見出し画像

レールガンは日本にとって戦局を一変させる技術となるか?

令和4年1月11日の大手新聞報道で、「レールガン(電磁砲)開発本格化、ミサイル防衛の切り札」というのがあった。

個人的に以前から注目していた技術であるが、大手マスメディアでオープンに報道される日が来たことに感慨を覚える。こういうややマニアックな解説記事も出ていた。

以下、レールガン私見。(あくまで素人ですので、細かい点では間違いがあるかもしれません)

レールガンとは?

レールガン(電磁砲)とは、電気と磁気によって生じるローレンツ力によって、物体を超高速で打ち出す兵器である

弾丸の破壊力は質量×速度に依存するので、この速度を極限まで高めることで火薬を使わずに強力な破壊力が得られるということである。

つまり、レールガンに投入するエネルギーは「火薬」の代わりの「電気」のみ。一度作ってしまえば、火薬不要の極めてコスパの良い兵器となる(火薬を使う高性能ミサイルは高額なため)。

比較的近い技術にリニアモーターカーがあるが、リニアモーターカーは電流をコイルに流して磁場を発生させ、磁石の反発力を使って推進力を得るのに対して、レールガンは磁界の中を電流が流れることで生じる力を推進力とするという点で異なる。

上記解説記事によると、戦艦大和の主砲の初速は780m/sで、最大高度1万2000メートル、射程は42kmだった。米海軍が開発しているレールガンは初速2500m/sを目指しており、砲弾の最大高度は宇宙となる高度150km、射程370km。今回防衛省が目指すのは初速2000m/sだそうである。

ちなみに、火薬の爆発力によって砲弾を打ち出す理論限界は1800m/sだそうで、現在ロシアや中国が保有する極超音速ミサイルマッハ5(だいたい1700m/s)程度とされるため、初速2000~2500m/sを達成するレールガンはこれよりも早い。

ただし、マッハ5を超える極超音速ミサイルに対する防衛システムとしては、上記解説記事にもあるように「それより少し早い」程度のレールガンでは心もとない。アメリカでは、既に現実的にペイする兵器とはみなされなくなりつつあるようである。

それでも、日本はレールガンの開発を行うべきである。その理由をザックリと言えば、日本の国力増強に大きく寄与するものであり、「選択と集中」を行うことで得られるリターンが大きいと思うからである。具体的な理由は以下の4つ。

1. 極超音速ミサイル保有国がドヤ顔できなくなる。

2.日本がナンバー1になれる分野である(=覇権が取れる)。

3.日本の産業構造上、経済波及効果が大きい。

4.宇宙産業に大発展する可能性を秘めている。

①極超音速ミサイル保有国がドヤ顔できなくなる。

あらゆるミサイル防衛網を突破すると言われるマッハ5を超える極超音速ミサイルは確かにゲーム・チェンジャーとなりうる兵器で、フロリダのような地形の場所を攻撃するシミュレーション映像を出したロシアのドヤ顔がそれを物語っている。

極超音速ミサイルより「少し早い」レールガンは、極超音速ミサイルを打ち落とすには十分とは言えないが、いったん作ってしまえばミサイルに比べて低コストで連射可能なので、「懲罰的抑止力」としては十分である(と思う)。

つまり、マッハ5で1発ミサイルを撃ち込むと、それを超えるスピードのレールガン弾が100発くらい打ち返される、というイメージである。

「専守防衛」を国是とする日本にとって、最新兵器より「ちょっと早い」くらいの兵器がちょうどいいのではなかろうか。

②日本がナンバー1になれる分野である(=覇権が取れる)

現時点で、アメリカは極超音速兵器の開発への資源集中のため、レールガン開発を中断している。

レールガンの実用化のためには、小型で大容量の電源が必要となってくるが、これは日本企業の得意分野である。米軍のこれまでの研究成果に、日本の電源技術が加わることで、大きなブレークスルーとなる可能性がある。

米軍ですら単独開発を諦めた技術を日本主導で実用化することができれば、まさにこの分野で日本が覇権を取ることとなる。

技術覇権を取ったものが、その分野の利益をほぼ総取りする。2番じゃ駄目なんですか?という言葉もずいぶん古い歴史のものになった印象があるが、2番じゃ駄目なんです。圧倒的1番になってこそ、その分野の利益を総取りできるのだ。

③経済波及効果が大きい

レールガンの小型化・実用化に重要となってくるのが、大容量キャパシタ(コンデンサ)である。コンデンサというのは、蓄電放電の両方が可能な装置である。

大事なことなのでもう一度繰り返すw。コンデンサというのは蓄電放電の両方が可能な装置である。

つまり、大雑把に言うと「電池の一種」である。コンデンサは小型のものが多いが、大容量化することで、「素早く充電と放電ができる電池みたいなもの」として使用できるということである。従って、この大容量キャパシタの応用範囲は広く、この基礎技術の進展は日本経済にとって極めて大きな経済波及効果が期待できると思う。身近な分野で言えば、電気自動車(EV)の急速充電&パワー走行をも可能にするテクノロジーということである。

そして、下記記事にまとめられているように、大容量キャパシタの開発は日本企業の伝統的な得意分野である。

そして、世界的にも今後市場が大きく拡大すると見込まれている分野でもある。

したがって、レールガンの開発はレールガンの開発のみにとどまらない。その基礎技術の大容量キャパシタの進化も必要になってくるため、そこから波及する技術革新の波は大きく、経済波及効果も大きい。


大容量キャパシタ関連の企業に関わるややマニアックな解説

この節は、投資用のメモ書きを兼ねたマニアックな内容なので、基本的には読み飛ばしていただきたい。

大容量キャパシタは、基本的には電気二重層キャパシタ(EDLC)と呼ばれる。

上記ページにあるように、現在の使用用途は再生可能エネルギー発電所、新幹線、医療・工場の精密機器、スマートフォンや携帯電話に実用されている。パナソニック、TDK、ニチコン、日本ケミコン、太陽誘電などが代表的企業である。現在、世界最大容量(1000μF)の大容量キャパシタを量産しているのは太陽誘電とされている(太陽誘電解説HP)。投資に関わる考察記事下記リンク参照:日本ケミコン太陽誘電

一方、リチウムイオンキャパシタ(LIC)という新しい大容量キャパシタも登場している。一般的な電気二重層キャパシタの原理を使いながら、リチウムイオンを使うことでエネルギー密度を向上させたキャパシタである。従来のキャパシタに比べてエネルギー密度が高くなるという特性を持つ。太陽誘電、武蔵エナジーソリューションズといったような企業が開発を行っている。

EDLC、LICともに拡大市場であるが、LICの方が更に発展余地があるように思う。

レールガンの実用化にはもっと技術革新が必要だろうと思うが、これらの企業には引き続き頑張っていただきたい。

④宇宙産業に大発展する可能性を秘めている

米軍が目指していたとされる最大高度150kmのレールガン、これは宇宙に到達する距離である。

軍事的意義としては大陸間弾道弾や人工衛星も打ち落とせるということなのだろうが、それよりも商用目的の可能性に注目したい。

つまり、宇宙まで到達することが可能なレールガンが開発されれば、ロケットよりも簡単に衛星軌道に物資を輸送することができるということだ。

今後、宇宙旅行や宇宙ステーション開発が盛んになってきて、一大ビジネスとなっていくことが予想されるが、レールガンによる宇宙への物資輸送が可能になれば極めて低コスト化が可能となるということである。

これって、宇宙産業を支配できるほどのインパクトではないだろうか??日本がレールガンを使って宇宙産業に大きな存在感を示すことができるようになれば、兵器としての意義よりも遙かに大きい意義を持つこととなる。

ただし、レールガンで宇宙まで飛ばすというのは過去にNASAが取り組んで失敗しているようなので、ただならぬ道のりではある。

レールガンは日本にとって戦局を一変させる技術となる

上記理由から、日本はぜひともレールガン開発にイニシアチブを取るべきだと考える。軍事的な意義のみならず、大容量キャパシタ関連の多様な企業への技術イノベーション及び経済的波及効果、更に宇宙産業への発展性など、可能性は大きい分野であると思う。

米国も開発を中断し、日本が得意とする分野でもあるので、科学技術力の低下著しい日本にとって戦局を一変させうる技術となると期待する。

(JAXAのページをみていると、これまで最高7800m/sを達成したと記載があるが、どういう実験条件だったのだろう・・・!?)


他にも、日本を元気にしたいマニアックな記事あります。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?