ホスピタリティは日ごろの生活から
ホスピタリティはおもいやり、親切心、心からの愛。語源はラテン語のホステル。聖地巡礼の時代にさかのぼる。当時の聖地巡礼の旅は、何日もかけて遠い国まで行く必要があった。そんな、旅人を自分ちの雨風がしのげる納屋など泊まれる場所や食べ物を無償で提供していたのがはじまりではないかとされている。人と人との関りの中で、とても大切なことだ。永年、飲食業の中でフードサービスに携わり、その大切さを感じてきた。フードビジネスはホスピタリティビジネスともいわれる。お客さま、従業員、お取引先、それぞれの関係の中で、人と人がつながる、つくりだす、互いに関係しあっている。まさに、人に与える影響の大きい仕事。お店に来たお客様に対して「いらっしゃいませ」「こんにちは、今日は良い天気で気持ちいいですね。」の明るい笑顔の挨拶、「数あるレストランの中でよくお越しくださいました」という気持ちがあればこそ人の心に届く。私は、常々飲食業は「幸せ製造業」だと考えている。そのためには、従業員同士の関係がとても大事なのである。上司との関係が悪く(だいたい上司が上から目線のわがまま場合が多い)上司の顔色を伺いながら出勤したり、(きちんと教育や説明をされていなく放任でやらされていることが多いが)仕事に不安を抱いていたり、店舗の中でホールとキッチンに壁がありお客様の要望をいうと逆にきれられたり・・・。今ではそんな職場は少ないと思うが、ホスピタリティがお客様に届かない多くは実は働く環境が整っていないことが多いのである。
では、どうしたら改善できるのだろうか?店舗ごとの組織風土を変えていくところがスタートであろう。立派な経営理念があっても、そのことを理解して仕事も目的をもって働く環境づくりも大切。時給やシフトでお金のためにだけ働いているとしたら、社員ならば人生の3分の1は仕事でつやさなければならないのにあまりにももったいない。せっかくならば、仕事を通じて自己人間性を磨きながら、セカンドライフに向かって自分のやりたいことを磨いていけたらどんなにすばらしいだろう。
最近、耳にするハラスメント、メンタルヘルスなどの言葉。従業員同士、互いにリスペクトして気持ちよく働きたいものである。そこには心理的安全性や、互いにおもいやる気持ちを醸成していければよい。互いの感情に気を配るEQを高めていくことや、互いに認める(承認)ことや、個人がアサーティブに気持ちを表現していくこと、個人がレジリエンス(折れない心)を高めていくことがカギになる。
禅の教えの言葉に「平常心是道」という言葉がある。当たり前のことを気持ちをこめてやること。とるに足りない日常の細事を丁寧にこなすこと。その積み重ねが大事であるということ。ホスピタリティも身近な家族との挨拶や何かしてもらったら「ありがとう」という感謝の言葉を返すことから訓練が必要だって今から38年前に教わった。全くその通り。今でのときどきできてないなとと内省を繰り返しながら、ようやく、当たり前のことこそ感謝に値することだと腑に落ちてきた。ちょっと時間がかかりすぎかもしれないが、肝に命じて日々、健康に生きていられることに感謝。天上天下唯我独尊の境地かな。