9・18原子力規制委会見
東京電力福島第一原発2号炉からの燃料デブリの試験的取り出しがカメラの不具合によって再び中断に追い込まれた件について、原子力規制委員会の山中伸介委員長は2024年9月18日(水)の定例会見で作業への懸念を重くは見ていない考え方を示した。
今回の中断については、「特に安全上の問題があるとは考えていない」との考えを山中委員長は繰り返した。
「特に何か安全上の問題がある不具合等だとは思っていない」
「デブリの試験的取り出しについては国民の関心が高いのは理解出来る。出来れば規制委員会としてはスムーズにサンプリングして技術開発につなげていってほしいと思っています」
「ただ、今回いくつかトラブルが起こっていて、技術的トラブルや人的ミスだったりしますが、その点は東京電力にきちんと改善してもらって作業を進めてほしいと思っています」。
ケーブルの不具合か?
今回のトラブルの原因について、山中委員長は「何らかの原因で先端部についているカメラが故障した」と報告を受けているが、あえて技術的な原因について推論をするなら「ケーブル等の不具合」が考えられるのではないかとして、「これからの(東電の)調査を待ちたい」と話した。
カメラがどれだけの放射線量まで耐えられるのかとの疑問も呈された。
廃炉に使うロボットの難しさに関しては、「放射線場であって、装置そのものへの影響もあるし、作業員もそういう環境で作業しなければいけない。また炉内はかなり湿度が高いので電気系統の不具合も起こりうる。そういう状況を鑑みて作業を進めてほしいと思う」と話した。
東電は燃料デブリ(2011年の事故で溶け落ちた核燃料)の微量を取り出す作業を9月16日に再開したが、採取装置に搭載するカメラの映像が遠隔操作室で見ることが出来なくなり、再びの中断に追い込まれた。
デブリは高い放射線を放っており、高リスクなため、遠隔操作による微量の取り出ししか現実には行えない。
福島第一原発1号機から3号機までで推計880トンのデブリがあるとされるが、現在の取り出し方法では一回に数グラムしか採取出来ない。また、取り出したデブリをどうするかも問題だ。
山中委員長は「デブリのサンプリングはこれからの廃炉に向けた重要な一歩だが、サイト全体のリスク低減においては小さな一歩」だとした。
航空機が原発に衝突したら
先週、中国電力島根原発2号炉の特定重大事故対処施設に関する審査が終了したが、記者から米同時多発テロの時に貿易センタービルに航空機が突っ込んできたようなことが起きた場合にフィルターベントがあっても機能しないのではないかとの質問があった。
山中委員長は「故意による航空機の衝突にす対応するために特定重大事故対処を導入して審査をしたうえで確認しているが、そのうちの一つが島根の2号炉だと理解してる。仮に衝突があったとしても、環境への放射性物質の漏えいは極めて少量だと審査の中で確認している」という。
ウクライナ戦争などをみるとミサイルが来た場合に原発を守り切れるかという問題意識からの問いもあったが、これに対して山中委員長は「軍事攻撃に関してはどの程度かなど我々の判断を超えるので規制対象としていない」ので答えることが出来ないということだった。
またIAEA(国際原子力機関)が最近、自然ハザード系の基準を新たに加えたがこれはいつどのようなかたちで反映されるかとの質問があり、「現行の規制基準で不十分だとは私は理解していないので、委員も変わるので委員会で改めて建替原子炉の規制については議論を進めていきたいと考えている」と山中委員長は話した。
新技術の両側面
9月12日に主要事業者と建替原子炉についての意見交換会が開かれたが、その内容について質問があった。
「予見性の観点から事業者から3点論点の提示がありました。一つは常設の設備と可搬型設備との関係性、二つ目は常設設備と特定重大事故対策設備との関係、三つ目は新技術導入への懸念だった」と山中委員長。
新技術について具体的には「コアキャッチャー」という、原子炉がメルトダウンした場合にリスクを低減するために下で受け止める装置が海外にはあり、それについて山中委員長から発言があった。
「世界で見るとフランスのEPR(欧州加圧水型炉)が6基動いていて、これにコアキャッチャーが搭載されています。技術的にどの程度安全に対して効果があるのかについて、何か炉心を受け止めて水を張らずにうまく流せるというところは、その可能性があるとは理解しています」。
「安全上どの程度の効果があるものかというところはまだ議論を進める余地があると思っています」。
「イチエフ(福島第一原発)のデブリの状況あるいはコンクリートの損傷の状況等考えると、今まで言われていたMCCI(生成物)とは違う現象が見られていますので、コアキャッチャーの挙動をしっかり見ていく必要がある」と山中委員長は話した。
「新技術には良い面と悪影響もきちんと考えておかないといけない。新技術には両側面あるので」とも述べた。「これからもう少し詳細に中身をうかがっていって委員会としても判断をしたい。そしてどういう体制で意見交換するか、どういう進め方をするのか、原子力規制庁から提案してもらう」。
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