レディ・プレイヤー1は日米同盟ポップカルチャー版ともいうべき名作!
レディ・プレイヤーワンは2018年のスティーブン・スピルバーグ監督の映画作品である。
先日、シン・エヴァンゲリオンの考察記事を書いてみたところ、なんだか急にレディ・プレイヤーワンが見たくなったので、再鑑賞した。
すると、何だか深遠なテーマに気付いてしまったような気がするので(笑)、今さらながら考察記事を書いてみようと思った。
レディ・プレイヤー1は青少年時代にサブカルに浸った年代には不朽の名作と言えるが、残念ながら過小評価されている
結論から言うと、これは誠に素晴らしい映画作品だと思うが、映画の中に登場するサブカルに一つも触れたことがない人(非オタク的パリピ人種)にとっては何の琴線にも触れないだろう。ここが評価を難しくしているところだと思う。
仮想空間が舞台の近未来SFなので、設定的に「何でもアリ」というの最大限に生かした作品である。
バック・トゥ・ザ・フューチャーのデロリアンと、アキラのバイクが並走したり、スタートレックの埋葬の場面が出たかと思えば「パダワンよ・・・」というスターウォーズ的言い回しが登場したり、メカゴジラとガンダムが戦い、ストリートファイターの波動拳を打つ。そもそも仮想空間の雰囲気がどことなくファイナル・ファンタジーだ(笑)。
こういった一つ一つの小ネタに、いかに「おお~」と思えるかがこの作品の評価に関わってくる。
けれども、評価が分かれるというところが、たぶんこの作品の最も良い点なのだろう。万人受けする作品を目指さず、オタク向けに振り切ってしまった。ある種の「オタク祭り」的状況が映画の仮想空間の中に具現化されているのだ。そういう意味ではめちゃくちゃ尖がった作品である。
そう、なんというか、「詳しい説明はしないし、興味ないやつは見なくていいよ」というところまで振り切ったアーチストとしての魂を感じるという点で、エヴァンゲリオンにちょっとした共通点を見出したのだと思う。
(以下、ストーリー上の重大なネタバレを含みます)
「ライフでもう一回やりなおし」がもたらす破壊的カタルシス
物語の終盤で、博物館(ハリデー年鑑)の案内人アバターからもらった25セントコインがExtra LIFEで、ゲームオーバーを一度回避できる、という場面があるが、ここが心の琴線に触れた人がどれほどいるだろうか?(笑)
昔のゲームは、今のゲームのように親切ではなかった。難しいわりに途中でセーブもできないし、死んだら全て終わり。最初からやりなおし。まさに”ゲームオーバー”だった。
それを救済するのが「ライフ」というシステム。スーパーマリオでいう1upだ。
この「ライフ」のありがたみというのは、不親切で鬼難度の昔のゲームをやったことがある人にしか分からないのではないだろうか。
この「ライフで復活」を見て、「はぁ?ご都合主義じゃん!(*´Д`)」と思うか、「懐かしい!!」と思うかが、この映画を楽しめるかどうかのキモだと思った。ちなみに私は、「ライフで復活」を見て、この作品の脚本家はゲームの本質が分かっていると感動した 笑
さらに、この感動は物語最終盤で波状的に拡大する。
コインをくれた案内人アバターは、実はゲーム創始者ハリデーの相棒・モローだったというオチだ。そのオチを踏まえたうえで、案内人アバターがコインをくれたシーンを見直すと、重大な伏線が張られていたことに気づく。
ゲーム創始者ハリデーはキーラ(カレン)という女性に恋をしていたが、生来のコミュ障がたたって想いを打ち明けられず、後年キーラはモローと結婚する。
案内人アバターがコインをくれたのは、ハリデーがキーラに出会ったばかりのころの映像記録を、主人公パーシヴァルたちが再生したシーンである。その映像記録の中で、モローがハリデーにデートはどうだったかと聞いている。
主人公パーシヴァルは、ハリデーの生涯を記録したハリデー年鑑の中で、「キーラという単語が出てくるのはここだけだ。賭けてもいい」と言う。熱心に何度もハリデー年鑑を見直したパーシヴァルならではの観察力である。
一方、案内人アバターは「そんなはずはない」と否定する。
しかし、ハリデー年鑑を検索してみたところ、キーラという女性の名前が登場するのはこの一か所だけで、パーシヴァルの言うことが正しかったというくだりである。
初見のときには、博物館の案内人にすぎないアバターがどうして「そんなはずない」と強く否定したのか、やや違和感が残る展開となっているのだが、案内人アバターの正体がキーラの夫でもあるモローであることを踏まえれば、すべて合点がいく。
①案内人アバターは、ハリデーとの会話の中で「キーラ」という名前が何度も出てきていたことを知っていた。
②しかし、ハリデーがその記録を削除していたということを知らなかった。
③熱心なハリデー信者でもあるパーシヴァルは、繰り返し年鑑を見ることで案内人アバター(=モロー)以上のことを知っていた(知らなかった、というべきか・・・)。
それに関心したからこそ、案内人アバターはパーシヴァルにExtra LIFEのコインをあげようと思ったのだ。ここまでのハリデー・オタクにだったら、オアシスの未来を託せるだろうと。
だからこそ、「ライフでもう一度やり直し」には重大な意味があり、それに気づいたときのカタルシスは破壊的なものとなったwww
この映画の中で再確認する日本のソフトパワーの底力
近年、商業的理由からか中国びいきのハリウッド作品が目立ったが、レディ・プレイヤーワンにおける日本びいきは傑出している。
スピルバーグ監督が凄いのか、脚本家が凄いのか、原作者が凄いのか、とにかく日本サブカルの影響をふんだんに受けた、まさに日米ポップカルチャー同盟ともいうべき映画となっている。
ラスボスが乗るギアが、メカゴジラなんですよ・・・ゴジラではなく、メカゴジラをチョイスする点が、ツボが分かっているというか何というか・・・悪役だからね。ガンダムの起動時間が短いのはウルトラマンの影響なのか、エヴァンゲリオンの活動限界なのか 笑
作者は、かなり深いレベルで、日本のサブカルチャーを理解している。
それはすなわち、日本のマンガ、アニメ、ゲーム、特撮映画が凄まじいパワーを秘めていることの証明でもある。
そういう目でこの映画を見ると、日本人は自信を取り戻すのではないかと思う。たんなるサブカルと侮ることはできない。まさに世界的巨匠であるスピルバーグ監督が作品にした時点で、日本人はもっと自身の文化の持つ力を自覚するべきだと思う。
この映画の中に見出した日本復活の鍵・・・!
先にも触れたように、レディ・プレイヤー1という映画は、サブカルに共感を示す層に特化した「オタク祭り」的映画である。たぶん、興行収入的な目的以上に、アーチストとしての魂を込めた作品なのだろうと思う。
それが端的に現れているのが、イースター・エッグを渡す屋根裏のハリデーの最後のセリフ。
「僕のゲームで遊んでくれてありがとう」
・・・こんな名言が他にあるだろうか?
「お買い上げ、ありがとうございます」じゃないんですよ 笑
「僕のゲームで遊んでくれてありがとう」!
売れたり、有名になったりすることも大切なことかも知れないけれど、それを考えているだけでは真の名作は生まれないと思う。自分が生み出したものを他人が楽しんでくれる、アーチストにとってこれ以上の究極の目標ってないのではないだろうか。
これは、スピルバーグ監督の「僕の映画を楽しんでくれてありがとう」という言葉に置き換えることができるという説もあるが、何か作品作りをする人々にとっての普遍的・究極的価値に他ならない。
恐らく、エヴァンゲリオンだって、はじめからこんなに世界中で人気を出そうと思って作っていないと思うし、レディ・プレイヤー1に登場する多くの作品もそうなのだろうと思う。
作家が、自分が表現したいものを魂をこめて表現する。その魂が受け入れられた結果、世界的に売れるようになる。これが本来あるべき「文化」の本質なのではないかと思った。
「売れる作品を作る」という目標だけでは、到達できない領域がある。
ただし、世界は自分が表現したいものをただ受け入れてくれるほど甘くない。一つの成功作は、数百の失敗作の上に成り立っている。自分が表現したものが世界に広く受け入れられるということは、本当に凄いことだ。それを理解しているからこそ、「僕の作品を楽しんでくれてありがとう」という言葉が出てくるのだ。
一つの名作は、数百の凡作との切磋琢磨の末に現れる。その競争原理こそ、日本のソフトパワーの源泉なのだと思う。
そして、この力の源泉の法則は、マンガ、アニメ、ゲーム、音楽などのポップカルチャーのみに当てはまるものではない。日本の技術力、基礎研究力もまた然りである。
「すぐ売れる商品を作る」「すぐ成果の出る研究を行う」
これを繰り返すだけでは、到達できない領域があると思う。バブル崩壊以降、これを繰り返してきたからこそ、日本の技術力、基礎研究力は衰退してきたのではないだろうか。
一つの超ヒット商品、一つの革新的技術、一つのノーベル賞的研究成果は、数百・数千の切磋琢磨や失敗の上に生まれる。短期的なコスト削減のため、目先の失敗を恐れる日本の体質こそ、日本の国力衰退の原因だと思う。
マンガ、アニメ、音楽、ゲームなどだけでなく、技術面や研究面でも、「安心して失敗できる環境作り」をすることからこそ、日本復活の基盤は作られるのではないだろうか。
そういう意味では、政治家や官僚、トップ企業の経営陣たちにこそ、この作品を見てもらいたい。そして、IOIの社長のようにならないでもらいたいw
総合評価
★★★★☆ 4点(個人的には不朽の名作と思うが、尖がりすぎていて一般受けしにくい)
でも日本人は元気を取り戻す作品だと思う。
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