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下ネタを言えない

 下ネタが苦手である。

 小学校の時は普通に言っていたのを覚えている。下ネタとも言えない低レベルなワードでゲラゲラ笑っていたし、あまつさえ紙粘土で「うんこまん」を作った記憶さえある。

 中学校に上がり、顔にニキビができ始めた頃から下ネタが言えなくなった。多くの中学校では、その頃から男子が「本当の下ネタ」に目覚め、そんな男子を女子が軽蔑するというのが一般的な構図だと思う。僕はエリートたちが放つ本当の下ネタについていくことができ無かった。要するにドロップアウトしてしまったのだ。中学校に上がったら勉強についていけなくなるのに似ている。結果、坊主頭の野球部員が下ネタを聞いて顔を赤らめているという気持ちの悪い現象が起きていた。

 僕が下ネタを言えない理由は二つある。一つは危険が大きいからである。下ネタは場所さえ間違えなければ受ける可能性が高い反面、滑ると本当に嫌な空気になる。僕にとって下ネタを言うことは「勝負に出る」ことを意味する。でも、そんな鬼気迫る雰囲気で下ネタを言っても受けるはずがない。結果、僕が下ネタを言う機会は失くなっていく。

 もう一つの理由は、エロを神聖視しすぎているからだと思う。僕の中でエロは決して笑うものではないし、人に見せびらかすものでもない。人間同士の愛の具体的な形がエロであり、それは自分の中で人知れず大事に育てていくものなのだ。それは自室の段ボール箱で育てるカブトムシの幼虫であり、『スラムダンク』で宮城リョータが洞窟に置いていた兄の遺品である。多分違う。

 僕が下ネタを言えないのがそう言う理由であり、決してエロ過ぎて逆に下ネタが言えないとか、性に対してコンプレックスがあるとかではない。ただ、エロと真面目に向き合っているだけに口に出すのが恥ずかしいのだ。性欲が強いことよりも何よりも、「エロと真面目に向き合っている」と言う事実が一番恥ずかしいような気もする。

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