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セルフコンディショニングの重要性
(この記事は無料ですべて読めます)
こんにちは!
kazuki yabe@野球トレーナーです。
記念すべき第1回目の記事は
「セルフコンディショニングの重要性」
についてです!
この記事を読むと以下のことが得られます
・セルフコンディショニングがなぜ重要か理解できる
・セルフコンディショニングによって得られるメリットがわかる
では、いきます!
①投球制限だけで良いのか?
本来なら開催される予定だった今春のセンバツから導入される”1週間500球”の制限など
野球界では「球数制限」が話題となりました。
(リンク:https://diamond.jp/articles/-/222047 )
賛否両論あるこの球数制限ですが、
私は基本的には賛成です。
確かに短い大会期間中に数多くの投球をすることで
肩や肘にストレスが蓄積し、疲労やケガの原因となっていることは事実だからです。
球数と投球障害のリスクを研究した報告によると、
1日あたりでは、
■100 球以上の投球数 (Sakata J, et al. Am J Sports Med. 2017)
■50 球以上の全力投球 (松浦哲也, 他. 整スポ会誌. 2012)
また年間では 、
■100試合以上の出場(Matsuura T, et al. Orthop J Sports Med. 2013
ピッチャーに限ると
■年間 600 球以上のピッチング (Lyman S, et al. Med Sci Sports Exerc. 2001)
■100 イニング以上の投球(Fleisig GS, at al. Am J Sports Med. 2011)
が危険因子として挙げられています。
しかし
本当にそれだけで
子供たちの肩・肘は守れるのでしょうか?
また肩・肘だけでなく、子供たちのその後の野球人生を守れるのでしょうか?
答えは「ノー」です!
なぜか?
たとえ1球だけ投げたとしても、肩肘にかかるストレスはゼロではないからです!
ある研究では,
1球投げたときの肘にかかるストレスは約 64±12Nm と推定されています。
(Fleisig GS, Andrews JR et al. Am J Sports Med. 1995)
それに対し、
肘の内側側副靱帯(UCL)の破断強度は34.29±6.9Nmとされています。
(Ahmad CS, Lee TQ et al . Am J Sports Med. 2003)
これでは1球投げただけでUCLが破断してしまう計算となります。
そのため、UCLなどの静的支持機構のみでの外反ストレスの制動は難しく
加えて、筋活動による制動が必要と考えられています。
投球を繰り返すと、この筋群にもストレスがかかり、筋疲労や筋損傷につながると考えられます。
ん?...てことは、やっぱり投球数を減らした(制限した)方が良いじゃないかと思われたことでしょう。
その通りです!その通りですが、ここで投球数だけで考えてしまうといけないのです。
②肩肘へのストレス要素
基本的に投球での肩肘へのストレスの要素として
・投球数(ストレスの回数)
・投球強度(ストレスの強さ)
・投球フォーム(ストレスの方向、かかりやすさ)
・コンディショニング(ストレスを受けやすい身体状態かどうか)
・個体差(骨格や靭帯の強度、既往歴など)
が挙げられます。
これについては以前Twitterでも発信しています。
そうなのです。
投球数はこの要素の一つに過ぎないのです。
そして、たとえ球数制限をしても
「不良な投球フォーム」
や
「ストレスのかかりやすい身体の状態」
で投げているとその分ストレスがかかりやすくなってしまいます。
実際に文献においても
不良な投球フォームは投球障害につながる(瀧内敏朗. MB Orthop. 2017)
と報告されています。
③セルフコンディショニングの重要性
じゃあどんなフォームで投げるのが不良なのか?
どんな身体機能を有している場合、ストレスがかかりやすいのか?
「自分の投球フォームなんてどうやってみたら良いかわからない...」
「自分がストレスのかかりやすい身体をしているかどうかなんて、どうやって調べるの?」
そう、これらの要素はまずストレスがかかっているかどうか
自分達ではよく分からないのです。
対して、球数制限は記録さえすれば簡易的に行えるので、先ほどの要素の中でも一番管理しやすいです。そういった意味で、球数制限には賛成です。
投球フォームをみるのは難しい、管理がしにくい・・・
ただ、そこに私たち”身体の専門家”の必要性があると思ってます。
「でもチームにトレーナーや理学療法士なんていないし、今まで直接指導を受けたこともない」
こういった方が多いと思います。
そこで今後は・・・
■ストレスのかかりやすい投球フォームについて
■ストレスのかかりやすい身体機能について
(柔軟性のセルフチェックの記事はこちら)
これらがわかると、選手自身や指導者でも
自分達で管理することができる!
いわゆる「セルフマネージメント能力」や
「セルフコンディショニング能力」がつくわけです。
このセルフコンディショニング能力がつくと
事前にストレスのかかりやすい状態が把握できるので、
・自分自身の障害予防につながる
・チームの中で誰がリスクが高いのかを把握することができる
・それに応じて練習量を調節することができる
結果的にケガによる離脱を防ぎ、
個々のパフォーマンスが上がり、チームの戦力up に繋がります!
これが『セルフコンディショニングの重要性』になります。
最近ではmotusなど、簡易に肘へのストレス具合を計測できるツールがありますから、それらを併用してみても良いかもですね!
こういった最新機器やデータも上手く使えるようになるともっと良いと思います。
ということで今回の記事は以上となります。
④まとめ
・球数制限は簡易的に投球障害を予防できる手段である
しかし
・不良な投球フォームやコンディションによりストレスは増大する
・それらが分かれば、選手や指導者でセルフ管理ができる
・今後は不良な投球フォームやコンディションについて発信予定!!
今後とも宜しくお願いします。