ポール生誕祭@銀座TACT
ステージの上を見るのは当たり前だ。
同時に観客たちをも見る。一緒に歌う人。手を叩く人。涙ぐんでいる人。微笑んでいる人。音楽をいろいろな顔で楽しんでいるのを見ると、こちらまでうれしくなってくる。今夜もそんなライブだった。
6月18日はポール・マッカートニーの誕生日だ。82歳になった。
「Paul McCartney Birthday Special Concert」が2024年6月18日(火)、老舗ライブハウス銀座TACT(中央区銀座6-9-15)で開かれた。主役はナガヌマッカートニーこと永沼忠明さんだ。
午後7時になると暗くなった会場に音楽が流れ始めた。
バンドメンバーがスタンバイして始まったのはビートルズの「Magical Mystery Tour」(68)だった。続けてビートルズの「Got to get you into my life」(66)。これは、1980年ウィングス幻の日本公演でオープニング・ナンバーとなるはずだった。
さらにウィングスの「Junior's Farm」(74)。
永沼さんはベースを弾きまくり、歌いまくる。
ここで永沼さんのMCだ。「ポール・マッカートニー生誕82年に関して、この企画が持ち上がったのが今年初めだったのですが、その時にその日は雨だよって言ってたんですけど、ひどい雨でしたね」。
そして歌に戻り、ウィングスの名盤『Band on the run』から「No words」(73)。(私はこの歌を聞くといつもジョージ・ハリスンを思い出す、なぜだかわからないけれども・・・)
「Magnet and Titanium Man」(75)「Let me roll it」(73)が続いた。前者は『Venus and Mars』収録曲。後者は『Band on the run』から。
サックス奏者が紹介され、その演奏からスタートした。「The long and winding road」。しかも、これは80年代半ばの映画「Give my regards to Broadstreet」のオシャレなバージョンだ。
ここでビートルズ最後に発売されたアルバム『Let it be』からジョンとポール二人のかけあいボーカルがうれしかった「I've got a feeling」。続けてウィングスの「Live and let die(007 死ぬのは奴らだ)」(73)。
簡単な話が終わるとウィングスの「Listen to what the man said(あの娘におせっかい)」(75)。アルバム同様に続けて「Treat her gently~Lonely old people」(75)。これで第1部は幕を下ろした。
第2部が始まるや会場にバグパイプの音色が流れた。そして客席にバグパイパーが4人現れて、驚きが広がった。ステージにメンバーがそろい始まったのはもちろんウィングス最大のヒット曲「Mull of Kintyre(夢の旅人)」(77)。永沼さんは黒いアコースティックギターを弾いている。
「東京パイプバンドの皆さんです。キャバーンクラブで一緒にやったことがあり、ヒットスタジオでも共演したことがあります。もう何年になるかな」と永沼さんは感慨深げに話した。
永沼さんはアコギをウクレレに持ち替えると「久しぶりです」と言ってポールがコンサートでジョージ追悼で歌う「Something」が始まった。最初は基本アコギ一本で、途中からバンドで盛り上がっていった。
終わるや会場から「もう我慢できない」との声があがる。
笑いが起こる。ステージの永沼さんからも。
そりゃそうだ。だって私たちの学生時代つまり青春時代のBGMとして身に沁みついているウィングスの曲の数々を再現してくれているのだ。もう我慢ができなくなってしまうのは当然だ。
さて、次はサキソフォンがフューチャーされた「Bluebird」(73)だった。これまた『Band on the run』からの選曲だ。
アコギをエレキに持ち替えながら「僕の持ってる楽器を見せびらかそうと思ってるんだ」と冗談を飛ばす永沼さん。
「夏が近いので」と言って演奏したのはポールの初ソロアルバム『McCartney』からのインストゥルメンタル「Hot as sun」(70)。
永沼さんはベースを手にして始まったのは「Silly love songs(心のラブソング)」(76)だ。ベースがぶんぶん鳴って全体を引っ張ってゆく。これは76年の米ビルボード誌で年間ヒットチャートで堂々の首位を記録。
ここで永沼さんがバンドメンバーを紹介したーーサックス:田口悟史さん、キーボード:土屋剛さん、キーボード:黒岩典英さん、ギター:久保肇、ギター:小松陽介さん、ドラム:松崎晃之さん。
『Venus and Mars』から渋いナンバー「Letting go(ワイン・カラーの少女)」(75)。続けて82年の『Tug of war』収録曲「Ballroom Dancing」(82)、『Band on the run』を締めくくるピアノ演奏が印象的な楽曲「1985」(73)。そしてそのアルバムのタイトル曲「Band on the run」(73)と続けて第2部の本編が終わった。
アンコールはウィングス初期のロックナンバー「Hi Hi Hi」(72)。
多くの客が立ち上がり、踊り、かつ歌った。
はじけている女性たちを見るのは楽しい。
最後の最後は75-76年の北米ツアーでもラストナンバーだった「Soily」(76)だった。ハードな演奏にしびれた。
「本人もそうですけど、いつまで続くかわかりませんが、生きてる限りやります」と永沼さんが宣言してポール・バースディライブは終了した。