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マティスの切り紙絵

 20世紀最大の巨匠の一人であるアンリ・マティス。
 後半生、マティスは色が塗られた紙をハサミで切り取り、それを紙に張り付ける技法「切り紙絵」に取り組んだ。その切り紙絵に焦点を当てた「マティス 自由なフォルム」展が2024年2月14日(水)から5月27日(月)まで東京・六本木の国立新美術館で開催される。
 マティスの切り紙絵にフォーカスした展覧会は日本初となる。
 フランスのニース市マティス美術館に寄託されている(オルセー美術館蔵)切り紙絵の代表的作例である《ブルー・ヌードIV》が出品される。
 また、4X8メートルの大作《花と果実》が同展のためにフランスでの修復を経て日本初公開される。これは、アメリカのブロディ夫妻からロサンゼルスの別荘の中庭に設置する巨大な装飾を注文されたマティスが、その準備習作の一つとして制作したもの。

アンリ・マティス《花と果実》1952-1953年 切り紙絵 410×870cm ニース市マティス美術館蔵 ©Succession H. Matisse Photo: François Fernandez


 さらに、マティスが最晩年に建設に取り組んだ、芸術家人生の集大成ともいえるヴァンスのロザリオ礼拝堂にも着目し、建築から室内装飾、祭服に至るまで、マティスの至高の芸術を紹介する。
 展示室内にロザリオ礼拝堂を体感できる空間を再現する。

制作中のマティス 1952 年頃 ©photo Archives Matisse / D. R. Photo: Lydia Delectorskaya


 ニース市長のクリスチャン・エストロジ氏は語った。「マティスの作品は世界中の美術館で紹介されていますが、私たちのコレクションから東京で紹介される作品群は、ニース市マティス美術館の神髄を反映しています。それはアンリ・マティスとその遺族たちが望んだように、画家、彫刻家、素描家、さらに版画家としての不屈の活動を理解させてくれるのです」。
 本展監修者でニース・マティス美術館前館長のクロディーヌ・グラモン氏は「(切り紙絵は、)キャリアの終盤となる1947年から1954年の間に、アンリ・マティスのお気に入りの表現方法となりました」とコメントを寄せた。
 さらにグラモン氏は「色彩を直接切り取ることは、彫刻家の直掘りを思い起こさせますが、それは色彩の中でデッサンするようなことでもあります。切り紙絵は、マティスの芸術を装飾の様々な可能性に向かって解放し、根底から刷新しました。それはヴァンス礼拝堂の構想を通じて、巨大な壁画装飾という彼の夢を実現させたのです」と述べた。

〇「色彩の道」ーギュスターヴ・モローに学んだ後、マティスは南フランスのトゥールーズやコルシカ島に滞在し、光の表現を探求するスタイルに初めて取り組んだ。まばゆい光の輝きを放つこの地の気候との出会いが、解放された色彩を備える一連の絵画が生まれる契機となった。

アンリ・マティス《マティス夫人の肖像》1905年 油彩/カンヴァス 46×38cm ニース市マティス美術館蔵 ©Succession H. Matisse Photo: François Fernandez


〇「アトリエ」ーアトリエはマティスにとって創造の現場であると同時に、絵画の中心的な主題の一つでもあった。また、彼は1938年に引っ越したニースの高台にあるオテル・レジナのアトリエに、花瓶、テキスタイル、家具調度など、多様な文化的起源をもつ膨大なオブジェを飾り、絵画の中でも頻繁に描いた。このセクションではアトリエで描かれた作品、あるいはアトリエを主題とした作品を中心に紹介する。

 アンリ・マティス《赤い小箱のあるオダリスク》1927年 油彩/カンヴァス 50×65cm ニース市マティス美術館蔵 ©Succession H. Matisse Photo: François Fernandez
 アンリ・マティス《ロカイユ様式の肘掛け椅子》1946年 油彩/カンヴァス 92×73cm ニース市マティス美術館蔵 ©Succession H. Matisse Photo: François Fernandez
アンリ・マティス《横たわる裸婦Ⅱ》1927年(鋳造1953年) ブロンズ 29×51.5×16.5cm オルセー美術館蔵(ニース市マティス美術館寄託) ©Succession H. Matisse Photo: François Fernandez


〇「舞台装置から大型装飾へ」ー衣装デザイン、壁画、テキスタイルの領域におけるマティスの仕事を紹介する。マティスは1920年にパリのオペラ座で公開された舞台「ナイチンゲールの歌」の舞台装置と衣装デザインを手がけた。1930年にアメリカのバーンズ財団の装飾壁画の注文を受けたマティスは、15メートルを超える壁画にダンスを主題としてダイナミックに動く人物を描き、この仕事を契機に大型装飾に職業的使命を認めた。

 アンリ・マティス《ダンス、灰色と青色と薔薇色のための習作》1935-1936年 エッチング/紙 29.7×80.3cm ニース市マティス美術館蔵 ©Succession H. Matisse Photo: François Fernandez
 アンリ・マティス《ブルー・ヌード IV》1952年 切り紙絵 103×74cm オルセー美術館蔵(ニース市マティス美術館寄託) ©Succession H. Matisse Photo: François Fernandez
アンリ・マティス《クレオールの踊り子》1950年 切り紙絵 205×120cm ニース市マティス美術館蔵 ©Succession H. Matisse Photo: François Fernandez


〇「自由なフォルム」ー切り紙絵の技法を用いた作品を中心に紹介。マティスは切り紙絵を基にしたステンシルによる図版とテキストで構成される書物『ジャズ』(1947年刊行)を手がけた。1948年から始まるヴァンス礼拝堂の建設計画とともに、切り紙絵はますます自律的な表現方法としての地位を確立していく。
〇「ヴァンスのロザリオ礼拝堂」ー1948年から1951年にかけて、マティスはヴァンスにあるドミニコ会の修道女のためのロザリオ礼拝堂の建設に専心する。マティスはこの礼拝堂の室内装飾から典礼用の調度品、そして典礼のさまざまな時期に対応する祭服にいたるまで、デザインのほとんどを指揮し、総合芸術作品として練り上げた。ステンドグラスの窓から透過する光は、3つの図像が黒で描かれた白い陶板の壁面や床面に、豊かな色彩が反映するように設計されている。

 ヴァンスのロザリオ礼拝堂(内観) ©Succession H. Matisse Photo: François Fernandez
 アンリ・マティス《ステンドグラス、「生命の木」のための習作》1950年 ステンドグラス 62.3×91.5×2cm ニース市マティス美術館蔵 ©Succession H. Matisse Photo: François Fernandez
アンリ・マティス《白色のカズラ(上祭服)のためのマケット(正面)》1950-1952年 切り紙絵 126.5×196.5cm ニース市マティス美術館蔵 ©Succession H. Matisse Photo: François Fernandez

 国立新美術館(東京都港区六本木7-22-2)の休館日は毎週火曜日。ただし、4月30日は開館。開館時間は午前10時から午後6時(毎週金・土曜日は午後8時まで、入場は閉館の30分前まで)。
 問い合わせは050-5541-8600(ハローダイヤル)まで。


 

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