柏崎刈羽、東海第2原発を問う
このところ東京電力の柏崎刈羽原発(新潟)周辺がにわかに騒がしくなってきた。先日、同原発の7号機で設備の「健全性確認」が完了し、現地の同意が必要とされるものの技術的には再稼働へ一歩前進した。
一方、半径30キロ圏内に70万人もの人が住む東海第2原発(茨城県)も再稼働を目指している。だが、この原発でひとたび大きな事故が起きた場合、東京など首都圏に大きな被害が及ぶとされている。
そんな中、市民団体「たんぽぽ舎」の山崎久隆共同代表が2024年6月15日(土)に同所(東京都千代田区神田三崎町3-1-1高橋セーフビル1F)で「能登半島地震から考える 東海第2原発と柏崎刈羽原発」と題して講演を行った。
解除された運転禁止命令
東電は柏崎刈羽原発7号機に核燃料を入れる作業を終えて、4月26日から健全性確認を行っていた。7号機は2011年8月に定期検査のために運転を停止。2021年に原子力規制委員会からテロ対策の不備を指摘されて運転禁止命令を受けた。その命令が昨年末に解除されたところだ。
「燃料を入れたので、あとは蓋をしてボルトを締めて制御棒を抜けば起動出来るという段階です。技術的には準備が整った」と山崎さん。
あと地元合意が必要だといわれていますが「法的な根拠はありません。同意していなくても運転は出来てしまう。でも現実的には東電がそうしてしまうと軋轢が生じて地元の協力が得られなくなってしまう」。
「地元自治体と事業者(東電)が結んでいる紳士協定があります。法律ではないものの、もし破れば政治的に大きなインパクトがあります」。
「強行するのはなかなか難しいと思います」。
山崎さんは同原発に関して、それ以前の問題をいくつか指摘した。
まず津波の想定だ。
東電は柏崎刈羽原発に海抜約15メートルの防潮堤を建設した。
「今まで3.3メートルの津波しか想定していなかったが6.8メートルにした。だから、(15メートルの高さの防潮堤なら)いいでしょうということですかね」と山崎さんは話す。
「1-4号機は稼働していませんが、5-7号機の”防潮堤”は土手の上に盛り土をしているだけで、それを”防潮堤”と呼んでいます」。
さらに指摘しているのは「東電はいわゆる津波ハザード曲線で予測している一番高い津波は、一番高い数値によってでなく平均値で予測値を出している。つまり使っている数字が非常に恣意的なのです」。
次に活断層の問題だ。国も東電も「東縁断層」が柏崎刈羽原発の下を走っていないとして、否定している。しかし、山崎さんは「海底の下など構造は分かっておらず、すべての海底活断層を捉えられるわけがない」と話す。
「陸上からだけ活断層の存否を論ずるのは科学的とはいえません。(2007年の)中越沖地震でさえ原因活断層を見つけられていないのです。(安易に)断層を否定する材料に使ってはいけません」。
「柏崎刈羽原発は建設する段階から真下の活断層がずっとテーマなのです。今と昔も真下に活断層があると言われており議論がある」と山崎さんは話して東電などに慎重な対応を求めた。
防潮堤の要の部分に問題
茨城県の東海第2原発に関しては防潮堤の欠陥が分かっている。防潮堤には2本の柱があって、「南側はコンクリートがむき出しになっており、もう工事のやり直しはきかない。北側の柱は硬い岩盤にきちんと入っておらず、その上は粘土層なのです」と山崎さんはいう。
「防潮堤の一番要(かなめ)の部分がこういう状態なんです」。
「また、原発は海の近くなので地震で液状化現象が起きたら(防潮堤を)支えきれないだろう」と山崎さんはみている。
まずは「この欠陥工事の問題が解決しない限り、再稼働出来ない」。
さらには建屋の耐震性能が疑問視されているという。
「真下には活断層がないといいますが、分厚い堆積層があって、その下が調べられずに分からない。敷地内でマグニチュード6.5の地震があっても絶えられる耐震性が法的に求められいますが、建屋強度が問題です」。
山崎さんは「コンクリート製の原子炉建屋が耐えられるのか?格納容器が保つのだろうのか?容器の外側は厚さ3.8センチの鋼鉄の板です。上部はスタビライザというものでゆるゆると留められている。それは地震のような衝撃がガツンときた時に格納容器の位置がずれないようにするためです」。
そのうえ、「もともと燃料棒がたくさん入っているところに(核反応を止めるために)制御棒を入れないといけないが、ゆらゆら揺れている燃料棒のところに制御棒を入れようとすればぶつかってしまいます」と話した。
「それを防ぐためのスタビライザという設備なのです」。
「当初は270ガル(基準地震動)の揺れしか想定していなかったが、それが新たに1009ガルに引き上げられました」。
「270ガルの時には余裕をもって審査を通りましたが、1009ガルとなるとものすごい力がかかることになる。上部と格納容器との接合部は、二回大きな揺れが来たらもうダメでしょう」。
「原子炉格納容器の片側はコンクリート側で動かないが大きな地震によって”最後の砦”がひきはがされます。事業者からはこういうことについて一切説明がありません」と山崎さんはいう。
問題含みの使用済み核燃料輸送
続けて山崎さんは使用済み核燃料輸送の問題を取り上げた。
青森県むつ市にリサイクル燃料備蓄センターが建設される。柏崎刈羽原発から使用済み核燃料が運ばれる。2026年度までに計8基、燃料集合体552体、ウラン重量にして約96トンが輸送されるとみられる。
むつ市のセンターには最長50年にわたり貯蔵されるという。
背景には既存の保管場所の使用済み核燃料が満杯になりつつあることがある。例えば、関西電力美浜原発3号機(福井県)はあと9年経つと満杯となり、関電大飯原発3,4号機(福井県)ではおよそ8年、関電高浜原発1~4号機(福井県)では約5年とタイムリミットが迫っている。
福井県は使用済み核燃料は県外へ持っていくよう関電に求めている。ちなみに、むつ市の中間貯蔵施設の貯蔵容量は3000トンとなる予定だ。
貯蔵プール容量に占める使用済み核燃料の割合(2023年3月末時点)でみると、大飯原発が87%、高浜原発80%、柏崎刈羽原発81%などとなっている。
高浜原発と九州電力川内原発(鹿児島県)に関しては外部に持ち出さずに敷地内で貯蔵しようとしている。
山崎さんは輸送するための容器について説明した。水深200メールで1時間、推進15メートルで8時間耐えられるとされているが、もし船が沈んだ場合引き揚げるのにかかる時間の認識がないという。つまり、1時間で船を引き上げることが可能なのかどうかーー。
「沈んでも密閉されていれば大丈夫だという人がいます。しかし、容器に外から圧がかかっても大丈夫なのか。蓋はボルト締めで衝撃に弱い。水深200メートルだと20気圧。すぐに海水が入ってきます」。
「容器は膨張して高濃度の汚染水が出てきます。海洋汚染となります。塩水で容器もやがて腐食していきます。するとセシウム、プルトニウムなどが出てくるリスクがあるんです。こうしたことは原子力潜水艦が沈んだことから例があるのです」。
「船を引き上げるのは大ごとです。しかし、沈んだ船から容器だけを引き上げることも不可能なのです」。
東電は昨年末、核燃料中間貯蔵を禁止されていたのが解除された。しかし、冬は海が荒れるので輸送には向かない。3月末になって東電がリサイクル燃料貯蔵会社へと輸送をすると発表し、海の天候が輸送に向くとみられる7~9月に実際の輸送な行われるとみられる。
小さい関根浜港に運び込まれるが、そこにあって使われるクレーンが不安定なもので心配だという。山崎さんはいう。「だが、青森県は核燃料税が入るので、早く操業してもらいたいらしいです」。