採用担当者に「選ばれる」Webデザイナーのポートフォリオの作り方
こんにちは、川端康介です。(https://twitter.com/nanocolorkwbt)
集大成となるベストアルバムを作るつもりですか?
WEBデザイナーの就職や転職で重要なポートフォリオ。いろんな人が、いろんな視点から、色んなことを言うから「一体、どれが答えなの?」と困っている方が多いんじゃないでしょうか。
結論、「答え」はポートフォリオを受け取る相手が持っています。つまり応募した企業の採用担当者です。
人は相対的に比較し判断します。あなたは、競合(他デザイナー)と比較され、自社の採用基準に見合うかどうかを判断されます。つまり、あなたにとっての一番ではなく、相手にとっての一番にならなければ、選ばれることはないのです。
ポートフォリオは、自分の技術や知識や思考プロセスを、相手が価値となるものに変換して、ただしく伝え届け、競合(ライバルデザイナー)ではなく自分が選ばれる(就職や受注)、という目的を果たすツールと考えれば、いわゆるマーケティングという側面が多分に含まれます。それはまさしく自分をデザインする、といっても過言じゃないと思います。
今、まさに転職を考えているデザイナーの方にとって、このnoteが参考になれば幸いです。
相手視点に変換する10ポイント
1.自信のある一押し作品を載せる
→ 相手企業の事業内容に合わせた実績を載せる
自信のあるイチオシ作品を載せたい気持ちもあるでしょうが、採用側としては自社特性と親和性の高い実績を見たいのが本音です。クオリティは高いかもしれないがウチではないな…と思わせてしまう実績ではなく、採用側があなたを採用することがメリットと感じられる実績を中心に掲載しましょう。
そのために応募する企業の制作事例やどの業界に強いのか、何を大切にしているかをリサーチすることが必須です。相手を知ることからまず始めましょう。これに尽きます。
2.掲載数は〇〇個前後
→数ではなく、企業の領域に合わせる。
ある程度掲載数を絞る理由に、採用担当者は忙しいので全部見ないという声を聞きます。が、僕が思うにそれは採用担当者の怠慢です。
採用は、関わる人の人生にも企業の未来にとっても重要なことです。だからこそ全てを確認した上で、全部合う/おおよそ合う/部分的に合う/全部合わないと総合的に判断し優先度をつけ選考します。
企業ブログやSNSなども見ると、どんな事業形態に強い制作会社なのかという現状の情報と、今後どの方向に進んでいこうとしているのかという未来の情報に合わせ、目に留まる可能性がある実績を掲載すべきです。
何度も言いますが、自分の自信作をたくさん掲載するのではなく、相手が望んでいる領域を見定め、それを掲載する場合は数にこだわる必要は全くないということです。
3.トレースは載せない
→未経験者はトレースでもいいから量でカバー
トレースを確認するだけで採用を判断できることは恐らく少ないでしょう。ただし、実務経験のない未経験枠採用に関しては、同じくらいの技術力の中から1人選ぶのなら、やはり数多く作り未来性を感じる方を採用します。
全く制作会社経験がない方に対して、採用担当者は「ウチの会社で活躍してくれる見込み」を判断できる材料を求めています。その一つに熱量に裏付けられた数かと思います。そういう意味では、トレースは載せないというジャッジはなくても良いかと思います。
未経験だからこそ技術力がおぼつかない事もあるかもしれませんが、制作技術は作らなければ上達しません。同じくらいの技術力のライバルの中から1人選ぶのなら、やはり数多く作り未来性を感じる方を採用します。+その熱量があれば採用担当者の方から、もっとこうしてみては?というアドバイスも頂ける可能性がアップし、あなたのデザイナー人生に何の損もありません。
4.作品への想いやこだわりを伝える
→実績に対する思考プロセスと自分の決定領域を伝える
あなたのデザインへの想いやこだわりを思い返せば、苦労したポイントや、お気に入りポイントが思い当たるのではないでしょうか。それは相手にとって、あまり採用判断軸にならない情報です。
ポートフォリオの品質は高いが、実はディレクターによる細かい指定や指示のもと作成していた、ということも珍しくありません。これは、技術力はあるがスキル力が低かったということです。
あなた自身が制作の中で、「①どんな目的に対して」「②どれほどの情報量から」「③何を基準に判断し」「④どんな思考プロセスを辿って」「⑤何を決定したのか」が分かると、相手の理解も深まります。
5.将来への展望や考えを伝える
→今できることを具体的に伝える
「今はまだ未熟ですが、将来はお客様に指名されるほどのデザイナーになり、貴社に貢献したいと思います。」という言葉を聞いても採用判断軸としては現実的に難しい…
未来の話が大切なのは大前提です。が、今の自分ではできないことを、未来の話によって取り繕っても仕方ありません。重要なのは今のあなたができることです。
この図は、普段のビジネスでも使用している概念図です。一度あなたを商品に見立ててみましょう。あなたにとっての機能や効果、便益をどうすれば採用担当者の価値に変わりますか?
あなたの要している技術は「機能」です。
機能によって実現できることは「効果」です。
効果が相手にとって必要だと思えることが「便益」です。
便益を「価値」と思うのは相手です。
6.自分のスキルや技術をアピール
→求められているポジションに適したアピール
採用側がみたいことは大きく分けてこの3点です。
企業によってどのポイントを重視するかは違いますが、この3点を中心に判断基準を設けているかと思います。人柄という項目もあるが、基本の3点が満たせていないと加点される機会は少ないでしょう。
そして、相手企業が求めているのは投資枠/即戦力枠/リーダー枠など、どのポジションを求めているのかということも重要です。その枠に適したアピールが必要です。
経験年数が少ない方は、技術力やスキル力が低いこともあるでしょう。しかし、相手への共感力や論理的な思考や会話、情報収集力やプレゼン力が高いことが評価されれば、採用される可能性は高まります。
経験年数は長く技術力は高いがスキル力やビジネス力が低いと、デザイナーとしては採用できるが、リードデザイナーやリーダー的なポジションには見合わず、採用される可能性は下がります。
7.経歴はシンプルに
→どこで働いていたか、ではなく、なにをしたのか
自分の経歴と聞くと、どこで働いていたかと解釈される方もいるかと思いますが、採用担当者としては、「どこで?」よりも「なにを?」が重要ですので、「どこで?」の情報は少なくても構いません。
一方で「なにを?」はとても重要です。
制作物の品質が高く、依頼主に喜んでいただくのは素晴らしいことですが、それは当然であり、納品までのプロセスで生じた問題に対してあなたが解決できたこと、そして依頼主からどう感謝されたのかを考えてみましょう。
良い記載例だと、技術というよりコミュニケーションスキルやビジネスに向き合っている方だという印象を受け、なにをしたのかが明確です。※ちなみにですが個人的にデザイナーが「シンプル」という言葉を使うのが好きではありません。
8.あなたの人物像を伝える
→あなたの人物像は味付け程度に
一緒に働く上で、あなたがどんな価値観や趣味や好みの情報はコミュニケーションにおいては重要です。が、ポートフォリオにおいては味付け程度で良いかと思います。共通の話題が生まれ会話は弾むかもしれませんが、それと採用とは話が違いますので。むしろ無くてもよいので、その分実績に対して時間を費やしましょう。
9.仕事のモットーや情熱を簡潔に
→抽象的ではなく具体的に
モットーや情熱は、なにを大切にしているのか価値観を伝える上で必要ですが、この領域は非常に抽象的な概念になりすぎて、あなたじゃなくても言えることになってしまいかねません。
こういったモットーや情熱はとても素敵なのですが、この言葉だけでは「マジか!あなたを採用!」とはなりません。この言葉には、信じる理由(RTB:Reason To Believe)が必要です。
想いをカタチにするとは?
ユーザー目線のデザインでビジネスに貢献するとは?
本質的で概念的な言葉を扱う以上、必ず「なぜなら」が必要です。なぜなら?→細かいヒアリング項目、ユーザーリサーチを実施、データ分析を実施する。だから→想いをカタチにでき、ユーザー目線のデザインが制作でき、その結果ビジネスに貢献できます。という文脈により、説得力がうまれます。
無理にあなたを良く見せる必要はありません。今のあなたに見合った言葉があるはずです。
10.自分を表現する作品の集大成
→あなたの採用メリットを測定する装置
最後になりますが、あなたがシングル曲を出せば売れるアーティストでない限りベストアルバム的な集大成が売れる事はありません。
プロダクトアウト型のポートフォリオ
一般的にプロダクトアウトとは作りたいもの/作れるものを基準に開発されることで、マーケットインとは、マーケットの意見やニーズを汲み取って開発することです。ポートフォリオは、このプロダクトアウト型になる傾向が圧倒的に高いです。もしあなたが転職活動でうまくいっていないのであればは、もう少しだけマーケットイン型を取り入れてみるのはいかがでしょうか?
デザイナーはユーザー視点が得意なはず
デザインは依頼主とユーザーをつなぐ架け橋であり、それを具現化する技術を有する専門家がデザイナーです。受け取る側の目線に立って表現する<ユーザー視点>に長けているはずの、本来の特性をポートフォリオに活かせばいいだけです。
最後に
今後デザイン業界がどうなるかは僕には分かりません。
しかし、多くのデザインはビジネスな領域があります。依頼する企業には解決しなければいけない問題があり、その解決方法にデザインを見出したからこそあなたに相談が生まれます。ビジネスである以上、あなたはビジネスをすることは必須です。あなたにお金を払ってくれる会社があるので、デザインを作る環境が生まれます。
一方で、デザインにはアートな領域があります。様々な視点が着想をうみ、社会への問いを投げかけたり、人の認識や価値観を変えたり、前提を疑ったり、壊したり…その為にはあらゆる対象に興味が生まれ、自分と全く違う人間や価値観や体験を想像できることが必須です。あなたのその着想や観点があるから、問題を解決して欲しいという相談が生まれます。
相反するような2つですが、こんな思考が求められ、そして具現化できるデザイナーという職業を僕は素敵な仕事だと感じています。
だからこそビジネスをしましょう。そして世の中をデザインとして見てみましょう。誰かの想いをカタチにするのではなく、相手に、ビジネスに、そして世の中に向き合ってみましょう。皆様のポートフォリオが転職成功に繋がれば嬉しいです。
ただいま弊社では採用強化中です!
個人的にカジュアル面談やご相談も受け付けてます!