
2・26原子力規制委会見
原子力規制委員会の山中伸介委員長は2025年2月26日(水)の記者会見で、同21日に朝日新聞が報じた全国15原発の周辺30キロ圏の市町村の住宅の耐震化率が80%を下回っていたことについて、それを改善してゆくためには国の支援が必要だとの認識を示した。
従来より、山中委員長は原発災害が起きた際の「複合災害」に備えるにはまず自然災害への対策が十分になされていないといけないと主張している。
山中委員長は「複合災害について考えるならば、まず必要なのは近隣の避難所の耐震化をきっちりしていくこと。防護施設についても地震に強い施設にして・・・いかなければいけないと思っています」と述べた。
記者から住宅のような私有財産に対しての財政支援は難しいのではないかと問われて、「国全体あるいは国と自治体が連携して個々の住宅の耐震化を上げていくことが災害に強い日本を作っていくには必要だと個人的には考えていますし、そういう備えをしていくことで原子力災害に強い地域が形成されるという認識です」と山中委員長は話した。
事務方によると、国は木造建築の見直しに始まり様々な検討を進める一方、耐震化や資力が足りない点についてはどのような支援策が考えられるか現在対処を考えているとのこと。
福島原発からの処理水の放出ペースを速める?
先週来日したIAEA(国際原子力機関)のグロッシ事務局長は浅尾環境相との面会の中で、東京電力福島第一原発からのいわゆる「ALPS処理水」の海洋放出のペースを速めてはどうかとの発言があった。
山中委員長はALPS処理水放出の「最適化」について事業者には改めて議論して頂きたいという考え方を示した。
同委員会は基準以内の放出であれば科学的安全性について問題がないとの立場で、その放出ペースの最適化についても「適宜議論して放出量を決めて頂くのは適切な方法だと考えています」。
処理水と呼ばれる「ALPSという装置で処理された汚染水」に含まれるトリチウムの放出量は年間22兆ベクレルまでという基準について科学的にはもっと大きい量の放出であっても問題がないのではないかとの指摘が一部の専門家からされてきた。
「数値で安全性を測ることに慣れていない」住民たちに対しては規制当局として「根気強く、地道に説明をしてゆくことが大切だと考えている。最適化については東京電力が当然提案されると思いますが、その妥当性、安全性については規制当局が判断し、きちんと住民の方々に説明してゆくことが委員会としての務めだと考えているところです」。
福島第一原発では原子炉を冷やすために注入している水が増え続けて、それを減らすために海洋放出をしているところ。放出に当たっては含まれるトリチウムを完全には減らせないが処理をしている。
地元の漁師たちからは未だに反対の声が強い。
核融合炉について事業者と意見交換へ
次世代エネルギーともいわれている核融合炉について先週、内閣府の有識者会議が安全基準についての基本的な考え方をまとめた。それを受けて同委員会と事業者との意見交換がスタートすることになる。。
同委員会は核融合炉についての情報収集を進めているところで、実験装置から原型炉までさまざまなレベルの情報だが、「まず現在考えられている研究開発のレベルについて意見交換して、トリチウムを使う、中性子が大量に発生する、放射化物が生成される、事故が起きた時のことなど、考えられる様々なリスクについて意見交換する」と山中委員長は話した。
「リスクをきっちりと把握してどのような規制をすべきなのか検討する材料を収集することがこの意見交換の目的」だとした。
「現状ではRI法(放射性同位元素等規制法)の中で規制出来るとの認識ですが、その評価に問題がないかどうか、意見交換の中でリスク等の確認をしてもらえたらと考えているところです」。
核融合はウランなどの核放射物質を使わないので核分裂反応が止まらなくなるような原発のようなリスクはないとされていることから、原子炉等規制法によって規制をしなくてよいとの立場。
将来原発のように核融合炉も商業化された場合に新たな規制の枠組みが必要になるのかと問われ、山中委員長は「おそらく段階を経た議論になってゆくだろう」とし「発生させるエネルギーの大きさによって対応する規制も変わってくる可能性がある」との考え方を述べた。