婚姻編 11回目 ⑮

日本人であれば出生から死亡までの人生の経歴を

戸籍において国籍や、本籍地、身分関係が

つぶさに記載されています。

また日本人同士であれば、適用される法律も日本法だけ

になります

しかし、陸続きの広大な大陸にすむ人々は、歴史の中

で様々な出来事があって、国が変わったり、政治体制が

変わったり、民族が入れ替わったりと劇的に環境が

変わることがあったりしてきたのは、歴史の教科書を

見れば一目瞭然です。

国家間の移動するにしても、陸続きの大陸国家は

海に囲まれた日本ほどハードルは高くありません。

隣国への移動の自由度が高い分ということはそれだけ

民族の交流が盛んですから、さまざな民族の混血が

進みます。そして、国内でそれらの身分行為で

実際なにか問題が起きた場合に

なにを基準に適用する法律を決めるのでしょうか?

国籍はA国だけど、B国で20年住んでいる場合や、

B国の永住権もっているけど、国籍はA国のままだったり

D国、E国の2重国籍で住んでいるのはF国だったりと、

グローバル社会であるがゆえに、非常に多種多様な問題が

できあがることになります。

それらの問題をある一定の法則にしたがって規律するのが

国際法という分野の法律なのですが、

ある人が、ある国で、ある身分関係が生じた場合に、

その行為の法律的判断をするための根拠とする法律のことを

「準拠法」といいます。

前回までの婚姻でいえば、

「婚姻」は、各当事者につきその本国法による。

(通則法24条)

となっています。

つまり、日本人Aさんなら日本法、外国籍BさんならB国法と

いったように、それぞれの本国法を基準に考えます。

これが非常にシンプルです。

一番わかりやすい形と言えるかもしれませんが、

このやりかたですべてが解決できないため、

先人たちが色々と

悩んで頭をひねって方法を作ってきました。
この各当事者の本国法によるというのは、

「婚姻」という事実の成立を

「どこの国の法律」で判断するかということだけで、

婚姻が実際に成立した後の生活の様々な問題の

問題解決のために使う

法律を決めているわけではありません。

実際に婚姻によって発生する法律上の「義務」と

「権利」はどこの国の法律を基準に

判断するのでしょうか?

婚姻が成立すると、身分的な権利義務と

財産的な権利義務が発生します。

わかりやすく日本の民法においては、

婚姻によって発生する権利義務に関して

・夫婦の氏

・生存配偶者の復氏

・同居・協力・扶養の義務

・成年擬制(民法改正施行後は18歳)

・夫婦間の契約取消権

などがあります。

これはあくまでも「日本」の法律で認められた結婚に

よって発生する権利義務ですので、国際結婚の場合

であれば、配偶者の国(外国籍Bさんの本国法)の

問題も絡んできます。

もし、Bさんの本国法では、夫婦の氏は自由でOKとか

夫婦の同居義務はないとか、日常の生活の中で負った

借金などの債務は配偶者だけの責任になるとか、

日本の法律と違う場合があったときに、どう判断するか?

という問題になります。

夫婦間で判断の根拠とする法律が違う場合には

・夫婦の本国法が同一である時はその法

・ない場合は、「常居所地法」が同一である時はその法

・いずれでもない時は夫婦の最も密接な関係がある地

の法による。

(通則法25条)

となっています。

この25条では、
・夫婦の本国法が同一⇒同じ国籍であれば、その国籍の法律

まあ、当然ですね。

日本人同士の婚姻と同様の考え方です。

次に
「常居所」ということですが、これはちょっと

込み入った話になります。

日本でも「住所地」と「本籍地」といったように

二つの場所を示す言葉があります。

住所地と本籍地が同一の人もいますし、

別々の人もいます。

このように、「住所」ひとつ表す言葉でにおいて

「住所」「常居所」「居所」「所在地」などなど

様々な言葉が日本にもあります。

同じようであり、違うものでもあるので、

これらを正確に把握している人は少ないと思います。

日本語ですらこれだけ言葉の数がありますから、

さらに国も文化も違う場合は、さらに検討する数が

増えていきます

しかも、国ごとに様々な意味あいがあり、それを統一

することは難しいため、いくつかの考えの中から

「とりあえず」この考え方にしようと、決まったのが

常居所という考え方です。