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本物の「傾聴」とは何か?

諸富祥彦『カール・ロジャーズ  カウンセリングの原点』を読んでいます。


繰り返すが、傾聴の意味は、クライアントが「わかってもらうこと」にあるのでも、「聴いてもらうこと」にあるのでもない。傾聴してもらうことでクライアントが「自分自身の内側への傾聴を学習すること」にある。
「自己への傾聴」を学び、自分自身のこころの声を聴いていける、自立した人間へと成長していくのを援助することに傾聴の意味はある、とロジャーズは言っている。 (P.172~173)


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家族や友人との会話であっても、上司部下間の面談であっても、カウンセリングであっても、ほんとうの意味で相手の話を聴く、傾聴するというのは本当に難しいことです。

しかし、「傾聴」という単語自体が最近市民権を得てきたのか、安易かつ曖昧な意味で使用されることが多いように感じます。

もちろん私自身、傾聴に対する理解も実践も不十分なのですが、それでも、「それを傾聴と呼んでいいのか?」と違和感を感じてしまうような言説、書籍に出会うことが少なくありません。


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「傾聴」に対する理解が浅いと、自分(聞き手)が相手を受け入れること、理解しようとすることばかりを考え、そのプロセスを傾聴とみなしてしまいがちです。

しかしロジャーズは、傾聴の目的とは、話し手自身が自分を受け入れ、「自己への傾聴」を学ぶことであると主張します。
聞き手として相手のことを理解しようとすることも大切ですが、本来の意味はそこにはないのです。

話し手は自分の話を傾聴してもらうことで、自分のこころの声を聴くことを体験・学習し、ありのままの自分を受容・肯定できるようになっていきます。

自分の感情を否認したり、抑圧したりすることなく、聞き手(カウンセラー)が自分に接してくれるような仕方で、自分自身に関わっていくことができるようになっていくような関わり方が、傾聴であると主張しています。


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傾聴の意味は、クライアントが自立し、自分自身のこころの声を受け入れられるよう援助することにあるとロジャーズは語ります。

話し手自身が「自己実現」、「社会への適応」といったことから離脱し、自分の内側に入り込み、自分の”内臓感覚”で生きていける状態を目指すのがロジャーズの考え方です。

一見わかりやすいようで奥が深い、「傾聴」について学べる良い本です。


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