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狼煙を上げよ
時の砂の間で迷子になる、紅の太陽。その狭間に囚われた、古の言の葉。
「私達は夜ふかしをします」
と、夜行性の誤字が主張するので
「そうね」
と葵は答えた。
重なり合う影が頷いて、ビロッと伸びていく。取り残された感満載の光の子らは、不平不満のオンパレード。嘘がつけないアスファルトは、黒さを一層増していく。
「私達はまだ子供なんです」
と、面の無い地球(ホシ)が主張するので
「そうね」
と葵は答えた。
見下ろすバカンス。カーテンをすり抜ける馴れ馴れしい眼差し。混沌に溺れた煩悩が、この先を仕切っている。砂漠が吐き出した鯖を、くわえて走り出す猫のように、世は飢えている。
「私達は他人(ヒト)を否定します」
と、びしょ濡れの書類が主張するので
「そうね」
と葵は答えた。
真夏でもなければ真冬でもない、この世界の何処かはでこぼこしているくせに、綺麗な水平線が円となりまだ進化を続けているのは、典型的な事例とは認められず、未だ尚研究の対象であることに不安を感じているのは、いささか同情出来る事ではないと言うのは、真っ白な息を吐き出しては飲み込んでいる肺を真っ黒に染めるのと同じだと葵は思った。
以下略。