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ポールの馬鹿げたラヴ・ソング
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ジョン・レノンのソロ時代の代表曲といえば「イマジン」だろう。では、ポール・マッカートニーはどうだろう?
ポールの「イマジン」にあたるのは「心のラヴ・ソング(Silly Love Songs)」ではないか。2人の個性がメッセージ性の違いに現れている。
「心のラヴ・ソング」は1976年にウィングス名義で発表されたロックナンバーだ。米ヒットチャートでは5週間1位を記録する大ヒットとなった。アルバム『スピード・オブ・サウンド』に収録されている。
サウンド面では、ポールのベースがブイブイと鳴って、演奏全体をぐいぐいと引っ張っていくのが特徴のひとつ。そして、リンダやデニー・レインのハーモニーがいい味を出しているのである。
何といっても歌詞がいい。
「周りを見渡してごらん。世界はもう馬鹿げたラヴ・ソングでいっぱいだっていう人もいるけれど、それのどこが悪いっていうんだい。馬鹿げたラヴ・ソングで世界を満たしたいって思っている人だっているんだよ。だから、またいくよーアイ・ラヴ・ユー、アイ・ラヴ・ユー・・・」。
ポールの愛の力を信じる心意気が感じられる熱い歌だ。ジョンが「イマジン」などで見せた社会的なメッセージに比べて、ポールは「甘ったるい」ラヴソングを歌っているだけではないかといった冷ややかな見方がある。
しかし、ポールが愛に寄せる気持ちは、決してジョンの社会的、政治的メッセージに劣るものではない。どちらも素晴らしいではないか。二人の持ち味の違いからくる表現の仕方の違いというだけのことだ。
ジョンの死後、ポールもジョンのように社会的、政治的メッセージを試みようとしたのではないかと思えるふしがある。「エボニー・アンド・アイボリー」での人種間の融合を訴えるメッセージがその代表的なものか。
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しかし、ポールの持ち味は、素敵なメロディ、陽気な歌声、ロックンロールでのシャウト、身近な愛をさりげなく歌う自然体ではないだろうか。ジョンが死後、「愛と平和の使者」として、言葉が適切か分からないが「神格化」されてしまったのに対して、ポールはどこか「引け目」を感じたのではないか(今はそういうことはないと思うが)。
今こそ「心のラヴ・ソング」を聴き直してみたい。まだまだ、世の中はラヴソングを必要としていると思う。「馬鹿げたラヴ・ソング」でもいいではないか、それでこの世界をいっぱいにしようではないか。
そして、もしもかなうのならば、再びステージで「心のラヴ・ソング」を演奏してほしい。ベースをブイブイと弾きまくりながら歌ってほしいと夢見ているのは私だけだろうか。