小説 空を見上げれば(上)35
こんばんは。小説家の藪田建治です。
皆さんは今日どう過ごされました?私はいきつけの喫茶店に行ったり、家の近くを散歩したり、筋トレをしたり、まあそんな感じです。
さて小説をアップします。
「孝太昨日の夜はどこに行ってたんだ。何の連絡もないから、お父さんもお母さんも朝まで探していたんだぞ。有紀も手当り次第孝太の友達に連絡してくれてずっと待っていたんだぞ。ちゃんと答えなさい。」
「昨日の夜はずっと遠い見知らぬ土地まで行って公園で野宿をした。」
「何だと。なんでそんな危ない行動をしたんだ。なにか目的があって行ったんじゃないのか。」
「どこでも良かったんだ。別にその町じゃなくても良かった。もうこの町にも学校からも遠ざかりたかった。ただそれだけ。」
「孝太どうしたの。どうしてこの町からも学校からも遠ざかりたかったのよ。」
「僕にはもう居場所はないと思ったから。県予選の決勝で怪我をして、スタメンも後輩に奪われて。このまま腐っていくしかないと思ってた。」
「そんなことはない。取られたら取り返せば良いじゃないか。それに孝太はキャプテンなんだぞ。部員を引っ張っていく立場なんだぞ。怪我が癒えたらもう1度ピッチに立って、無我夢中で攻守で働くんだ。チームの主軸として、チームを象徴するような選手になるのがキャプテンだろ。」
「もうキャプテンという立場も嫌なんだよ。別にやりたくてやった訳じゃない。周りが俺にさせただけ。もうあそこでスタメンを張るのは俺には無理だ。」
親子の中で大きな溝が出来た。そう感じざるを得ない瞬間。孝太の気持ちは特に父親である勝哉には届かない。
もう自分の気持ちを分かってもらえないんだと、殻に閉じこもる。みなさんがこの勝哉の立場であればどう接しますか?
私は非常に難しい関係だと思います。勝哉が言いたいことも分かります。今が無理なら、復帰した後に無我夢中で取り返せば良い。
でも今の孝太には届かない。届かないのであれば、その方法で伝えようとしても結果は悪い方向に進むだけ。かといって孝太の気持ちになって寄り添うことだけも違う気がします。
世の中では時間が解決してくれるとよく聞きますが、確かにそれもあるでしょうが、私の性格からすれば時間が経って、関係性が戻っていくなんてことはあまり信じていません。心の奥底ではやはりどこか以前の感覚が残っている。そうであるなら本当に解決したといえるでしょうか?
今でも答えが見えていないかもしれませんね。
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