そして、春が咲う
本当の春、春がやってきた
空の色や、いつかの公園や、よく聴いた曲や、思いがけない連絡や、そんなものが、
今までの憂いを嘲笑うように降りかかってきた
そんな状況を嬉しく思ってしまう自分が少し嫌だった
勝手に作ってきた物語がまるであらすじだけで終わってしまうような
そんな気がしていた
桜が咲き誇れば、その下で落ちてくる花びらを拾い
その花びらを押した栞は次の春を待ち遠しくさせる
都合の良い自分に少し困惑するけれど
それもまた良い気がした
次の春がやってきたら
こんな日もきっと羨ましく思ってしまうのだろう
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