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ブッダの生涯⑵ 自由思想家の時代

紀元前600年頃から、アーリア人の勢力はガンジス河中流域に達しこの地方に強力な新興国家が台頭し始めた。この時代までに共和制部族国家の他に専制君主国家も出現するようになっていった。特に専制君主国家は軍隊を保有して強大な力を得た。中でもコーサラ国、マガタ国、アヴァンティ国、ヴァンサ国がこの地域で強大だった。

この時代には、ガンジス河の肥沃な土地からは多量の農産物が収穫されるため商工業も盛んになり、都市が発達し経済的にも文化的にも著しく発展し、豊かになった。ガンジス河上流部が農村社会を基盤としたバラモン至上、祭式万能のバラモン文化圏であったが、これに対してガンジス河中流域は都市社会を基盤としたクシャトリア階級中心の自由思想文化圏であった。中流域では新興国家を支えるクシャトリアの権限が絶大でバラモン至上の秩序や考え方は崩れ、むしろ反バラモン的色彩の自由思想文化が花開いた。この自由思想の担い手は『沙門(しゃもん)』と呼ばれる出家者たちだった。

急速に豊かになった社会は沙門たちの『乞食遊行』の生活を支えるのに十分だった。旧来のバラモン教は世襲され、その司祭者はバラモン階級の出家者に独占されていた。これに対し沙門はバラモン階級以外の階級から出家した新しい思想家だった。沙門たちはバラモンの権威と祭祀主義を否定した。そして形式や伝統にとらわれず、自由に考えた結果多種多様な思想が誕生した。ブッダ時代には仏教以外に62の思想があったと伝えてる。
また、6人の代表的思想家(『六師外道』)がいた。六師外道とは……

1、プーラマ・カッサパ
2、マッカリ・ゴーサーラ
3、アジタ・ケーサカンバリン
4、パクダ・カッチャーヤナ
5、ニガンダ・ナータプッタ
6、サンジャヤ・ベーラティプッタ

これらの指導者の多くは唯物論をとり、世界や人間は常に同じで不変な立場の(常在不変)たくさんの元素が集まって構成されているという『積聚説(しゃくじゅうせつ)』を唱えた。また彼らは来世を認めず、現世の快楽至上主義を唱えた。これをローカーヤタという。

以上のような時代背景にあって仏教の開祖『ブッダ』が誕生する。

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