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大シルクロード展
木曜日は仕事で京都に行く。
のであるが、今日は10時〜12時までに一つ授業をしたあと、次の授業は19時半から。脅威の7時間超待ちである。こんな朝から長時間留守にしていると、ムギコちゃんのなけなしのサピエンスが枯渇してしまって帰宅と同時にアンモニア臭を嗅ぐ羽目になりかねないから、どのみち一度は家に戻るのだけれど、それにしても時間が空く。せっかく京都まで来ているのだから、何かつまむ道草はないものかしらんと思案していると、地下鉄の車内広告に目が留まった。
「これが瑪瑙象嵌杯 世界遺産大シルクロード展」
クソデカフォントによるキャッチコピーと、瑪瑙象嵌杯のどアップの写真が印象的だ。コピー自体はクソダサだが、「瑪瑙象嵌杯」という字体の強さに歴史と美術への淡い憧憬の念を駆り立てられる。
うーん、いや、しかし、道草にしてはカロリーが高すぎやしないか?大シルクロード展て、「明日は大シルクロード展に行くんだ!」ていう心の準備なしにぶらりと行くような内容じゃなくね?まあ、京都には週一以上の頻度で来るんだから、何も今日でなくても、来週にでもまたしっかり気持ちを固めてから……
「2024 11.23 sat〜2025 2.2 sun」
来週はもう展示終わっとるやん……今日しか行く機会ないんか……
というわけで、急遽ぶらり途中下車の旅だ。まあ、展示会場である京都文化博物館の最寄り駅は烏丸で、通勤途中の乗換駅だからなんてことはない。
駅を出て東洞院門通りを北上する。それほどインバウンドインバウンドしていないし、映え映えしさもまあ許容範囲だ。古い建物ないしは古い建物風の建物ばかりの街並みに、なぜかイタリアンとカフェの出店が目立つという光景は、俺が学生時代に知った馴染みのある京都の風情である。ひときわ人集りができていたのがブルーボトルコーヒーだったのには少々幻滅したが、京都にある洒落た喫茶店の大半がブルーボトルより質の悪い豆を扱っているのも事実であるから、あるいは京都市民のコーヒーリテラシーの高さを物語る光景であったのかもしれない。
目的地に到着する。学生時代を京都で過ごしたとはいえ、主な生活範囲は烏丸よりももっと上の方であったから、京都市美術館(知らん間に京セラ美術館という名になったらしい)や、国立近代美術館には足を運んだことがあるが、文化博物館を訪れるのは初めてだ。レトロな近代建築の内部に入ると、思いのほか人が多い。チケットを買うまでに10分超は並んだろうか。時折英語や中国語が聞こえるものの、大半は耳慣れた関西弁だ。平日の昼というのに博物館がこの賑わいというのはなかなか嬉しい。俺も含めて何ら造詣のない一般人がめいめい好き勝手言いながら文化遺物を鑑賞している空間というのは良いものだ。知的好奇心というものの多様さと逞しさを感じられる。
中国国外での初展覧となるものもたくさんあるらしく、シルクロードというキャッチーなコピーのわりに、舐めるほど眺め回した世界史の資料集でも全く見たことのないような物ばかりで大変興奮した。見物客はほとんどが還暦を超えていそうな夫婦やマダム連ればかりで、ソロで参戦している壮年男性は異物であったろうが、ソロゆえの機動力を活かして目を引いた展示物とその解説文を堪能できた。
すべての展示物は撮影OKで、SNSでの公開を禁じる旨の文言も見当たらなかったので、特に興味を惹かれたものをいくつか紹介する。そんなことしたらダメだよ、ということであれば消すのでご教授ください。
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一緒に来てたら面白がったろうなあ、と両親の顔が頭に浮かんだので写真集も購入して道草は終了。
気分が高揚していたため、駅までの道で発見したちんまりしたお洒落なパン屋にも寄ってしまった。京都にあるちんまりしたお洒落なパン屋らしい、雰囲気だけの味と香りがしたが、まあそれも含めて京都の風情というものだ。