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「民藝展」を観た!

 民藝とは何かーそのひろがりと今、そしてこれからを展望する「民藝MINGEIー美は暮らしのなかにある」が2024年6月30日(日)まで世田谷美術館(世田谷区砧公園1-2)で開かれている。
 同年5月1日(水)に訪れた。
 日本民藝館の深澤直人館長は図録で書いた「美を生み出す力の原点であり、美しい暮らしの源泉たる「民藝」。この独自の「モノの美学」は約100年前に思想家の柳宗悦(やなぎむねよし)が説いたものですが、現代に至るまで人々魅了し続けており、普遍的な力の鮮度を保ち続けています」。
 「それは、われわれの日常や生活そのものに深く根差しているからであり、人々が心の奥底で大切に思っている、平和で何気ない日常の生活に寄り添っているからに他なりません」。
 

 本展は民藝について「衣・食・住」をテーマにひも解いて、暮らしで用いられてきた美しい民藝の品々約150件を展示している。
 また、いまに続く民藝の産地を訪ね、そこで働く作り手と、受け継がれている手仕事も紹介している。
 さらには、2022年夏までセレクトショップBEAMSのディレクターとして活躍し、現在の民藝ブームに大きな役割を果たしてきたテリー・エリス/北村恵子(MOGI Folk Art ディレクター)による、現代のライフスタイルと民藝を融合したインスタレーション(場所や空間全体を作品として体験させる手法)も見どころのひとつ。
 開場時間は午前10時から午後6時(入場は午後5時半まで)。休館日は月曜日(ただし、5月6日(月・祝)は開館、5月7日(火)は休館)。
 料金は一般1700円、65歳以上1400円、大高生600円、中小生500円。公式ホームページは https://mingei-kurashi.exhibit.jp/ 案内は050-5541-8600(ハローダイヤル)まで。

〇第1章「1941生活展-柳宗悦によるライフスタイル提案」ー1941(昭和16)年、柳宗悦は自身が設立した日本民藝館(東京・目黒)で「生活展」を展開。民藝の品々で室内を装飾し、いまでいうテーブルコーディネートを展示し、暮らしのなかで民藝を活かす手法を提示した。当時としては珍しいモデルルームのような展示で画期的だった。実際に出品された作品を中心に「生活展」の再現を試みて、柳が説いた暮らしの美を紹介する。民衆が日々用いる工芸「民藝」は私たちの生活のなかにあり、それを活かすことによって、暮らしはより美しく豊かになるのではないだろうか。

 
 
 

〇第2章「暮らしのなかの民藝ー美しいデザイン」ー柳は陶磁、染織、木工などあらゆる工芸品のほか、絵画や家具調度など多岐にわたる品々を、日本のみならず朝鮮半島の各所、中国や欧米などへ旅し、収集を重ねた。時代も古くは縄文時代から、柳らが民藝運動を活発化させた昭和に至るまでと幅広い。とりわけ同時代の、国内各地で作られた手仕事の日常品に着目し、それらを積極的に紹介した。この章では、民藝の品々を「衣・食・住」に分類し、それぞれに民藝美を見出した柳の視点をひも解く。

II-1ー「衣」を装うーかつての日本の日常着であった着物は、四季折々の気候に合わせ、各地域で独自に発展し、さまざまなものが作られてきた。それぞれの地域の素材を用いて、暑さ、寒さに適応できるように快適に、機能的に、そして見た目の美しさにも配慮して作られている。また着物のみならず、それに合わせた持ち物にも見どころが多く、文様や配色が織りなす美には目を見張るものがある。

波に鶴文夜着 江戸~明治時代 19世紀 静岡市立芹沢銈介美術館蔵
 竹行李 陸中島越 1930年代/刺子足袋 羽前庄内 1940年頃 すべて日本民藝館蔵 Photo: Yuki Ogawa
蓑 岩代檜岐 1930年代 日本民藝館蔵

II-2ー「食」を彩るー日々の食事で用いる器は、柳が説いた民藝美を最もよく表した品々といえる。日本のみならず、朝鮮半島やヨーロッパなど各地で作られた器は、地域の特性から生まれた素材を使い、形や文様に工夫を凝らしたさまざまなものが存在する。さらに、調理用の道具や台所用品にも、手間暇をかけた美しいものが多い。こうした品々は日々用いられることで、より輝きを増したことだろう。

(手前)塗分盆 江戸時代 18世紀 (盆上左から)染付羊歯文湯呑、染付蝙蝠文猪口 備前有田  
江戸時代 18-19世紀 すべて日本民藝館蔵 Photo: Yuki Ogawa
網袋(鶏卵入れ)朝鮮半島 20世紀初頭 日本民族館蔵 

IIIー3-「住」を飾るー日々の暮らしに必要不可欠な生活用品、家具などの調度品も、それぞれの地域の職人が土地の素材を用いて作り続けていた。それらは用途に適して長く使えるよう丈夫に、用いる人々に配慮して使いやすいように、そしてさりげない装いを添えて作られている。手作りの美しさ、柳が説く「用の美」を極めた品々は、大量生産品であふれる現代社会には見られない、素朴な美に満ちている。

IIーTopic「気候風土が育んだ暮らし―沖縄」ー柳が沖縄を初めて訪ねたのは、1938年暮れのことである。目に映るものすべてに感動を覚え、柳は早くもその2か月後には民藝の同人らを従えて、再び沖縄へ向かい、本格的な調査研究、収集を行った。本土から遠く離れた沖縄は、古い歴史を持ち、独自の文化、風習を育んできた。紅型、芭蕉布、壷屋のやきもの、漆工芸など、南国ならではの暮らしが生んだ見事な品々は枚挙に暇がない。

〇第3章「ひろがる民藝ーこれまでとこれから」ー柳の没後も民藝運動は広がりを見せた。濱田庄司、芹沢銈介、外村吉之介が1972(昭和47)年に刊行した書籍『世界の民芸』では、欧州各国、南米、アフリカなど世界各国の品々を紹介。各地の気候風土、生活に育まれたプリミティブなデザインは民藝の新たな扉を開いた。一方、民藝運動により注目を集めた日本各地の工芸の産地でも、伝統を受け継いだ新たな製品、職人たちが誕生していった。国内5つの産地ーー「小鹿田焼」「丹波布」「鳥越竹細工」「八尾和紙」「倉敷ガラス」--から、これまでと現在作られている民藝の品々や、そこで働く人々の”いま”を紹介する。

人形 ワニン県ワンカヨ(ペルー)20世紀後半 静岡市立芹沢銈介美術館蔵


 本章の最後では、現在の民藝ブームの先駆者ともいえるテリー・エリス/北村恵子(MOGI Folk Artディレクター)の愛蔵品や、世界各地で見つけたフォークアートが”いま”の暮らしの融合した「これからの民藝スタイル」をインスタレーション展示で提案する。

テリー・エリス氏と北村恵子氏

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