元飛込日本一選手が、ドラマホリック!『DIVE!!』第9話を見て書き殴った
この文章は現役ハイダイビング選手(元飛込日本一選手)から見た『DIVE!!』ドラマレポートです。
所々ネタバレや常軌を逸した(頭の悪い)表現が含まれます。
それでもOKであればぜひ最後までお読み頂けると幸いです。
(まとめる関係上、実際の流れてくるシーンとは違う順番で解説する場合があります。また、権利問題対策のため画像も控えめにしていきます...ご了承くださいませ...!)
〜INTRO〜 8話から9話の架け橋
第8話では知季の恋模様と再起していく様子と、飛沫が飛込への情熱にもう一度火を灯す様子が描かれていました。
第9話ではオリンピックに選ばれながらも納得がいかず、メンタルでの乱れからスランプに陥っていた要一がメインになります。
ロボットのようだと言われていた要一にとって今までにない壁が立ちはだかる。果たしてどのように乗り越えていくのでしょうか?
第9話を振り返っていきましょう!
更に戦うダイバー達
オリンピック代表が確定した後も鍛錬し続ける選手達。1人で黙々宙返りの練習をしています。
知季は前4回半の精度を上げるため更に今までの練習から追い込んでいきます。知季特有の一度定めた方向に向かってであればひたすら進み続ける性分ですね。
気遣いができる男...!
そこに小宮トレーナーが現れて調子を伺ってくれます。どうしても根を詰めすぎる知季を気遣って休息を促してくれます。
ただのお調子者かと思いきやしっかり指導もする頼れるトレーナーです。筆者の中での小宮プロの株はなかなかいい線まできています。
○ ○ ○
違う場所では麻木コーチが飛沫に何やら怪しげな(!?)施術をしています。
背中には自分では貼りにくいので...
実は全然怪しくなくてこれはれっきとした怪我予防の一種で『テーピング』です。スポーツをしたことが無い方でも聞いたことはあるかと思います。
一般的にテーピングといえば白くて伸び縮みしないものを使う事をイメージする人が多いかと思います。しかし飛沫の腰に使用しているのは伸縮性の高い『キネシオテープ』というテープです。
通常の白いテーピングは主に動きの抑制や固定を目的とした使用方法です。対してキネシオテープは関節などの動きがある部位の補助が主な使用例です。
今回の飛沫の患部は腰です。飛込競技において腰部はもっとも受傷率が高い部位です。体を前屈したり反らしたりする際の腰の痛みを軽減するために今回はテーピングを使用することにしたのでしょう。
「こんなテープくらいで腰が...ラクになった!!」
筆者も腰痛でどうにもならなかった時初めてキネシオテープを使うと同じ反応をしたのを覚えています。たかがテープが...と思っていたら本当に動くときの痛みが軽減されて驚いたのを思い出します。
一体どのような原理で動きの補助になるの?とお思いの方が多いかと思います。詳しく説明するとこれだけでノート一つ分書けてしまうので省略しますが、簡単に言えば「増設できる人工筋肉の役割をするテープ」です。
本来の筋肉と同等の収縮率を持つキネシオテープを使って、怪我などで動きが悪くなっている部位に正しく貼り付ける事によって動きが良くなる。という仕組みです。
しかしテープはあくまで予防や軽減にしかなりません。調子に乗って無理をすると悪化します。飛込選手もよく腰や肩などに貼っている選手がいるので選手を見る際は注目してみると良いでしょう。
腰が楽になって浮かれているチョコバット飛沫を落ち着かせながら、なぜ津軽から戻ってきたのかを質問する麻木コーチ。
「ジジイの飛込見ちまったから。」
映像に残されていたシンプルだがダイナミックな演技を見て飛沫はまたプールに戻ってきました。一体あの演技は何なのか?それを知りたくて飛沫は再び東京に舞い戻ってきました。
沖津白波が飛んでいた種目は「スワンダイブ」と呼ばれていました。
スワンダイブ
今では101A(イチ マル イチ A)前飛び伸び方という種目です。決して難しい種目でもなく、空中での動きがもっとも少ない種目のひとつです。そのシンプルさゆえに誤魔化しが効かない種目でもあり、今では練習でしか飛ばないような演技です。
何の飾り気もない種目だからこそダイバー自身の強烈な存在感が採点にダイレクトに影響します。これらの要素を踏まえて『スワンダイブ』として飛べるのは現代では沖津飛沫ただ1人だと麻木コーチは言います。
「そのスワンダイブってやつを...俺に教えてくれ!」
スワンダイブを選ぶからには一際強烈なスタイルでなくてはいけません。スタイルを磨くための練習が必要となる飛沫に最終確認をする麻木コーチ。
「どんな練習にも耐えられる?」
一度は津軽に逃げ帰ったことをつつかれるも、準備期間だと何とか言い返す飛沫。目標が決まれば力強く進み続ける飛沫の覚悟をもって猛特訓が始まります。
「とにかく、これからの俺に期待してくれ!」
後日、練習をスタートする飛沫に対して突きつけられたのはなんと「バレエ」の基礎練習でした。柔軟性と心の演技の習得ということで選ばれたトレーニングです。しかし...
「絶対いや!!」
「俺、踊るのとかそーゆーのNGにしてんだよ!!」
速攻逃げ出そうとします。
中の人(髙橋優斗さん)の本業がジャニーズで歌いまくり踊りまくりなのに何言ってんだこの人...と思ってしまう人もいたかもしれません。しかし男気あふれる海の男、沖津飛沫とバレエは水と油のようにも見えます。
しかしこの練習チョイスにもまともな理由があります。それは次回の舞っぷりを見てから解説いたします!
○ ○ ○
どん底まで落ちるサラブレッド
そして今もっともしんどい思いをしているであろう要一。練習以外でのスケジュールの圧迫により肝心な練習すらまともに出来ないほどメンタルに不調をきたしていました。
プールサイドで座り込む要一。励まそうとレイジが近づいて話しかけますが目線すら合わせずに「話しかけるな。」の一言で一蹴します。
要一の性質をそれなりに理解しているレイジは空気を読んで離れていきます。これまでになく集中できていない要一を見て富士谷コーチは練習を切り上げさせました。
初めての出来事に要一自身もどう対処していいかわからない様子です。家に帰ってリビングに帰っても挨拶だけで何も話さずに自室に戻ろうとします。そんなときレイジから「知季が練習中に倒れた」との連絡が入ります。
思いもよらぬ面々
そのまま知季の家まで駆けつけると陵とレイジがいました。知季は疲れから倒れた様子でそこまで問題なさそうです。
ここで原作ではまた違った理由で知季は倒れた事になっていましたが改変されたのでしょうか。確かに演出の問題であまり映像にはしたくない場面なのでこの判断は仕方ないでしょう。気になる人は原作小説を読みましょう!!
久々に再開した陵と話すと思い出話に花を咲かせます。陵のバスケットボールへの転向、要一の性格からくる個人競技に対しての向き不向きなどの話など興味深いものばかりでした。
お見舞いの帰り際に知季がオリンピック内定に関して話をしていました。選ばれなかった事に対してもショックだったがそれ以外にも思うところがあったようです。
オリンピックの枠は...
オリンピックに出ることが自分の枠を超えるものだと考えていた。しかし自分たちが関与していない部分で勝手に進んでいく様子から自分たちのオリンピックじゃないような感覚を知季も抱いていました。
「オリンピックも、大人たちが作った一つの枠ってことがわかっちゃって...」「オリンピックの真ん中にいるのは顔も見たことような大人たちで。」
「だから俺は4回半を飛びたい。4回半を俺だけの枠にしたい。」
「俺が決めて俺が超える枠。だから誰にも邪魔されない。」
知季の決意を聞いて要一も何かを決意した様子。ついに要一も行動を起こす決意がついたようです。
○ ○ ○
敷かれたレールからの脱却
家に帰宅した後、リビングにいた富士谷コーチに要一が直談判を仕掛けます。なんでも、日水連会長の前原会長に合わせて欲しいとの内容でした。
会って、自分が選ばれた理由を直接聞きたい。納得して飛ぶための必要なプロセスとして望んだようです。いち選手が頼み込んで実現するような面会でもなく不躾にも取れる行動に父親として当然止めます。
しかしここ最近の要一の様子を知っているからこそこのお願いは止めきれなかったのでしょう。
「知らなきゃダメなんです!聞かないと、飛べないから。」
「納得して飛べないから。」
本気の『お願い』
嘆願が叶い、日水連のビルに足を運ぶ要一。単身乗り込むあたりは肝の座りかたが異常です。高校生離れしています。
広い会議室に待たされ、現れたのはいかにも偉そうな髭を貯えた男性が入ってきます。この実際にも偉い人が前原会長です。実質水泳競技の代表権の裁決ができ「メダルの鬼」とも呼ばれる組織のトップです。
時計を見ながら制限時間を事細かに宣言して要一の望みを聞き出そうとします。もちろん要一はなぜ代表で選ばれたのか、理由を聞きにきました。
日水連のドン...!!
すると前原会長は突然飛込競技の競技人口の話題を出しました。日本には900人ほどアメリカには1万人ほどいる。中国にはもっといるとも答えます。
そこで前原会長は数は力だ、との持論を挙げます。今の日本の飛込界にはスター選手がいない。このままでは日本の飛込界の未来は暗いとまで言い切ります。
「今の日本で子ども達の憧れはサッカーであり野球だ。最近はYouTuberなんかもある。」
つらい現実かもしれませんがここまでの前原会長の言葉はほぼ事実です。圧倒的な競技成績とカリスマ性を持つ選手は現状いません。それに競技人口も今では500人もいるかどうか怪しいものです。
メジャーな団体競技と比べるのもいかがなものかと思いますが、同じ個人競技の競泳でも10倍以上の競技人口は余裕でいます。
ここで飛込競技の日本での人口について補足します。
なぜここまで競技人口が少ないか。施設数や指導者数や競技特性など多々ありますが、どのスポーツ業界でも一番の盛り上がりを見せるのは競技成績による活躍だと筆者も考えています。
とは言え、飛込競技人口の少なさが原因で才能と資質を持った選手が発掘しきれていないのも事実です。「卵が先か鶏が先か」ではありませんが競技成績も競技人口もどちらも充分な結果を出せていないのが日本の飛込界の『今』です。両方の課題を解決していかなくてはなりません。
この前原会長の持論は飛込を愛する身である筆者もまだ何も貢献しきれていないことも改めて痛感しました。指導者として、そして関連競技のハイダイビング選手として悔しさを感じたシーンでした。
きたる東京オリンピックの代表として選出された選手達とは筆者も同じ試合で戦ってきたことがある選手です。その全員が全てを出し切って活躍することを心から祈っています。そして、ジュニア選手たちが憧れるスター選手となってもらいたいです。
しかし、前原会長のその後の主張が気に食わないです。
「君は顔もいいし元オリンピック選手の息子でもある。」
積み上げてきた競技成績はあるものの、出てきた理由がこれだと要一が納得いくわけがありません。まるで実力は関係ないと言っているようなものです。そこで要一が衝撃の一言を言います。
「おれのオリンピック内定を白紙に戻していただけませんか。」
君は何を言っているんだ?と誰もが聞き返すと思います。つづけて要一は条件も付けてもう一度言います。
「全部白紙に戻して、代表選考会で決め直してもらえませんか。」
「俺も正々堂々、勝ってオリンピックに行きたいんです。」
その真意を語るかのように要一の独白が始まります。
「普通の友達も、普通の家族も、彼女も、旅行の思い出も、趣味も、なにも...」
「俺には飛込以外何もなかったんです。」
そんな要一を前原会長は「それは寂しい話だな。」と評しました。
しかし当の本人は「そんなことはありません。」と即答。
何もかもを掛けてきた要一
「俺には夢があったから。何もなくたって平気でした。」
「クラスメイトからの誘いを断るたびに心の中でいつも思っていました。いつかオリンピックに行くためだと。」
幼いころから放課後も、学校のない土日も、連休も、すべて練習に費やしてきた。みんなが遊んでる間もひたすら練習。
筆者も要一ほどではないですが同じ経験を経てきたので胸が締め付けられる独白シーンでした。
前原会長はそのチャンスを与えたはずだと言いますがそういうことじゃありません。
「熱くなれないんです。自分で掴んだ感覚がないんです。」
「もう一度熱くなりたいんです。」
「自分の手で夢を掴みたいんです。」
水泳界のトップを相手に一人で大立ち回りをした後の帰り道。要一の顔は清々しくも見えました。
面会の結果をコーチ陣に報告する要一。一人の選手のほぼ独断に近い判断に冨士谷コーチは気が気じゃないありません。
しかし要一はこの決断は必要な判断だったと主張します。
前代未聞の行動に頭を抱える...
「こうしないと、きっとオリンピックに行っても後悔するから。」
「俺は飛込を嫌いになりたくなかったんです。」
冨士谷コーチは最終確認のように言います。
「選考会で負けたらオリンピックはないんだぞ。」
「俺は必ず勝ちます。」
吹っ切れた要一はもう迷うことはないでしょう。
○ ○ ○
振出しに戻った争奪戦
練習ではいつものキレのある演技を取り戻した要一。知季と飛沫がうれしそうに出迎えていきました。
要一 is back!!
そして練習中に冨士谷コーチがチーム全体に集合をかけて要一がオリンピック内定を辞退したことを報告します。そして翌年にある選考会で正式に代表を決定することを麻木コーチが伝えました。
目の色を変えたように飛沫がオリンピックには俺が行く!と宣言。
次に知季も代表権を取りに行くことを表明。
そんな二人を見てから要一が落ち着いた様子で、しかし力強くふたりに宣言します。
「残念だけどお前らには渡さない。俺がもう一度代表の座をつかむ。」
再び3人の間に火花飛び交う戦いが始まる!
宣戦布告した要一は麻木コーチに新しい種目307C(前逆宙返り3回半抱え型)を飛べるようにしてほしいと頼みます。要一にとって前逆宙返りは因縁の種目。さらに回転数を増やして今までの自分を超えたいとの事でした。
要一の頼み込みも空しく麻木コーチからはあっさり断られます。知季、飛沫、レイジの指導で忙しい。続けてこんな理由も言います。
「それに、あなたのことを一番わかっているのは私じゃない。」
そこはやはりパパが!!
タイミングを見計らったかのように冨士谷コーチが入り込んできて覚悟のほどを確かめます。
そんな中、小宮トレーナーが走り込んできて代表の選出条件を日水連が発表してきたことを伝えに来ました。
選考基準は500点以上という超高得点が条件で出してきました。
簡単に言えばこの条件はメダル圏内を狙えるほどの得点です。
メダルの鬼が課してきた条件に果たして3人は食らいつくことができるのか?更なる特訓が始まろうとしているところで第9話は幕引きでした。
○ ○ ○
まとめ
第9話は要一が再起するための必要だった選択の数々がメインでした。強烈な影響を周囲に与えていた要一もまた、いろいろな人たちから影響を受けながら立ち直っていきました。
いくら個人競技とは言え1人で答えを出しきれない問題もある。高校生らしい心の揺らぎ様を演じる作間龍斗さんが今回も素晴らしかったです。
次回第10回はそれぞれの特訓のお話の様です。
スポ根復活!次回の3人の奮闘に期待しましょう!
ドラマDIVE!!第10話は2021年6月16日 0時です!お見逃しなく!
ここまで読んでいただきありがとうございます!
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