【二塁へは駆け抜けた方が本当に速いのか?〜強豪高校が見せたあのプレー〜】
〈このプレー知っていますか?〉
みなさん、まずはこちらの動画をご覧ください。
これは2021年の夏の甲子園大会出場をかけた和歌山県大会決勝で強豪・智弁和歌山高校が行ったプレーです。
実は同様のプレーが去年のメジャーリーグでも行われています。
このプレーは智弁和歌山への指導に来たイチローさんの「駆け抜けた方が速い」という考えで教えられたものだそうです。
通常、二塁ベースには足からスライディング(フットスライディング)をします。それは二塁ベースにその後留まらないといけないからです。
一方、打者が内野ゴロを打って一塁ベースへ走る時はベースに留まらなくても良いので、駆け抜けることが多いです。
この時、ヘッドスライディングをする選手もいますが、フットスライディングをする選手はなかなかないですよね。
そのため、ベースに留まらなくても良い場面であれば、フットスライディングよりも駆け抜けた方が速いと考えられているので、このような違いがあるのだと思われます。
先程のプレーであれば、二塁ベースへの走塁のため通常はフットスライディングをする場面です。
しかし、2アウトですのでアウトにあれば得点は入りません。そのため、フットスライディングよりも駆け抜けた方が速いのであれば、セーフになる確率が高い駆け抜けをした方が良いのでは?という考えです。
当然、その後挟まれてアウトになってしまいますが、その間に2塁ランナーが生還すれば得点が入ります。
守備側もまさか駆け抜けてくるとは思っていないので、一瞬混乱し判断が遅れるため、セーフになりさえすれば得点が入る確率は高いでしょう。
このように、「フットスライディングよりも駆け抜けた方が速い」という考えのもと、このプレーが行われています。
しかし、果たしてそれは本当でしょうか?
今日はそんな実際にあったプレーの検証をした研究を紹介します。
〈走塁に関する研究紹介〉
この一塁から二塁までの到達時間は駆け抜けとフットスライディングのどちらが速いのか?という疑問に答えてくれる研究は2つあります。
1つはアメリカの大学野球選手、もう1つは日本の大学野球選手を対象にした研究です。
■アメリカの研究
もう少し具体的に説明します。
この研究では、1塁から3.96 m (13フィート) リードしたところからスタートして2塁への到達時間などがカメラを用いて測定されました。
1,2塁ベースの長さを除いて、走塁距離は合計22.9mです。
そして、駆け抜け走とフットスライディング走の最初の12.9m、最後の10m、トータルの走行時間(対象者の平均値)が比較されました。
(実際にはそれ以外にもヘッドスライディング走や2塁ベース上でストップする走法の計4走法で比較されています)
その結果、最初の12.9mの時点での走塁時間は、駆け抜け走(2.14±0.05秒)とフットスライディング走(2.18±0.06秒)で統計学的に有意差はありませんでした。
しかし、最後の10mの走塁時間は、駆け抜け走(1.13±0.04秒)の方がフットスライディング走(1.22±0.07秒)よりも有意に短かったという結果でした。
このことから、スタート地点から2塁までの到達時間は、駆け抜け走(3.28±0.09秒)の方がフットスライディング走(3.40±0.08秒)よりも有意に短いということが示されました。
■日本の研究
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