基幹システムのアジャイル開発第3回。~想いはしっかり伝えよう~
さて、何度かお伝えしている基幹システムのアジャイル開発会議ですが、第3回が開かれました。
前回は、アジャイル開発において、最低限定義しなければいけない内容に絞り、その確認に徹した結果、ユーザー側はYes/Noを答えるだけになって、意見が出なかったお話でした。
さて第3回です。
引き続き、開発画面が出てきて、その内容説明が続きます。
そして、確認をしたり、質疑を行うのですが、前回、「今は最低限の項目の確認なので、深いロジックなどは別途お願いします」と言ってしまった手前、あまり盛り上がらず進みます。
そんな中、今回は少し違う投げかけがありました。
今までは、現在使っているシステムを新システムに移植しているという側面が強く、それがほぼ現システムそのままであったために、特に異論・質問がありませんでした。
しかし、今回は、取り込まれたデータの分析方法が二つ提案されました。
なぜならば、それは今までシステムに存在していない作業であったからです。
どういうことかというと、今までの業務は、システム上に存在している売上計画といったデータを、各ユーザーがダウンロードして、エクセルでその内容を分析したり、数字を修正したりしていました。
つまり、加工は各自の職人技で行われていたわけです。
今回は、その属人的な業務をシステム上でできるようにしよう、というコンセプトがありました。
それによって、データ修正作業などを標準作業化して業務品質を安定させたり、作業にかかる時間そのものを短縮しようという意図がありました。
私はこのコンセプトに大賛成なのですが、いよいよそれをシステムに実装し、紹介されるところに来たわけです。
まだシンプルな内容ではありましたが、2通りほど提案されました。
それぞれのパターンの操作方法を説明したあと、質問が投げかけられました。
「2通り用意しましたが、どちらを使いそうですか?」
具体的に示せていないのでわかりにくいかもしれませんが、簡単に言うとAパターンはマクロから分析をして、Bパターンはミクロから分析する、というアプローチでした。
いくつかの拠点や事業部から、「私はAパターンで仕事をしています」「Bパターンで仕事をしています」「そもそもそこまで細かく精査していません」など、色々と発言がありました。
私は、「基本Aパターンで今まで仕事をしていましたが、今後の事業戦略では様々な工場で生産をしていくことになるので、その変化を踏まえると、Bパターンも一部使いながらやっていくことも考えられます」と答えました。
開発チームには、昔実務を行っていたベテランの人が入っていますから、その人の知見から2パターン提案されたようです。
私の返答を受けて、そのベテラン社員から、「確かに、Aパターンが多い、と思うのですが、様々な工場で生産する事業の場合はBパターンのほうがいいと思って提案したんですよね」とのコメントがありました。
やっぱり、と思う反面、そういう狙いはもっと早いうちに言ったほうがいいんじゃないかな、と思いました。
今回、新しくシステムを入れる狙いというのは、今やっている業務をシステムで行う、というだけではなく、そもそもいま会社の中でバラバラな方法で運用されている実務を、出来るだけ標準化したり、最適なものに集約して業務そのものをレベルアップさせる、という側面が強いと考えます。
そういう中で開発チームが提案してくれるのですから、まずは狙いや想いをしっかり伝え、ともにいいものを作っていく、という雰囲気醸成も必要な演出だと思いました。
せっかく考えてくれているのにもったいないなあ、というのが今回の感想でした。
第2回の時に、「議論を必要以上に広げないようにしつつ、大事にすることの軸をコンセンサスにするのが難しい」と書きました。
今回は期せずしてそのような場面に遭遇しました。
意見を聞くときには、「そもそもの狙いやプロジェクトの想い」をリマインドするいい機会として、しっかり伝えていくべき、と思った第3回でした。