熊と遭遇した件
20代の頃、山登りに熱中していた時期がありました。もう既に社会人になっていましたので専ら週末や夏休みを利用しての登山でした。利尻島にある利尻山、ニセコアンヌプリ、奥白根山、八ヶ岳、南アルプスの鳳凰三山などそれぞれ印象的深い山々でした。南アルプスの鳳凰三山の一つ観音岳へ登っている途中のことでした。森林限界へ出る手前の鬱蒼とした森の中の登山道を歩いていると4、5メートル先に真っ黒なものが止まって見えました。岩にしては黒すぎるなと思ったその瞬間、その黒いものはドドーと音を立てながら谷の方へ落ちて行きました。何が起こったのか分からなかった私はその黒いものがあったところを横切った時にものすごい獣の匂いを感じました。今まで感じたことのない気持ちが悪くなるような匂いです。そこでハッとしたのです。ああ、今のは熊だったんだなと。腰が抜けてしばらくその場を動けませんでした。命拾いしたと思いました。あの時もしも熊が私の方に向かってきていたらと思うと
今でもゾッとします。