親子編 63回目 六拾五
「胎児認知」とは、
民法では
父は、胎内に在る子でも、認知することができる。
この場合においては、母の承諾を得なければならない。(民法783条)
父親は、妊娠中でも子供(胎児=赤ちゃん)について認知することができる。
としています。
ただ、その場合は、母親の承諾を必要としているということです。
国際結婚の場合、問題になるのは、この「子供」は、
まだ生まれていないわけです。
出生とは、生きて出る。つまり生きて生まれると書きますから、
母親のおなかの中にいる間は、まだ、「生きて」「生まれる」
という段階ではではありませんから、法律的には、
まだ「子」ではないのです。
あくまで法律上の話です。
となると、前回までの認知の判断基準ですが、
「子の出生当時」
「認知の当時」
「父の本国法」
「母の本国法」
「子の本国法」
そもそも「子」ではないですから、
どれを基準に判断するのか?という問題が出てきます。
「子の出生当時」⇒まだ生まれていない
「認知の当時」⇒胎児認知時?
「父の本国法」⇒まだ生まれていないから父ではない
「母の本国法」⇒おなかの中にはいる。
「子の本国法」⇒生まれていないので、国籍も本国法もない。
どれも一長一短のような気がしますが、
ここで法律の運用時の指針である「通達」では
「子の本国法」は「母の本国法」と読み替えるものとする
(基本通達第4の1⑶)
となっています。
この通達にそって上記の判断基準を考えた場合、
①父の本国法
②子の本国法⇒胎児の本国法⇒読み替え⇒母の本国法=母の本国法
となり、結論としては、「父の本国法」か「母の本国法」を
基準として認知の判断をすることになります。
ただし、この場合セーフガード条項、
保護要件は当然満たしていなければ
なりません。
この場合も、子の本国法を母の本国法と読み替えますので、
母の本国法上の保護要件ということになります。
当然のことですが、子供が生まれた時は、「嫡出でない子」で
なければなりません。
つまり、胎児認知はするけど、結婚はしていない。
ということが大前提です。
「嫡出子」とは、婚姻関係にある夫婦の間に生まれた子
ですから、出生とともに、「嫡出子」としての身分を得ます。
この胎児認知は、「嫡出でない子」を認知するわけですから、
そもそも婚姻夫婦間ですることはないということです。
ですので、胎児認知した子が生まれたら、「認知の効果は出生時に
さかのぼって生じる」ので、生まれた時に父親の子になります。
実際に胎児認知をする場合に、日本法では、
・胎児認知届出書
・胎児の母親の承諾書
・母親国籍証明書
・母親の本国法においての保護要件がわかる書類と、
保護要件を満たしている本国の証明書
が必要になります。