横山秀夫 『半落ち』 読書感想
こんにちは、ジニーです。
朝夕、ずいぶんと涼しくなってきましたね。
まさに「読書の秋」という感じですね。
今まで以上に読書の時間を作っていきたいですね。
今日、感想を書くのは横山秀夫さんの「半落ち」です。
以前映画化もして、その映画は第28回日本アカデミー賞最優秀作品賞も受賞しているようですね。
「半落ち」というタイトル自体はずっとしていましたが、ちゃんと読むのは初めてでした。
■簡単なあらすじ
現職警察官・梶総一郎、彼はある日自首します。
「妻を殺しました」。
動機についても正直に話す何も問題もないはずだった自首、殺害から自首までの空白の1日間を除いては・・・。
この2日間については頑なに口を閉ざす、梶総一郎。
完全に「落ちて」いない状況のなか、その真実を探るべく様々な人間が火事と対峙する。
物語は6人の人間が登場します。
警部の志木和正。
検察官の佐瀬銛男。
新聞記者の中尾洋平。
弁護士の植村学。
裁判官の藤林圭吾。
刑務官の古賀誠司。
■想いを繋ぐような連作短編小説にもとれる本作
それぞれの視点からの物語を章ごとにまとめた連作短編のような仕立てになっている本作。
章ごとに梶総一郎とのやり取りが収められていくのですが、まるでリレーのように梶への想いを繋いでいきます。
調べていく中で、梶についていろいろなことが分かってきます。
過去に病気で亡くした息子の事。
妻がアルツハイマーに侵されていたこと。
空白の2日に東京に向かっていたらしいということ。
50歳を機に命を絶とうとしていること。
色んな情報が、最後に結集されて、真相に繋がっときの「そういうことだったのか」という腹落ちは、今年読んできた小説の中でも非常に大きなものでした。
■何がここまで読み手を引き寄せるのか
なんといっても梶総一郎という人間の魅力。
罪は犯してしまったものの、心根の優しさや人間性の素晴らしさは、上記の登場人物とのやり取りの中で見えてきます。
その真相を知りたい気持ちは、梶への疑いというよりも、梶という人物をより知りたいと思う気持ちに少しずつシフトしていきます。
小説を読み進めるほどに、梶という人物を知るほどに、ここまで人間の出来た梶総一郎が、語らずに伏せたいこととは何か?
読み手の気持ちをいつも間にか、ここに収束される横山さんの筆力にただただのめり込んでしまうばかりです。
■賞を取り逃したとして、小説の面白さは別の話
なお、本作は「重大な欠陥」がゆえに発表当時の直木賞受賞を逃しているそうです。
専門的なことは分かりませんが、僕からすれば読者に隠された真実の内容が明かされる面白さがあった本書は間違いなく面白い作品でした。
約350ページほどの作品に凝縮された人間ドラマに、読書の面白さを再確認することができました。
今更ながらではありますが、未読の方は、ぜひ手に取ってみてほしい作品です。