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外苑再開発:数でなく質が大切

 東京・明治神宮外苑の再開発をめぐり事業者が伐採する木を減らすなどとした計画の見直し案を発表したが、樹木など環境の保全に取り組んでいるジャパン・インテレクチュアル・コンサルティングの社長、ロッシェル・カップ氏は、問われているのは本数ではなく「樹木保全の質」だと述べた。
 「ことに歴史的樹木は植えられた場所にそのまま残し、生態系、景観ごと大切に保存されるべきです。高層ビルや大規模施設の建設の犠牲にしてはならない、と改めて思います」。
 さらに、カップ氏は「今回削減するという124本の内訳は、伐採から保存66本と移殖16本に振り替えるという計82本。驚くことに、残りの42本は「既に枯れている」という理由によるもので、何ら保全の工夫をした結果ではありません」と指摘した。
 再開発事業者代表の三井不動産は2024年9月9日、秩父宮ラグビー場や絵画館前広場の施設計画を一部縮小変更することで、伐採する予定だった樹木数を743本から619本に減らすという見直し案を公表した。
 また野球場については、西側イチョウ並木からこれまでより約10メートル広げてセットバックする方針が発表された。
 港区と新宿区にまたがる神宮外苑の再開発対象エリアでは、神宮球場や秩父宮ラグビー場を場所を建て替え、伊藤忠東京本社ビルの建て替えなど、高層ビル3種を新たに建設する予定。
 名所のイチョウ並木は伐採の対象外だが、現在の秩父宮ラグビー場へのアプローチにある18本のイチョウは移殖の対象となる。


 「予想されたことですが、1年かけて樹木の活力度調査、イチョウの根系調査を行い検討した結果、変更されたのは軽微な変更による調整に過ぎず、高層ビルと大規模施設の建て替えありきの計画、そのために貴重な樹木や環境が犠牲になるという再開発の構図は何も変わっていません」とカップ氏。
 「私たちは伐採から移殖に振り替えることが樹木の保全になるとは考えていません。少なくとも移殖で保全するというのなら、具体的で実現可能な移殖計画を示すべきです。現状示されている移殖計画についてかなりの疑問を持ちます」
 「増え続ける移殖木の数に対して、移植先として予定されている場所ー絵画館前広場、御観兵榎周辺や絵画館周辺ーでは到底足りず、すでに移殖計画は破綻していると思われます」。
 「国立競技場の移殖木の衰退の実態を見ても、移植が保全になるという確実性は担保されていないのです。いずれにしろ、単に伐採本数を減らせばいいというわけではありません」。
 2022年8月、樹木伐採の批判を受けて、伐採木のうち「今後立ち枯れが予測される311本」を保存と移殖に振り替えるなどして「伐採木4割減」という数字合わせをしたが、その時はメディア各社からあたかも多くの樹木が救済されたかのような報道が出たという。
 「今回も同じように世論誘導の効果を狙っているように思います」とカップ氏は警戒する。
 今後、事業者側は樹木保全策を東京都の環境影響評価審議会に提出し、伐採することが出来ずに一部残された解体工事を完了させる構えだ。
 
 

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