親子編 74回目 七拾六
「責めに帰することができない事由」であるか
否かの判断は、個別事情によって、様々な判断が
ありえます。
全く同じ状況というものが起きるというのは
非常にまれであり、何かしらの違いがある以上は、
以前の判断と同じ判断をする根拠にはならないからです。
では、逆に「責めに帰することができない事由」ではない。
二重否定なのでなんとも紛らわしいですが、
この場合は、帰責事由がある。ともいいます。
単純に解釈をすれば、届出人になにかしらの責任があるとき
ということになります。
つまり、「責めに帰するとされる事由」である場合とは
どのような場合なのでしょうか。
a)法令の不知による場合
改正国籍法第9条の規定を知らなかったため、出生後5か月を経過して
届け出たもの
(昭34・11・21民事甲第2568号回答)
(b)出生証明の入手が遅延した場合
国籍留保の届出に先立ちまず外国の方式により既に成立している
婚姻の届出をし、その後出生届のため、出生証明祖を入手しようと
したところ、出産に立ち会った医師が洋行不在中のため、
出生証明書を得ることができなかったので、約2年遅延したもの
(昭39・6・17民事甲第2096号回答)
(c)在外公館の所在地から遠隔地に居住していた場合
㋐出生届出期間を知らず、また、これを知っていても産後の妻を
置き交通通信の不便な開拓地から14日以内に関係機関まで足を
運ぶことは到底不可能であったとしても6年4か月遅延したもの
(昭41・6・8民事甲第1239号回答)
㋑妻は、日本語が不自由で、産後の日だちが悪く家を離れることが
できず、1年後に領事館に赴いた結果、直接本籍地へ送付するように
指導されたが、添付された出生証明書によれば、出生して7日後に
出生の登録をしており、郵便事情の発達した現在においては、直ちに
領事館又は本籍地に対して郵送による届出ができると思われるもの
(昭58・10・31民二第6212号回答、平9・3・11民二第446号回答)
(西堀英夫、都竹秀雄 渉外戸籍の理論と実務179項)
やはり、不知(知らない、知ろうとしない)
であるというのは、考慮されない傾向が強いでしょう。
日本人であり、国外出産という事情があるにしても、
知りうる方法や手段があり、その状況にあるならば、
自らの権利についてはきちんと学ばなければいけない。
との判断もありますし、事情があって、届出が遅れたという部分では
考慮される可能性はありますが、それが、出生から2年とか5年とか
あまりに長期間届出を出さないとなれば、単純に出すのが面倒、
とか、忘れてたといった部分は「責めに帰することができない事由」
は考えられません。
ですので、
届出は極めて迅速に届出ことが後々の
トラブル防止にも有効であります