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芦沢央「許されようとは思いません」 読書感想
こんにちは、ジニーです。
今回は芦沢央さんの「許されようとは思いません」です。
芦沢央さんの作品は「悪いものが来ませんように」についで2作目です。
■芦沢央さんと言えばの、イヤミス短編集
「許されようとは思いません」は5編からなる短編集です。
どれもこれもなかなかに抉ってくるイヤミス。
収録されているのは。
「目撃者はいなかった」
「ありがとう、ばあば」
「絵の中の男」
「姉のように」
「許されようとは思いません」
それぞれに独特な風合いを持っていて完成度の高い作品だと感じましたが、中でも特に、「目撃者はいなかった」と「許されようとは思いません」がお気に入りですね。
■特にお気にいりの話について読書感想
「目撃者はいなかった」は20代のうだつの上がらない青年が主人公の作品で、受注ミスをしてしまうところから話が始まります。
営業を経験している僕からしてみると、他人事として読めないという点でも怖い話でしたね。
ゼロの数を間違えて発注してしまった主人公はその隠ぺいに奔走します。
その隠ぺい工作のさなかに、とある事件が発生します。
守るのは自分の体裁か、誰かにとっての正義か?
浅はかな考えが行きつくドン詰まりにたとえようのない後味の悪さが残る、まさに王道ともいうべきイヤミス。
1本目の作品ということもあり、非常につかみの強い作品だという印象があり、最後に「おお、そう来るのか」という展開になりしっかりと引き込まれました。
一方で「許されようとは思いません」では、
村八分の憂き目にあった主人公の祖母が物語の中心となり進んでいく作品です。
もともとその村の出身ではなかった祖母。嫁ぐ形で村にやってきてから、いろんな苦労をしながら村の中でも波風立てずに暮らせるようになってきました。
そんななか、なぜ祖母が村八分の憂き目にあうことになったのか、そしてそこにあった祖母の気持ちはどんなものだったのか?
息子夫婦が亡くなった祖母の遺骨を墓に納めにという話なのですが進むにつれて、圧倒的な祖母の意思に触れていきます。
ほかの作品とは違う何処か救いを感じるような終わり方をしますが、人間のうちに秘めたる悪意や意思の強さは、とてつもない恐怖さえも感じさせる内容でした。
最後に少し切り口を変えてきたことと、おしゃれな終わり方をしているのが印象的でした。
■イヤミスという小説の楽しみ方
ハッピーエンドにはならないと思いつつ、最後まで読み進めてしまうのがイヤミスの特徴ではありますが、芦沢央さんの場合は巧みな文章力に引き込まれていくという言葉が本当に合う気がします。
そんな人間いないよと思いながらも、あながち他人事ではないかもなんて思う節が少しは感じられてしまうのもそうだし、そういう闇の部分を見てみたいと思ってしまう、人間の厄介な好奇心を駆り立ててくるのが上手なんでしょうね。
芦沢央さんの作品は、今後もいろいろとお世話になりそうです。