自分の仕事に酔いません。
野地秩嘉『一流たちの修行時代』を読んでいます。
かつてリッツ・カールトンの日本支社長をしていた高野登さんのパートの中に、こんな文章がありました。
ホテルマンの実力とは自らのサービスを誇示することではない。
他人の笑顔を見て心から満足できることだ。 (p.229)
この文章を読んでいて、自分がホテルでアルバイトをしていた頃のことを思い出しました。
私は大学1年生の時に、品川のグランドプリンスホテルの中にあるブッフェで、ホールスタッフのバイトをしていました。
(「ホテルで働いてる」って超カッコよくないですか?「バイト何?」と聞かれた時に、「プリンスホテルのブッフェ」とドヤ顔で答えることに生きがいを見出す日々でした)
結構お高めの店で(ランチがたしか5000円ぐらいする)、大人の雰囲気。
シェフが目の前でローストビーフを切ってくれたり、お洒落でちっちゃい料理がたくさん並んでいたりします。
お客様も、店の雰囲気も上品。外国人もたくさん来る。VIPも来る。
大学生的に言うと「超カッケェ」店です。
働き始めてすぐの頃は緊張しまくり、ドキドキしながら接客をしていました。自分で言うのもなんですが愛想も悪くないですし、それなりに向いていたと思います。
数ヶ月もすれば、流石に仕事に慣れてきます。
店自体の格の高さ、雰囲気も手伝って、大して仕事もできないくせに、自分の仕事に酔っていました。
「どうや、いいサービスだろ?」
「うわぁ俺、気が利いてるわ〜」
今思い返すととすっごく恥ずかしいんですけど、こんなことを思いながら仕事をしていました。
もう、自分を誇示しまくり。自分の仕事に酔いまくり。
ドヤ顔でお客様をお席までご案内し、ドヤ顔でワインをつぎ、ドヤ顔でお済みのお皿を下げてました。お客様目線もクソもありません。
本を読んでいて、あの時の自分は完全に自分のサービスを誇示している状態だったな、と反省しました。
ある程度経験を積んで、ある程度スキルがつくと、どこかのタイミングで必ず”小慣れてくる”タイミングがくるのだと思います。
いい加減に済ませたり、自分自身を誇示したり。
新人の頃に抱いていた「お客様のために」みたいな意識がどこかに消え、自分がカッコつけたり、楽をしたりすることばかりを考えるようになってしまう。
でも、そうやってスキルをひけらかしたり、楽したりすることが目的になったらアウトです。それは、必ずお客様に伝わります。
「あ、この人、私のことを見てくれてない」と。
仕事に慣れて、スキルや経験が貯まった時に”小慣れたヤツ”にならないようにするためには、お客様や同僚、家族といった他人の笑顔から、自分なりに”報酬”、”満足”を見出す習慣が不可欠なんじゃないかな、と思いました。
自分は4月から、人事領域のコンサルティングの会社に入りますが、小慣れてて、自分のスキルや経験をひけらかすようなコンサルタントって、お客様から見ると最悪だろうと思います。
自分は自分の仕事に酔いやすいことをホテルのバイトで実証済みなので、「他人の笑顔を見て満足する」ことを忘れないように、”修行時代”を過ごしたいと思います。