はじめて読んだ本のこと
この物語を知った切っ掛けは人形劇であった。
私がはじめて自分で選んで読んだハードカバーでもある。
調べてみれば、1984年の4月2日からNHKで放送されていた10分の番組だったらしい。翌年の3月18日まで213回を重ねて終わったのだそうだ。
最終回まで、欠かさずに観た記憶はある。
ちょうど私が小学4年生であった頃に、まるっと重なる。
その原作とは、次の夏に図書館で出会う。
とんでもなく重く大きな本であった。
780項もあって、出版元でも「理論社の大長編シリーズ」と冠している。
これまでに何度と読んだだろうか。
知らず失くしたり、あるいは知人に薦めて戻ってこなかったり。
古書店で見かけるたび、買う。
私の中では、ちょっと風変わりな保護猫活動のようなものである。
つい先日もオークションサイトで見かけて、購入した。
最後に読んだのは、数年ほど前だ。
いまの私は、これまでと1つだけ決定的に違う環境で読んでいる。
我が家には、2匹のネコがいる。
べっ甲のレヴィと茶シロのコタである。
ネコをひざにのせてこの本を読むのは、はじめてのことだ。
ナナツカマツカを巡る、ヨゴロウザ率いる野良ネコと、野良イヌの物語。
端的にはナワバリ争いの、そしてネコの側から語られることもあってイヌの側は悪である。が、俯瞰で見れば組織と個を巡る物語であり、公と私を廻る物語である。児童文学ではあるが、複雑に入り組んで終わる。
読み終えて、どんな結末であったかと説明するに難しい。
ただ、ずっしりと澱のようなものが残る。
いっしょに暮しているネコをひざにのせて読み終えたとき、今までとは違う読後になる予感がしている。
レヴィやコタが、ヨゴロウザのようになってしまわないように誓うだろう。
少なくとも、それだけは間違いない。
まるで結末を知っているかのように、本を出しておくとレヴィが寄り添って寝転がる。ちょっとだけ難しそうな顔をして本に頭を預ける。
それを眺めているのも、最近のひそかな楽しみである。