴリの金髪アメリカ人男性だけだった。
「もしかして・・・そっち系の趣味の人か?」と思うくらい、短期間に距離を詰めてきた「彼」は、私の心の柔らかいところを今でもまだ締め付けることなどなく、彼が心から愛する、L'Arc-en-Ciel や、Tommy February6 の楽曲のSpotifyリンクを、スマホのショートメッセージでひたすら送ってくるだけだった。
何のことか分からない、平成生まれの読者は、Wikipediaを見てくれ。
あれから、僕たちは、
何かを信じてこれたかな?
夜空の向こうには、
もう明日が、待っている。
アラサーか、もしくはアラフォーにしか通じない懐メロをいきなり持ちだす安斎・・・。
いや・・・仕方がない。
彼ももうすぐアラフォーになる世代、つまり、完全にオッサンなのである。
この小説『5年後に退職する新卒サラリーマン』は、既にアラフォーに差し掛かっているオッサンである安斎が、10年以上前の大学時代、新卒サラリーマン時代のことを一生懸命思い出して回顧しながら、たまに少し酔っぱらった状態で適当に書き殴っている、極めて適当なミラクルストーリーなのだ。
この「ユルさ」に理解がある方だけ、読み進めてほしい。
話が、逸れた・・・。
とにかく・・・
安斎は、こうして、本気で目指すことになったのだ。
「大手有名企業」への就職を。
「モテたい」「モテまくりたい」という、1/3の純情な感情と共に・・・。
つづく。
頂戴したチップで「餃子とビール」を購入させていただき、今後の執筆活動に役立てたいと思います。安斎に一杯おごりたい方は、ぜひチップをお願いいたします。