中学卒業と共に終了したはずの恋が高1の文化祭で再始動した話
わざとドラマチックなタイトルをつけてみましたが、先に言っておきます。
実際はそんなに大した話でもないんです。
正直オチらしいオチもありません。
(なんて書くと、せっかく読み始めてくれた人に「じゃあいいや」と逃げられてしまいそうですが)
でも夢のないことを言ってしまえば、現実の恋愛なんてそんなもんです。
漫画やドラマみたいにそう上手くはいきません。
私の学生時代自体、漫画やドラマのようなキラキラ感とは遥かにかけ離れていました。
言ってしまえば、確実に「隠」側の人間でした。(隠キャっていう言葉は当時まだ生まれていなかったような気がする)
ただ、そんな隠の者でもひっそりと恋をしていました。
今日はそんな恋の晩年の話を書いてみたいと思います。
今回の主旨からズレている中1〜中3は爆速でまとめます
あくまで今回のテーマは「心に残る学校行事」。
そして私がスポットライトを当てようとしているのは「中学の卒業式」「高1の文化祭」ここです。
とは言え、全10話くらいのドラマをいきなり9話あたりから見始めてもワケがわからないと思います。
もちろん冒頭でもお話した通り、ドラマのような夢展開は無い、あくまでどこにでもいるような田舎娘の何の変哲もない話。
ただ便宜的には「物語っぽく」書いたほうが多少面白みはあるんじゃない?とも思います。
書くからには、やっぱり読んでもらいたいじゃないですか…人間だもの…
物語性を是としたいのか非としたいのかだんだんよく分からなくなってきました。
無駄話はこの辺にして、まずは登場人物説明&ざっくりとしたあらすじを。
私が彼(ここでは仮に「ケンくん」とします)を知ったのは中学1年の終わり頃。
私は1組、ケンくんは2組でした。
全校集会の時、ケンくんは列の先頭に立ってクラスメイトを整列させていました。
そう、ケンくんは学級委員でした。
背が小さい順に並んでいる列の一番前に立っているケンくんは逆に高身長だったので、やたら目立っていたのを今でも覚えています。
私は隣のクラスの列の一番後ろで、こっそりケンくんを認識しました。
正直に言うと、雰囲気がとっても好みでした。
(どことなく俳優の瑛太さん似)(『ヴォイス〜命なき者の声〜』というドラマを観て以来瑛太さんにドハマりしていた私)
そしてやってきた新しい季節。中学2年に進級。
私とケンくんは、同じクラスになりました。
ケンくんは何というか、とても飄々とした人で。
明るい!陽キャ!というわけでもないけれど、でもコミュ力はかなり高かったと思います。基本的に誰彼構わずふら〜っと絡みにいく人でした。
隠の者である私にもちょくちょく絡んできて、「うわ、喋るとこんな感じの人なのか…正直口は悪いし態度も悪いな」と思ったのですが、気づいたら私はケンくんにしっかり恋をしてしまいました。
どこが好きだったの?と聞かれると、これまたしっかり悩んでしまうのですが(※初見から見た目の雰囲気が好みだったのは事実ですが一目惚れというわけではなかったです)、たぶんふとした時に見せてくる優しさみたいなものが、私は「ずるいなぁ」と思っていたのだと思います。(優しさエピソードは書き出すと長くなるので割愛します)
そして季節はまたひと巡りし、中学3年の春。
新しいクラス名簿が高々と貼り出された生徒昇降口は、毎年のことながら制服の群れでごった返していて。ある意味新年度の風物詩的風景。
私もその群れの中で名簿を見上げ、自分の名前を探していたら、後ろから肩を叩かれました。
「同じクラスじゃん。今年もよろしく」
それだけ言って、ケンくんはすぐにふら〜っとその場を離れていきました。
「そういうところが君はずるいんだよ」と思いながら、正直うれしくてうれしくて仕方なかった私なのでした。
そんなトキメキと共に幕を開けた中学生活最後の1年でしたが、その後は特別何かが起こるわけでもなく。
2年連続でケンくんと同じクラスにはなれましたが、関係性はあくまでただのクラスメイト、それだけ。
事あるごとに飄々と絡んできて、私は平静を装ってその謎の絡みに対応して、そんな風にあっという間に1年は過ぎて行きました。
卒業のときは隣の席だったけど
中3のときは、担任の方針でやたら席替えが多いクラスでした。
月1ペースで席替えをしていて、何度かケンくんと隣の席になったこともありました。
そして最後の最後、卒業式が目前まで迫った3月の席替えで、私は運良くケンくんと隣の席になることができました。
「告白」という2文字が、何度も頭の中によぎりました。
これまでは当たり前のように2年間を同じ教室で過ごしてきたけれど、それがもう当たり前じゃなくなる。そのことに、私はとてつもない喪失感を感じてしまいました。
とは言え、告白なんて私は一度もしたことがありません。
その2文字が卒業間近に脳内でちらつくたび、同時に「でも」「だって」「ムリ」と否定的な言葉も矢のようにぴゅんぴゅん飛び交いました。
そしてあっという間に迎えてしまった卒業式当日。
空っぽになった机の中には、唯一前日に配布されていた卒業アルバムだけが残っていて。
せめて最後の白紙のページに、ひとことコメントをケンくんに書いてほしい。それだけは強く思いました。
(みんなで自由に寄せ書きし合う流れになっていました)
そしてもし、もし何かのタイミングで気持ちを伝えられるタイミングがあったら、そのときはもう、流れに任せる。もう最後なんだし、なるようになれ!と。
それから、ちょっとおこがましいような気もしましたが、ケンくんの方からのアクションを期待している自分も心のどこかにいたと思います。
ちょっとくらいなら、希望を持ったっていいじゃないですか…恋する女の子なら誰しもが、どうしたって少しは期待はしちゃいます。
しかし、しかしですよ。
卒業式終了後、教室に戻ってきて、各々泣いたり抱き合ったり、早速アルバムを広げてコメントを書き合ったり…なんてしている間に、ケンくんはさっさと帰ってしまったんですよ。
もう、言葉も出ませんでした。
最後の最後までいまいち何を考えているのか分からないというか、ゴーイングマイウェイというか。
いなくなってしまった相手に対して、寄せ書きを書いてもらうも何もありません。当然のことながら告白するもされるも夢のまた夢。
本当の意味で空っぽになってしまった隣の席を見やりながら、私はただただ呆然とすることしかできませんでした。
そんな風に、私の中学生活(と、片想い)はあっけなく幕を閉じたのでした。
そして半年後のびっくり
中学時代、口が悪いケンくんに、コンプレックスを抱えている容姿について私はちょいちょい指摘されていました。
今思えば、目に映ったままのことをストレートに口にする、いかにも中学生男子らしい言動っちゃ言動でしたが。
とはいえ当時の私だって中学生。それなりに多感です。言われたことはストレートに受け取っちゃいます。ただでさえ気にしいな性格なので時には引きずりもします。
でも同時に、こんな風にも思いました。
「高校生になったらもっともっと垢抜けて、恋もして、私にあんなことやこんなことを言ってきたケンくんを見返してやるんだ!!」とも。
新しい恋!とワクワクする気持ちと、ケンくんへの消化不良な気持ちの両方を抱えながら、新天地での高校生活がスタート。
ただ、ついこないだまで田舎くさい制服に身を包んでいた私の心中では、不完全燃焼な想いがまだまだ大きな面積を占めていたのでした。
高校1年。
同じクラスで、チーちゃん(仮名)という仲の良い友達ができました。
身長164cmの私と身長148cmのチーちゃんはなかなかのデコボココンビでしたが、相性はとても良くて。
そんなチーちゃんが「あのね」とウキウキした感じであることを教えてくれたのは、夏がもう始まりかけていた7月頃でした。
「気になってる」は言わずもがな、恋愛方面のアレです。
私はキャッキャしながらその話を聞いてはいましたが、内心は「いいなあ」と羨ましくて仕方がありませんでした。
ケンくんのメールアドレスどころか、どこの高校に進学したのかさえ、私は知らなかったのです。
聞くタイミングなんていくらでもあったはずなのに、何故だか私はそれができませんでした。
とても頭の良い私立高校を目指していたことは風の噂で何となく知っていましたが、その受験がおそらく上手くいかなかったことも風の噂で何となく知っていました。
何度か隣の席にもなり、コミュニケーションもまあまあ取っていた方とはいえ、基本的に私のスタンスは「ケンくんからの話しかけられ待ち」。
もっと自分からも話しかけにいけばよかった、せめてどこの高校に行ったのかくらい知っておきたかった、と何度も後悔しました。
まあ、進学先の高校を把握したところで、メアドも知らずに中学校を卒業してしまった以上、どうすることもできないんですけどね。(当時は今と違いまだまだガラケー文化。時の流れを感じますわ…)
そんなモヤモヤとやさぐれを抱えた私を、絶賛キャッキャ中のチーちゃんが「ねえねえ!A高の文化祭に行ってみようよ!」と誘い出しました。
A高とは、チーちゃんが気になっている同中ボーイ・ショウくん(仮名)が通っている高校。
ショウくんがどんな男の子なのかも見てみたいし、よその高校の文化祭に遊びに行くのも単純に面白そう、そう思って私はチーちゃんの誘いに喜んでOKしました。
時を進めてA高文化祭当日。
「ショウくんは1年2組だって」とチーちゃんに手を引かれ、早速そのクラスが出し物をしているエリアへ。
詳細はあんまりはっきりと覚えていないのですが、おそらく体育館っぽい広々としたスペースの一角で、VS嵐をどことなく意識したようなちょっとしたアトラクションを1年2組は用意していました。
さすが私立高校は何だか規模感が違うなあ、なんてことを思いながら、私は「ん?」ととある人物にふと目が止まりました。
1年2組のエリアに近づいていくにつれて、鮮明になっていくその人物像。
「えっ」「いや」「まさか」「そんな」「うそ」と、久しぶりに頭の中で、無数の矢が猛烈な勢いで飛び交い始めました。
心臓が口から飛び出るかと思った、という比喩を「大袈裟な」とちょっと小馬鹿にしていたそれまでの私。
だけどこの時初めて「あれは決して大袈裟じゃない」と身をもって実感したのでした。心臓、丸ごと口から飛び出そうでしたよ。
気付いたら私は、その場から猛ダッシュで逃走。
頭で考えるより先に、身体が動いていました。
唐突な私の異常行動に、隣にいたチーちゃんはもちろん大困惑。
「え?え?なに、どうしたの!?」と慌てて追いかけてきて。
ケンくんのこと、ケンくんとの諸々のエピソードはすでにチーちゃんにも粗方話していました。(仲良くなるとどうしたって恋バナが話題に挙がってきがち)
動揺しきりの私と興奮しきりのチーちゃん。
ただ、結局この日はケンくんと直接会話をすることはありませんでした。
「せっかくなんだから声かけなよ!」と何度もチーちゃんに言われましたが、イヤイヤモジモジしていた私。
なんせ「ケンくんからの話しかけられ待ち」が私の基本スタンスだったので、「えっ何て話しかければ…?」「しかも半年ぶりよ…?」とオロオロするしか術がなく。
そんな私を見かねたかのように、チーちゃんはある行動に出ました。
指先で送る君へのメッセージ
まともな思考すらままならない私(アホみたいに動揺しすぎ)でしたが、チーちゃんはあくまで冷静に、私の混乱状態を紐解いてくれました。
ここでも、頭で考えるより先に、頭が縦に動いていました。
そんなこんなで私がオロオロしている間に、私を取り巻く状況はこんな感じに変化していたのでした。
細かい部分は私の脚色が入っていますが。
その後、聞いた話によると「こじまさん(私です。当時は旧姓だからこじまではないけど)とメアド交換したい」とケンくんがショウくんに伝え、ケンくんのアドレスがそのままショウくん→チーちゃん→私という経由で流れてきました。
メールでなら、本人を目の前にしたときのようにパニックにならず、落ち着いて思考を整理できる。伝えたいことを、伝えられる。
…とは確かに思いましたが、それでも送信ボタンを押すまでにたぶん30分くらいはかかった記憶があります。(かかりすぎ)
「久しぶり。もう色々話は聞いてると思うけど、こないだA高の文化祭に遊びに行ったよ。中学のときと変わってなかったね」
確か1通目は、こんな感じの内容だったと思います。
「声かけてくれたらよかったのに。笑」とケンくんにも言われてしまいました。
いやそんな…無理だよ…進学先不明の片想い男子が急に目の前に現れたらパニくるって…逃亡しちゃうって…
1通目の「色々話は聞いてると思うけど」の中に、私は「君のことがずっと好きだったんだよ」の意も込めました。(それは伝わらんだろ)
伝わらんだろとは思ったのですが、もしかしたら伝わっていたのかもしれません。
ケンくんからは、こう返信がありました。
こっ…これは…???
「ありがとう」は、「うれしかった」は、要するに私の気持ちに対するアンサーという解釈でOK…???
ただその場合、「ありがとう」「うれしい」とは要するに何…?
「ありがとう」「うれしい」その先は…?
拒絶されなかっただけ、ヨシとするのか?
またも私はプチパニック状態に。
ただこの期に及んでも私は能動的になれず、大事な部分に関して直接確かめることはできませんでした。
他愛のないメールのやり取りを何通か交わして、「今度はこっちの文化祭に遊びにおいでよ」というところで一旦話は落ち着きました。
そう、落ち着いちゃったんですね。
せっかくチーちゃん&ショウくんがアシストしてくれたのに。
でも私からしたら、もう会うことも話すこともないだろうと思っていたケンくんと再会できて、その上連絡先まで交換できただけで奇跡同然の出来事でした。
人間は忘れるいきものだけど
私が通っていた高校の文化祭は、A高文化祭の数週間後に行われました。
「ギリギリの時間になっちゃうかもしれないけど、遊びに行くね」とケンくんは事前に言ってくれてはいましたが、当日、「ごめん。道に迷って行けなかった」とのメールが。
道に迷って、行けなかった……
確かに、駅からだいぶ離れていて、ちょっと分かりづらい所に建ってはいるけども…。
「これはおそらく来てないな。というか最初からそんなに行く気もなかったのかもしれないな」と私は静かに解釈して、「そっか。残念。また来年遊びに来てね」というあっさりとした返事を送ったのでした。
私も私で、好きなんだかもうそんなに好きではないんだか、ケンくんに対してどうもはっきりしていなかったなと今当時を振り返ると思います。
でもだって、中学時代の私がそんな感じだったから。
ケンくんの前では、気持ちを悟られまいと基本的に塩対応だったから。
「スキスキ!」というストレートな気持ちを本人の前で溢れさせる方法なんて、私にはやっぱり分かりませんでした。
その後、ケンくんの誕生日に一度だけ、「誕生日おめでとう」と思い切ってメールを送ってみました。
ケンくんからの返信は、「よく覚えてたね。ありがとう」のひとこと。
これが、私とケンくんの最後のやり取りとなりました。
私にもっと勇気や行動力があれば、もしかしたらまた違った状況になっていたのかもしれません。
「付き合おうか迷ってる」と、どうやらケンくんは口走っていたこともあったみたいです。例の、ショウくん&チーちゃん経由でそんな話を聞いたこともありました。
「だったら何かアクションがあるはず」と、きっと私は心のどこかで期待していたのでしょう。
でも実際は、何も言われていません。ケンくんの真意は、今も謎のまま。
せっかく掴んだチャンスの場でも、「ケンくんからの話しかけられ待ち」に浸かりきってしまっていた私。
今でも残る、学生時代最大の後悔がこれかもしれません。
ただ、悲しいかな、人間は忘れる生き物。
時間の経過とともに、ケンくんへの気持ちも少しずつ薄れていって。
どんなに好きだったとしても、その恋する気持ちは、数ある無数の記憶と一緒になって馴らされて。
そうして10数年の時が過ぎ、今に至ります。
中学卒業と共に終了したはずの恋が高1の文化祭で再始動したけど、特に何も起こらず自然消滅した、が今回のお話の結末です。
だらだら書いていたら、8000字とかいう文字数になってしまいました…最後まで読んでいただいた方は、かなりの猛者だと思います……ありがとうございます……!
どこかの誰かの暇つぶしになってくれたら嬉しいな、なんて思います。
ただ、好き勝手に書きすぎて「心に残る学校行事」というテーマからだいぶ乖離しているような気がしてなりません。
これはもう完全に「心に残る片想い」でしかない。すみません。お許しください。
私もチーちゃんも、今ではそれぞれ結婚して、新たな人生のスタートを切っています。
(私のほうは言わずもがなかもしれませんが、どちらもお相手は、ケンくんでもショウくんでもありません)
チーちゃんにいたっては、今年の5月にかわいいかわいい赤ちゃんを出産。
同じ教室で同じ制服を着て一緒にキャッキャしてた小柄なチーちゃんが、お母さんの顔をして赤ちゃんを抱っこしている姿は、なんだかとても不思議な光景で。
でも同時に、溢れんばかりのうれしさと幸福感で、心がいっぱいにもなりました。
ふるふるとやわらかい赤ちゃんを前にすると、こんなにも人はでれでれと相好を崩してしまうのかと身をもって実感。
そんなこんなでチーちゃんとはたまに連絡を取り合ってはいますが、かつて抱いていた恋心のほうはというと、もうすっかり記憶の引き出しの中。
繰り返しになりますが、悲しいかな、人間は忘れる生き物。
それでも、やっぱりふとした時に思い出しちゃうんですね。
中学時代、いつだかのロングホームルームの時間に、「えらくなりたい」「社長になりたい」みたいな夢を確かケンくんは語っていた気がします。
どこかの企業のトップとして、ケンくんの名前を見かける日が来ることをこっそり楽しみにしている、そんな私でした。
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