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葛布の帯の年間生産量について 2

当工房における葛布の年間生産量について以前書いた文章があります。今回、この記事を見直し、多少手直ししようと思ったらほとんどを書き直すことになり全く違う文章になってしまったので、書き直さずに残しておくことにしました。

2020年ですからおよそ4年前です。たった4年で、こんなにも変わるものかと思いました。物事の言語化の感覚や、全体から滲み出るモヤモヤが内に籠っているような雰囲気も今とはずいぶん違いますが、何より大きく違うのは「年間生産量」です。これが違うのですから、そもそも、書き直すのは「ダメ」でした。

したがって、改めて、現在の「年間生産量について」を書き記します。少し複雑になりそうなので項目ごとに説明をします。

葛苧(くずお=葛の繊維)づくりの特徴について

繊維を取るための葛は、一度乾燥させてしまうと繊維を取ることができなくなるので、採って持ち帰ったら、すぐにその後の工程に移らねばなりません。そのため、たくさんの量の葛苧(くずお=葛の繊維)が必要な場合は、「採る発酵させる洗う」という一連の作業を、蔓の採れる期間中、必要な量になるまで繰り返すことになります。特に最後の「洗う」工程は1日にできる量が限られるので、そこから逆算して一度に採る量がだいたい決まります。「蔓が『旬』の時期に一度に大量に採って保管しておく」ができないことは、葛苧づくり・葛布づくりを継続して行おうと思った場合、最大の難関の一つであると思います。

葛苧づくり、札幌の場合

札幌の場合の葛の蔓の「旬」は、大体6月末〜7月末の1ヶ月間です。本州では5月頃〜8月末、もしかすると9月頃まで採れると聞きますので、比べると随分短いですが、札幌は半年雪に埋まりますので、むしろ葛がその環境に適応したことがすごい事なのかもしれません(葛は本来北海道にはなかった植物と思われます)。また、以前の記事にもあるように、前は8月に入ってからも採れていたのですが、ここ数年は8月に入ってから採ることがなくなりました。私の変化かもしれませんが葛やススキの生育環境の変化も影響しているように肌では感じます。
さて、「一回につき葛の蔓を60本ほど採る→発酵させる→洗う」を「旬」の期間中に20回繰り返すことが目標で、これ以上は絶対に無理なのは以前と変わりません。最近では、なるべく体に負担がない方法をと、色々と工夫するようになってきたのと、(言いたくはないですが)年齢的にも一度に60本採るのがキツくなってきましたので、大体50本採れたら良いことにして、回数も20回に満たない年が多くなりました。しかしなぜか取れる繊維の量が増え、全部合わせて1キロ強になります(以前は1キロに満たないくらいでした)。繊維が薄いと重さは軽くなりますので、単純に厚みのある繊維が取れているのかとも思いましたが、見た目にもずいぶんと「カサ」がありますので、実際に量があるのだと思います。以前より長い蔓を取るようになった・・・くらいしか理由が思い当たりません。
さて、まとめると、札幌の場合はおよそ1ヶ月の間に20回弱の採り→洗いを繰り返し(単純計算で1ヶ月に40日間の稼働となるのですが、そこが「工夫」の結果であります)、全部で1キロを少し超えるくらいの量の葛苧が取れる、ということになります。

糸づくりと織り

限られた材料を無駄にしないよう、また、作りたいもののイメージの連続が途切れないよう、効率は悪いですが私の場合は糸づくりと織りを並行して行っています(とはいえ、これも今後改善される可能性があるかもしれません)。染めは季節の仕事なので1年を通してスケジュールを組みます。「葛苧づくり」や「染め」の作業時間を入れずに、純粋に「糸づくりと織り」だけで考えたとして、私の場合で八寸帯地を織り上げるのに現在およそ3ヶ月かかっています。以前は「大体1ヶ月半〜2ヶ月」と書いていますので、延びてしまいました。年数を重ねるごとに延びてしまうことがどうにも解せません。理由をいつも考えます。その理由を書き連ねることは、今回の記事の主旨とはズレますので避けますが、色々と思い当たることはあります。要因の一つには「帯の制作以外の仕事」の幅が少しずつ増えていることもありますので一概に悪いことばかりではありません。他、自分のコントロールの効かない要因も多いですし、それらはどれも尊いことですので、「それ自体」を無理に変えようとは思いませんが、暮らし方や心の持ち方、時間の使い方を変えていくことはできると思います。

さて、年間生産量の話

以上の経緯から、ここ数年の年間生産量は5本です。1本に3ヶ月かかるのですから、そりゃそうなります。以前知人に「それじゃあ趣味レベルだ」と言われて激しく落ち込みました。作りたいもの、アイデアは渋滞を起こしています。以前の記事に書いた「札幌に住む私と札幌に生きる葛との間での取り決めというか、ごく自然なペース」が、乱れています。来年には個展も控えており作りたいものがたくさんあります。どうにか私なりのペースを掴み、葛と自然と、その循環を大切に、コンスタントに生産していくことを続けたいと考えています。


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雪草 葛布帯 | Sessou Kudzufu-obi
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