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硲伊之助回顧展

 若い頃から頭角を現し、絵画指導も行い、晩年は色絵磁器の制作に取り組み、かつクールベやゴッホの画集の編集や「ゴッホの手紙」の翻訳に携わった硲(はざま)伊之助の東京初の回顧展が来年、開かれる。
 「硲伊之助展」が2025年3月1日(土)から6月1日(日)までアーティゾン美術館(東京都中央区京橋1-7-2)にて開催され、硲の油彩画、版画、磁器など約60点の作品と資料、硲と関わりのある同館の西洋絵画コレクションおよそ15点が展示される。

 硲伊之助《女の背》1917年、油彩・カンヴァス、個人蔵(加賀市美術館寄託)
 硲伊之助《栗》1940年、油彩・カンヴァス、硲伊之助美術館(加賀市美術館寄託)
硲伊之助《室内》1928年、油彩・カンヴァス、硲伊之助美術館


 硲(1895-1977)は、フュウザン会や二科展で若い頃から注目された画家だった。一時は文化学院や東京藝術大学で後進の絵画指導にあたった。西洋美術の紹介にも尽力し、師マティスの日本での初めての展覧会(1951)の実現に向けて作家との交渉にも携わった。
 裕福な出自を持つ硲は自身の研究のため収集した作品の一部ーーマティス《コリウール》(1905)やルソー《イヴリー河岸》(1907頃)は、現在、石橋財団に収蔵されている。
 硲はフランスで版画家・漆原木虫に教わった経験がある木版の名手でもあった。「サンショウウオ」などで知られる小説家・井伏鱒二との交流も深く、書籍の装丁や新聞連載小説の挿絵なども手がけている。

硲伊之助《「新聞連載小説 丹羽文雄『恋文』(1)山の湯一」挿画》1953年、インク、墨・紙、硲伊之助美術館


 さらに硲は九谷焼の制作方法について学んだ。1961年には加賀市吸坂で窯の建設を始め、300年以上の歳月を経た藁ぶき屋根の古民家を工房兼住居とした。そこで弟子たちと共同生活を送りながら、吸坂釉の復興などにも取り組んだ。加賀へ移って以降の陶芸作品を紹介する。

 硲伊之助《吸坂窯 象嵌あやめ大鉢》1971年、磁器、硲伊之助美術館(石川県九谷焼美術館寄託)
硲伊之助《九谷呉須上絵夏樹立大皿》1973年、磁器、硲伊之助美術館


 これまで硲の画業が広く紹介された機会はそう多くなく、両親の郷里である和歌山と、晩年を過ごした加賀での展覧会ぐらいだ。今展は硲の出身地である東京で開催される初めての回顧展となる。
 
 開館時間は午前10時から午後6時(毎週金曜日は午後8時まで)。入館は閉館の30分前まで。休館日は月曜日(5月5日は開館)、5月7日。
 日時指定予約制(2025年2月12日(水)よりウェブ予約開始)。ウェブ予約チケット1800円、窓口販売チケット2000円、学生無料(ただし高校生以上のウェブ予約は必要)。
 アーティゾン美術館の公式サイトは https://www.artizon.museum/
 
 (冒頭の写真:硲伊之助《燈火》1941年、油彩・カンヴァス、硲伊之助美術館ー加賀市美術館寄託)


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