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自転車の勇姿を胸に刻んで
乗っていた自転車が壊れた。
いや、とうとう限界がきた
と言った方が正しいかもしれない。
チェーンはことあるごとに外れ、タイヤの空気は入れて間もなくするすると抜けていくので、気づいた時には車輪からペタンペタンと音がする。
あと、ペダルがめちゃくちゃ引っかかる。
「さぁ漕ぐぞ」と息巻いているところでガクッと引っかかる。
出鼻を挫かれるとはこのことか。
そんな訳で、もはやウォーターセブン編のゴーイングメリー号並みに満身創痍の自転車なのだけど、買ったのはこっちに越してくるタイミングだったので、丸4年ぐらい経過している事になる。
元々、自転車は移動できれば良いと思っているタイプだったので、サイクルショップで下から数えた方が早いくらい安い値段で、ギア変速も付いていない、至って普通の自転車を購入した。
東京ではあんまり自転車に乗る機会も無いだろうと思い、そこまでスペックの高くない自転車を選んだ節もあるのだけど、全くそんなことはなく、この自転車で浅草のあらゆる場所へと出かけていた。
思い返すと、あまり自転車に頓着がなくなったのは、大阪に住んでいた頃に友人に誘われて渋々参加した、淡路島までのサイクリングを経験してからかもしれない。
友達に借りて初めて乗ったロードバイクを意気揚々と漕ぎ始めたものの、全く乗り方も分からず、そもそもサドルの位置が正しいのかも怪しいまま乗り続けていた結果、淡路島に着いた頃には完全に息絶え絶えとなっていた。
しかも、淡路島に着いてゴールかと思いきや、まだ中心部まで自転車を漕いでいくという。冗談じゃない。
半ば仲間に見捨てられながらも、何とか気力を振り絞って自転車を漕ぎ続けていると、ラスト数キロの地点からは友人たちに励まされながら目的地を目指していた。
最終的にサライを合唱されながらゴールすると言う、何とも感動的な幕引きではあったものの、友人からは「もうサイクリングには呼ばない」と失格の烙印を押され、こちらも二つ返事で了承した。借りたロードバイクは熨斗をつけて返した。
そんな訳で、自転車と言うものにあまり良い思い出はなかったのだけど、4年間乗り続けたこの自転車にはそれなりに愛着もあったので、ここまでボロボロになるまで乗せ続けてくれてありがとうと伝えたい。
通勤途中でチェーンが外れたこともあった。
家の裏に置いていたら、ベルの部分だけ盗まれたこともあった。
何だか物申したいことばかり思い出しているけども
とりあえずは、ここまで乗せてくれたことに感謝の意を。
ゴーイングメリー号との別れほど感動的なものでもないけど、今はあの自転車の勇姿を胸に刻んで、次なる自転車に思いを馳せてみることにする。