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淀川リユニオン

退勤したらそのまま
冬の淀川へ
息を切らし河川敷へ下りて行って
着いたらスマートフォンはポケットへ
方向感覚もなくなる暗闇
どこへでもなく
夜の闇を駆けまわっていく
叫びながら

心地いい
ここは
誰も居ないから
誰でいなくてもいいから
もしかしたらもう
人間ですらなくなってしまっても
いいのかも知れない
瞳を閉じても開いても
あまり変わらない
水の流れる音
見上げると彼方には
橋梁をすれ違うヘッドライト
こんな夜だから
喫煙がしたい
いつまでも
忘れない
脳に刻まれた快楽を
と言うよりは
教えてもらった女の子のこと
元気にしているだろうか
「あなたは?」
と聞かれて
「俺は」
と少し間があって
それがとても正しいなと思う
だってこんな所に来ているのだから

「うわぁー」と書いても
文字では決して届かない叫びがあること
夜の川原へおいで
ここにしかないものが
流れたり滞留しているから
また来てもいい
その代わり必ず戻らないとならない

厳冬
深夜
道路の真ん中に立っていたって誰も居ない
私だって居ない
そんな夜にはあえて傘から手を出して
曝して
さらさらと流れていく私が粒になって
砂塵として
飛ばされて見えなくなる
吹き溜まりに集うから
今夜の再会を詩にして
また必ず戻ってゆく
ねぇ必ず戻るんだよ
そう言われたでしょう

心のなか
鳴っているその声は
いったい
いつのものでしょう
「また会いましょう」
可能性でいい
可能性が私たちを
生かしていくから

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